9.抜けがけ
オーク5体の討伐を報告すると受付のお姉さんが何やら面白い話があると俺に言ってきた。
俺は何々と気になり……。
「何があったんですか? 」
受付のお姉さんに尋ねていた。
「丁度、さっき勇者パーティーがあなたを血眼で探していたわ。それに、フミヤはどこだっ! って押し迫ってきてたの」
俺はその話を聞いて勇者パーティー?なぜ俺をと考えていたが、受付のお姉さんがその勇者パーティーのメンバーを言った瞬間に俺の眉毛はピクリと動いた。
「確か、メンバーはリーダーのトムとローズ、カレンの三人だったわね」
この名前を聞いた俺は嫌な予感しかしなかった。
奴らは俺を自分達の勇者パーティーから追放した裏切り者だ。そんな奴らが今更俺に何のようだというのか。
見当がつかない俺だが全くつかないわけではない。大方の予想としては奴らだけではクエストもろくにクリアできなかったのだろう。俺はそんな感じとみている。
受付のお姉さんの話を聞いて、考え込む俺を見たエレナは受付のお姉さんに討伐報告と報酬を受け取り、「宿屋に戻ろ! 」と誘われるがままに宿屋に向かった。
冒険者ギルドを出る前に分け前は半々ということで250Gをエレナから手渡され、俺の財布である麻袋へと詰め込む。
麻袋を左手で持つと前よりもかなり重みを感じるようになり、俺はさっきまで考えていた事を忘れていた。
所持金はこれで480G。
にやりと微笑み、宿屋のベッドで俺は横になる。
その微笑みをエレナに見られたらしくエレナからは少し冷たい視線を感じるが気にしないでおこう。
横になるとお金もそこそこ稼げて、安心した俺はうとうとと眠り始めた。
正直、今日はオークの討伐でかなりの時間スキル《癒すもの》を使い、肉体的にも精神的にも疲れが溜まっている。
すぅすぅと寝息をたてていた俺ははっ⁉︎ と目が覚め、慌ててベッドから起き上がる。
その次にグゥーというお腹の破裂音がこの部屋中に響き渡る。
幸い、エレナが寝ているのがありがたかった。こんな破裂音を聞かれたらどれだけ面白がられることやら。最悪の場合は一生の黒歴史として何かあるたびに話題にされそうだ。
気持ちよく寝ていた俺がいきなり目を覚ましたのはあまりの空腹からだ。
エレナをこの部屋に取り残し、俺はそっと宿屋を後にする。
俺はスタスタと走り、近所のレストランに駆け込む。
辺りは月が綺麗に輝くほどすっきりとした夜空。
しかし、ただご飯を食べるために走った俺だが絵的には盗みをはたらき、逃げているようにしか見えない。
それほど今夜は絵になる景色だった。
レストランに入るも夜もかなりふけていたせいか客がポツポツといる程度だった。
いつもならカウンター席に座らない俺が珍しく今日はカウンター席に座った。
早く美味しいご飯が食べたい。その純粋な欲望を早く満たすために俺はカウンター席に座り、「早く作れて美味しいものを! 」と頼んだ。
こんな夜に何だよという顔をレストランの男性定員にされたが、俺は何食わぬ顔でグッドポーズを見せる。
待つこと数分。
少し面倒臭そうな顔をしたさっきの男性定員がガッツリとしたステーキを俺のカウンター席に運んできてくれた。
湯気が上がり、じゅうじゅうとステーキが少しずつ焼かれている音が鳴り、俺はヨダレが止まらない。
ステーキをナイフで切り分けている時に力一杯引いたせいか熱々の鉄板に少し触れ、反射で手をよかすも熱さなど微塵も感じさせない顔つきでステーキに食らいつく。
ステーキを口の中で早く噛み切り、飲み込む作業を繰り返し、食べ終わる頃にはお腹がはち切れそうなくらい満足していた。
「ごちそうさまでした! 」
レストランの男性定員は食べ終わったのを見計らい、お会計を言い始めた。
「ステーキの値段がここ最近上がり、お会計10Gです」
な、なんだと。ステーキの値段が高騰しているとは。本来なら5G程なのに….。
これもいい経験と思い、俺は10Gを手渡す。これで所持金は470Gか……。
財布が少し寂しくなるのが心細い。
店を後にした俺はゆっくりと来た道を歩き、宿屋へと向かった。
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