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第122話:イェル院長(9)

 その後、奴は自身の正体を明かした。

 天界四大神の一人、『ヴェーダ』。

 天界の秩序を維持し、地上界の人々が平和に暮らせるように天使たちを統率していたそうだ。


「アナタの正体が神だとはわかりましたが、マルス達を操っていったい何をするつもりだったんですか」

「端的に言えば、妖精竜の囮にするつもりだ」

「え?」

「現在妖精竜がいるエリアには、天界への転移魔法陣がある【白の神殿】が存在している。安全に転移魔法陣を使うための時間稼ぎとして、そこの人間達を利用するつもりだったのだ」


 神とか秩序とか平和とか。

 それとはまったく真逆の目的を示すヴェーダに、俺達は唖然となる。


「いやいやいや。ちょっと待って下さい」

「言っている意味が分かりません」


 アイリスとレラも困惑している。

 二人の反応にヴェーダは大きなため息を吐いた。


「やれやれ。これだけ丁寧に説明しているのに理解できないとは、地上の生物は本当に頭が悪いな」


 ヴェーダは、こちらを見下したような表情を浮かべる。

 当然、アイリス達の反応も敵意を持ったものに変わる。


「理解とかそういう以前の問題だ。俺達の仲間を囮に使おうなんて、よくもふざけたことを考えてくれるな」

「世界を救うための小さな犠牲だ。お前達だって大陸の呪い(エリアゼロ)をなんとかしたいだろ? そのためには、現在天界を支配している悪しき天使共を全員始末する必要があるのだ。奴らが消えればエリアゼロは解決し、世界は平和になる」


 まったく会話にならないな。

 俺は、天界の事情なんて一切知らないが、こいつは自分の目的が達成できれば他がどうなっても構わないという歪んだ思想を持っている。

 たとえ敵であっても、イゼキエルのように『愛する人を守る』という信念がある者を俺は知っている。

 だからこそ、目の前に映るマルスの体を乗っ取っている者が、神ではなく邪神にしか見えなかった。


「ほう。この私と戦うつもりか。本調子ではないとはいえ、下等な人間に負ける程弱くはないことを教えてやろう」


 ヴェーダはそう述べると、手元に金色の剣を出現させた。


「え!?」

「あれはもしかして……心剣!? 本当に存在していたんだ……」


 アイリスとレラは実在した心剣にひどく驚く。

 一方、俺は冷静だ。


「落ち着け二人とも。奴が本当の神であってもクソ野郎であることには変わりない。俺達の仲間を妖精竜の餌にしようと考えてる奴に負けるわけにはいかない。そうだろ?」

「そ、そうですね! ロイド様のおっしゃる通りです! 秩序神エメロードの代行者として奴の蛮行を見過ごすわけにはいきません!」

「私も同じです! マルスくんの体を乗っ取って、悪事を働こうとするなんて絶対に許さない!」


 アイリスとレラは、それぞれ杖を構えて戦闘態勢になった。


 先に動き出したのはヴェーダ。

 こちらに向けて剣を振るうと斬撃波が発生し、三日月型の攻撃が迫ってくる。

 最初は防御魔法で応戦しようと考えたが、セフィリアさんの言葉をふいに思い出して、俺は即座に初級魔法のウォーターボールを放つ。


 心剣とウォーターボールが衝突し、お互いに衝撃を打ち消し合った。


「なにいいいいいいいいいいいいいいい!? 初級魔法で俺の心剣を防いだだと!?」


 悪いな、俺のウォーターボールは普通とは違うんだ。

 剣士が素振りをするように俺はウォーターボールを毎日一万回撃っている。

 剣士の最高到達地点が心剣なら、俺の最高到達地点は『完成したウォーターボール』だ。


 当然ながら相手は俺の事情など一切知らない。

 自慢の心剣を防がれてヴェーダは酷く動揺し、次の動作が『ワンテンポ』だけ遅れる。

 俺はその隙を見逃さず、無詠唱でフルグロウを展開し、そのまま目の前で動揺しているヴェーダへと迫り、そのままぶん殴った。

 ヴェーダは避ける事すらかなわず、俺の攻撃をもろに受けて気絶した。


 その後、アイリスの聖法力によってそのまま除霊された。

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