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8.一方、勇者パーティーは

「へっ、フミヤの野郎クエストなんか受けちゃって。しかも、あんな安っぽい女と。ぷっぷ」


気味悪く笑う勇者パーティーのリーダートム。


そして、それに続くように他二人のメンバーも嘲笑う。


「まぁ、あいつらなんかにクリアできるはずもないよ。雑魚だからね。それより、そろそろゴブリンの群れがいる洞窟じゃない? 」


フミヤ達を馬鹿にしつつも冷静にクエストに集中するカレン。


流石は勇者パーティーの中でもきれものと名があるだけはある。


「おっ、そうだなカレン。悪りぃ」


カレンの言葉に少し反省するトム。


リーダーとはいえ死ねば意味がないから危機感が出たのだろう。


「さて、今からゴブリンの群れを討伐するわよ! 」


カレンの掛け声に賛同する二人。


この勇者パーティーの目の前には少し狭い洞窟が暗くどこまでも奥に続く趣で待ち受けていた。


洞窟の中での陣形はトムが先頭で援護系のローズと魔法使いのカレンはトムの後方から手助けする形になっている。


この陣形のまま洞窟を進む三人。


後ろを振り向けばごく僅かに入り口の光が見える。


「だいぶ奥に来たんだな」


トムの問いかけを無視するようにカレンが言う。


「しっ。足音が聞こえる。それに敵が近くにいる」


カレンの言葉に勇者パーティーは少し狭い洞窟の周囲を見るが何も見えない。


「あっ、危ない!! 」


ローズが慌てて弓矢で飛んできたボーラーを撃つ。


しかし、少し狭い洞窟ゆえその残骸が仲間に当たる。


「痛いっ」


「わぁ、ごめんー」


慌てて謝るローズ。


だが、まだ終わらない。


ボーラーの次はゴブリンがあらかじめ張ったであろう紐の罠に引っかかり、カレンは転倒する。


「どうしたの? 大丈夫? 」


「えぇ、なんとか」


そこに追い討ちをかけるゴブリンの群れが勇者パーティーめがけて突撃をする。


それに対抗すべく、前衛ではトムが剣を振り回し、ゴブリンに薙ぎ払う攻撃をお見舞いするも……。


「かん。かん。きん。かん」


トムの攻撃は途中まではいいものの、ゴブリンへの命中率も低く、おまけに剣を振りかぶると洞窟の岩に剣が当たり、上手く攻撃ができていなかった。


これを庇うかのように、ローズとカレンは援護射撃でトムを助ける。


弓矢で次々とゴブリンを射抜き倒していく。


けれども、ゴブリンの群れはちっとも減らない。


おかしいと気づいた頃には遅く、気づけば勇者パーティーの四方八方はゴブリンの群れで囲まれていた。


それに、気づかず正面のゴブリンに攻撃をしていたローズとカレンはゴブリンに背後を取られ、腕や足を噛みつかれ、装備を脱がされていた。


「ローズ! カレン! ゴブリンどもやめろーーーー!! 」


仲間を傷つけられたことに怒るトムは悪あがきのように剣を振り、ゴブリンを斬りつけ斬殺していく。


剣が洞窟の岩にぶつかろうが無視し、ただがむしゃらに剣を振る。


そして、カレンとローズはなんとかトムが守りきった。


しかし、三人のHPはほぼない。


壊滅的にまで、たかがゴブリン風情に追いやられた勇者パーティーは情けなく洞窟を後にした。


トムはその間、ずっと、カレンとローズの腕を肩にのしかからせ、冒険者ギルドへと歩いた。


ようやく、冒険者ギルドが見えた頃のこと。


「どうして、どうしてこんなボロボロになるんだ。たかがゴブリンだろ。まさか……」


何かを察したトム。


トムと同じようにローズ、カレンも察する。


フミヤはこの勇者パーティーが思っていた以上に有能なヒーラーだったこと。


それも、常に味方を癒やし続け、HPを気にすることなく戦える。そんな、レアスキル持ちだったことに今更ながら気がつく。


勇者パーティーでありながら非戦闘色のヒーラーである有能な人材をこの手で追放に追いやったことに三人はアホらしくなる。


「まさか、フミヤがずっと私達を癒してくれていた? とかじゃないよね? 」


「そんな、アイツは使えないヒーラーだったじゃん」


「まだ、わからないわよ。もしかしたら。いや、私の勘なんだけど、フミヤがいたことで私たちがのびのび戦闘できていたのよ」


カレンの考察に納得をしたのか、今までフミヤを馬鹿にし、追放までしたトムがある提案を出す。


「フミヤをこの勇者パーティーに連れ戻そう」


「あいつ、本当にレアスキル持ちだった可能性があるわね」


仲間二人の急な考えに納得したのか、あの毛嫌いしていたローズまでもがおかしなことを言った。


勇者パーティーはとりあえず冒険者ギルドにつき、今回のクエストの報告と報酬を貰うと、急いでどこかへ逃げるように行ってしまった。


フミヤを勇者パーティーに連れ戻すこと。それに、ゴブリン討伐に勇者パーティーでありながら苦戦し、恥をかいたこと。


これらが重なったことで情けなくなる気持ちを抑えきれず逃げるようにどこかへ行ったのだ。


フミヤとしてみればやっと自由に解放されたはずがこの一件で少々面倒事に巻き込まれることになってしまった。


しかし、追放されその復讐をするには打って付けかもしれない。

数多くある作品の中からこの作品を拝読して下さりありがとうございます!


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