第83話:七海隊との戦い
更新が遅れて申し訳ございません。
次回はルビー回となります。
仕方ない。
あの三人は俺が説得するか。
世界一の魔導士になると誓ったばかりなんだ。どんな大きな壁だろうと乗り越えてみせる。
俺はアイテムボックスから杖を取り出して、ある魔法を発動する。
「《エアライド》」
俺が呪文名を唱えると、俺のブーツに風の魔力が集約して、俺の体は地面から数メートルほど宙に浮いた。
この魔法はその名の通り、空を歩くことができる風魔法だ。普段は使うことがないが、海上のような足場のない場所で戦う場合は非常に便利だ。
「見て! ロイド様が空の上に浮いてるわ!」
「まさかあれは超高等魔法の《エアライド》!? ロイド様はそんなすごい魔法まで使えたのか!」
「先生! 先生! 本当にすごいです! 先生のことがますます尊敬できるようになりました!」
冒険者たちは目を丸くして宙に浮いている俺を見上げている。
最近は俺の魔法に慣れてきて若干反応が薄くなったマルスも、今の魔法には大変感動しており、興奮気味で言葉を口にしている。
男の子だから飛行魔法に興味があるのかな? このあとマルスに直接聞いてみようかな。
「へぇ、クロウリー以外にも《エアライド》が使える魔導士なんていたのね。やはりイゾルテが太鼓判を押すだけの男ではあるわね」
一方で、ノワールは俺の魔法を冷静に観察しており、自身の専属魔導士であるクロウリーと俺を比較している。
その様子だと、クロウリーも《エアライド》を使えるみたいだ。
でも、この《エアライド》ってそんな難しい魔法だっけ?
この魔法を教えてくれた院長は『ゴブリンでも使える初級魔法』って言ってたんだけど……。
そういえば、ゴブリンが使ってるところ見たことないな……。
まあいいや。今は魔法のレベルよりも人魚たちの対応が先だ。
俺は空気を蹴って、人魚達の目の前へと飛んでいき、そのまま海面へと着地する。
「わ、わあ!?」
「空から人が降ってきたですぅ!?」
「この人いったい何者なの!? 本当に人間!?」
彼らは動揺しながらもそれぞれの武器を握り、警戒した視線を俺へと向けた。
「驚かせてすまない。キミ達に話があって船から飛んできたんだ」
これから説得に入るわけなので、できる限り丁寧な態度で対応するつもりだ。
「人間に話すことなんて何もないです。ここはカレイドマーメイドの領域だからよそ者はどっか行くです!」
「ここを通りたければ私たち三人を倒すことですね」
「ですですぅ!」
うーん、話し合いによる説得は難しそうだ。
やはり戦うしかないか。フェルメールの知り合いかもしれないのであまり手荒なことはしたくないんだよな。
「うーん、そんなに戦いたいなら戦ってやるが、海上での戦いは慣れてないから手加減できるかわからないぞ?」
「こ、こいつ!? 手加減なんてふざけたこと言ってるです! 完全に舐められてるですよ、私たち!」
「七海隊のメンバーである私たちに、手加減なんて言葉が通用するかどうか、アナタの体に刻み付けてあげるわ!」
「ティファ、クロエ! この生意気な人族をボコボコにするわよ!」
三人は威勢よく声を上げて、俺を囲むように陣取って、それぞれ武器を使った接近攻撃を仕掛けてきた。
だが、俺はすでに《フルグロウ》も発動しており、動体視力は通常時の100倍以上に高まっている。彼らの攻撃をギリギリまで引き付けて最小限の動きでかわす。
シュンシュンシュンシュン!
「なんだこいつ!? 三人で攻撃してるのに全然当たらないわ!?」
「まだやるかい?」
俺はいったん立ち止まり、人魚たちにそう尋ねる。
「ま、まだやるに決まっているでしょ! 今度はさっきより10倍速く動いてあげるわ!」
「3人いるから実質30倍です!」
キンキンキンキンキンキン!
人魚たちの攻撃速度が上昇する。しかし、俺はそれよりもさらにはやい速度で、
シュンシュンシュンシュン!
彼らの攻撃をかわしていく。
「くそっ! このっ! 攻撃をよけるなっ! 動くと当たらないでしょ!」
三人のうち一人が怒り気味でそう叫ぶ。だが、俺は気にすることなく攻撃をすべて避けていく。
そして、そのまま30分が経過した。
「はぁ……はぁ……」
「ぜぇぜぇ、こ、攻撃が……疲れた……」
「もう動けない、限界ですぅ……」
3人とも疲労困憊であり、あと少しで倒れそうな状態になっている。
「で、でも、こいつだって30分動き続けたはず……。条件は私たちと同じだから、あと少し頑張ればきっと」
「《フルリカバー》」
俺は自分自身に回復魔法をかけて戦闘による疲労をすべて回復する。
そして、今のフルリカバーによって俺の疲労度は0へと戻った。
「「「…………」」」
今の回復魔法で彼らの心が折れたのか、彼らは無言のまま仰向けに倒れた。
「どうやら俺の勝ちのようだな。ちゃんと約束は守ってくれよ」
「わ、わかってるですぅ……」
「ちょっと休ませて……ぜぇぜぇ……」
「はぁ……はぁ……あなたいったい何者なの?」
名前を尋ねられたので、俺は堂々と本名を名乗った。今の俺に専属魔導士時代のコンプレックスはない。
すると、彼らは目を見開かせて驚いた。
「ロイド様!?」
「リヴァイテーゼを倒したとされるあの伝説の魔導士様!?」
「うそっ!? あの本物のロイドさん!?」
三人は飛び起きて俺のところへと駆け寄ってくる。
そのまま尊敬のまなざしで俺の顔を見つめている。
「キミ達は俺のことを知っているのか?」
「知らないわけないじゃないですか! 魔導士ロイド様といえば、アトランタ王国を救った伝説の大魔導士様ですもの!!」
「ですです!」
「あ、あの! サインもらっていいですか!? 実はロイド様のファンなんです!」
どうやら先日の一件でアトランタ王国内の俺の評判がとても良くなっているみたいだ。
戦闘の前にロイドと名乗っておけば、もっと早く解決できたかもしれないが、三人とも要求を呑んでくれるっぽいし結果オーライとしよう。
「あっ、そうだロイド様。一つお伝えしたいことがあるんです」
三人のうち一番大人びている人魚が改まった口調で話しかけてきた。
「実はこの領域、昔からアスカールという魔物がよく出現するので、ご注意して欲しいんです」
「あのリヴァイテーゼに似たやつかい?」
「そうそれです。リヴァイテーゼほどではありませんが、すごくでかいやつです。一応、私たち《七海隊》がパトロールして定期的に駆除してるので、昔よりは平和になっているんですけど、それでも危険な事には変わりないので」
「もしかして、キミ達がここから俺たちを追い払おうとしていたのは、『アスカールから俺たちを守るため』だったりする?」
「え? あー、えっと……そ、そうですね。パトロールです、ハイ」(心の声:暇だったから意地悪してやろうと考えていただけなんて口が裂けても言えない)
高圧的な態度で俺たちを追い払おうと話していたのはそれが理由だったのか。
「勘違いだったとはいえ、仕事を邪魔して悪かったな。それと、重要な情報ありがとう!」
「え、なにこの罪悪感。普通に攻撃されるより痛いんですけど」
「わ、わたしも良心にダメージが……」
「もうほかの人に意地悪するのやめようか」
「「うん」」
彼らはそれぞれ頷き合って、その場を立ち去っていった。
彼らの姿が見えなくなったのを確認後、俺は船内へと戻る。
そして、人魚との交渉が上手くいったことをノワールに伝えた。
「感謝するわロイド。アナタのおかげで予定通り釣り大会が開催できそうよ」
ノワールも満足そうに微笑んだ。
予定より少し遅れたが、俺たちは無事テトラ島に到着することができそうだ。
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現在、コミカライズ版の一話が連載されておりますので、ぜひご覧ください!
詳しくは、あとがきに記載しております!
次回の更新は6月15日の朝7時を目標にしていきます。




