第124話:イェル院長(11)
戦闘が始まるや否や、俺は妖精竜に向けて相性のいいエクスプロージョンを発動した。
上空に巨大な魔法陣が展開され、直下にいる妖精竜を巻き込んで爆発した。
だが、五大竜の一角として数えられる妖精竜。
エクスプロージョンを受けてもほとんど無傷だった。土煙の中から飛び出してくる圧倒的な威圧感に、大多数の冒険者は恐怖でおののき、30人近く仲間が存在するにも関わらず、それらを一瞬にして烏合の衆へと変えた。
その結果、戦力として数えられる者はアイリス、マルス、レラの3人のみ。
果たしてこの4人で妖精竜を倒す事ができるだろうか。
その時。
俺の肩をアイリスがトントンと軽く叩いた。
アイリスの方を見る。
不思議な事にアイリスの目には恐怖の色がなく、むしろはっきりとした光が宿っていた。
「アイリス?」
「ロイド様。私はアナタが世界で一番好きです」
「え!? ど、どうしたんだ急に。いきなりそんなこと言われたらびっくりするじゃないか」
「ふふふ、今だからこそ伝えたかったのです。ロイド様が不安そうな表情をしていましたから」
「!」
「ロイド様、いかなる難局であろうと、私はいつだってアナタのお側にいます。エメロード教の代行者として、アナタを愛する一人の女性として、アナタと一緒に最後まで戦いたいからです」
愛する者の言葉だからだろうか。
それは俺の心に強く響いた。
すると次第に俺の心から恐怖の感情が和らいでいった。
アイリスの頬に手を添えて、優しく撫でながら、アイリスの言葉に頷いた。
「俺も同じ気持ちだ。アイリスと一緒に戦いたい」
戦場が緊迫してるのに、突然イチャイチャし始める俺とアイリスの二人。
レラはキャーキャーと喜んでおり、マルスは「なにやってんだこいつら……」みたいな冷たい目で俺達を見つめている。
戦力面に一抹の不安がないわけではないが、それをどうこう議論してる余裕はない。
いまある手札で妖精竜を倒すしかない!
足りない分は絆で補えばいい。
俺は彼らに視線を送る。
3人は無言でこくりと頷いた。
俺は3人にフルグロウをかけた。
すると、マルス、レラ、アイリスの魔力が数十倍に跳ね上がり、魔法と剣の威力がどれも超高火力になった。
それぞれが阿吽の呼吸とも言える動きで妖精竜に攻撃を一斉に仕掛けていく。
セフィリアさんほどではないが、マルスもかなり強くなっており、肉眼では追えないスピードで妖精竜に迫り、強烈な一太刀を浴びせている。
そのままさらに次の剣式へと移ると、自身の体格の何十倍もある妖精竜に連続攻撃を仕掛けていく。
一発一発がとても重く、妖精竜はなすすべなくボロ雑巾のように地面を転がっていく。
レラも負けておらず、風魔法を巧みに操って妖精竜の攻撃を阻害していく。
しばらく攻撃を繰り出して、妖精竜を完全に掌握すると、
俺はトドメの一撃と言わんばかりに妖精竜の心臓部にめがけて一点集中型のエクスプロージョンを落とした。
エリアを狭めた分、その威力は先程の何十倍。
そのまま装甲ごとぶち抜いて一撃で妖精竜を葬り去った。