4.始めてのクエスト
「あっ、はい….。あのぉ、助けていただきありがとうございました」
俺はこの時、助けられた事だけは何となくわかった。
ただ、この目の前の女性が俺を助けたのは少し意外だった。
というのも剣や弓などの武器らしきものを何一つとしてもっていないからだ。
どうやら魔法使い?なのだろう。
「私、結構ド派手な魔法をかけたんだけど本当に怪我はない? 」
ド派手な魔法って何だよ。
俺はスライムに危うく窒息させられる寸前だったから何をしたかの状況判断が出来ていない。
けれど、そのド派手な魔法とやらが気になる。
「ド派手な魔法ってどんな魔法なの? 」
「あぁー。気になる? 気になるよね。じゃあ、教えるけど魔物が溶けて消滅する魔法だよ」
えへんと言い終わった後に付くくらい自慢げに話していた。
魔物が溶けるって、運悪く俺に少し触れれば俺も溶けていたのかよ。
それはそれでド派手というよりヤバいだろそれ。
「俺、運悪ければ死んでたよね? 」
「そ、そうねー……。ひゅーひゅひゅーひゅー」
口笛を吹いて誤魔化し始める。
「で、君は一体誰なの? 」
「あ、私?私はエレナ。魔法使いよ! 」
魔法使いのわりには特徴的な帽子がないんだが。
なんだかおっちょこちょいな奴だな。
「で、あなたは? 」
「俺はフミヤ」
「もしかして、冒険者になったの初めて? 」
「初めてではないけど。簡単に事情を説明するよ。俺、勇者パーティーを追放されたんだ」
「えっ……。なんかごめんなさい」
「気にする事じゃないよ。実際問題、俺は非戦闘系のヒーラー。常にパーティーを癒していただけど誰にもその実績を評価してもらえない上に、仕事をしていないとレッテルを貼られ荷物持ちまでさせられるようになった雑用系ヒーラーだから。邪魔だったんだよ」
「じゃあさ、私とパーティー組もうよ! 私もさ1人なんだ」
「そうなの⁉︎ 」
「うん。フミヤと似たような感じでさ。お前の魔法は危ないから出て行け! って追放されたの」
そんな過去がエレナにあったなんて知らなかった。
この話を聞くまでは俺だけがパーティーから追放された可哀想な奴だと思っていたけど、世界は思ったよりも広かった。
似たような状況の2人がパーティーを組み、戦闘系と非戦闘系というバランスも丁度いい。
よし。決めた。
「俺も是非ともパーティーを組みたい! 」
「じゃあ、とりあえずスライムも倒した事だし、冒険者ギルドで報酬をもらってこようと思うんだけど報酬の取り分はエレナが6で俺が4という事でいい? 」
「いや、ダメだよ! そこは半分! 」
意外にも優しいところがあることが分かった。
「お言葉に甘えて」
俺達は冒険者ギルドに向かった。
道中、いろんな話をした。
前のパーティーのこと、今後の目的、他にもたくさん話をする良い機会になった。
「あれ? もう着いたね」
「早かったね」
有意義に時間を過ごしたおかげで冒険者ギルドまではあっという間に感じられた。
エルの森に向かった時とは全然、体感が違う。
木製のドアを開け、受付のお姉さんに大量のスライムを倒したことを報告する。
そして、報酬の300Gが渡される。
それを麻袋に入れ、俺の泊まっていた宿屋までエレナを連れて行く。
決してやらしいことを考えていたわけではない。
決してだ。
宿屋でお金を渡したかった。
外だとそれを盗み見て盗みを働く輩がたくさんいるからだ。
宿屋に入る。
「はい。エレナ、150G」
「ありがとう! 」
麻袋に入れて手渡しする。
俺は自分の麻袋があるので150Gをニコニコしながら麻袋にしまった。
「俺はこの宿屋に泊まってるんだ。エレナもどこか新しい部屋でも借りて泊まる? 」
「この部屋じゃだめ? 」
はぁ?
エレナさん。
俺は女に慣れていないから困るんですよ。
あなたは素なの?
それとも、天然なの?
計算だとしたらあざとい女だな。
などと1人で妄想を膨らませ、結局、俺と同じ部屋で泊まることを了解した。
俺はソファーで寝て、エレナはベッドで寝る。
俺の中ではこういう予定にしている。
にしても、エレナは少し変な女だ。
普通なら俺と違う部屋を借りて寝泊まりをするはず。
なのに、やっぱり変わっている。
夜、何事もなければ良いが……。
まぁ、幸運を祈ろう。
数多くある作品の中からこの作品を拝読していただきありがとうございます。
ブックマークや星の評価をいただけると大変嬉しいです!
お手数をおかけしますがよろしくお願いします。