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18.なんだかんだで楽しみなフミヤ

急な旅行計画に俺は頭がうまく働かずベッドに横になってから、かれこれ一時間が経っていた。


ボッーと何も考えない時間がただ過ぎていく。


ふと、何もしていない状態はダメだと感じた俺はとりあえずベッドから起き上がり、無計画に宿屋を出た。


エレナも言っていたが俺はヒーラーなので回復系のアイテムでもあるポーション類は正直いらない。


となると、必要なものは装備類やいざという時用の脱出系アイテムだ。


他国に旅行しに行くと言っても、洞窟やら山やらダンジョンやらにどうしても経由していかなければ目的地にたどり着けない。


そのため、万が一に備え、あまり必要とされないようなアイテム系を揃えることに専念しようと街を考えながら歩いていて気付いた。


やることが決まった俺は行動が早く、マレイン王国の品揃えと値段がリーズナブルなお店に入る。


中はアイテムショップとしては物珍しいお洒落な内装をしており、天井には小さめなシャンデリアがキラキラと輝きながら飾られている。


余談になるが、俺は初めてこの店に入りシャンデリアが天井に吊るされていることに違和感を感じた。


だが、今となってはそういう趣味の店主なんだなというふうにしか捉えていない。


少し変わった店だが、中に入ってもやはり品揃えと値段は良い。


俺は目的の品である脱出系のアイテムである黒い玉を数個手に持ち、カウンターに向かう。


カウンターに向かう途中、気になるアイテムがあったので見入っていた。


そのアイテムの名はアンチマジックと札に書かれた指輪だった。


触ってどんなアイテムか確かめようと思ったが、隣の値札を見て、何事もなかったかのように俺はカウンターで脱出アイテムの会計をした。


「会計は20Gです」


俺はなけなしの20Gを手渡し、また財布が寂しくなるのを感じた。


これで、450G。


旅に出るにはあまりに心許ない資金だが道中でクエストをクリアしていけばいいと安易に思い、この店を後にした。


「アンチマジックか….」


あのアイテムは非常に希少で価格自体がその場限りらしく、それでも最低で1000Gと値札に書かれていた。


あんなものを見てしまったら見なかったふりをして俺のように自分の必要な用を済ませるだろう。


1000Gの価値は多いようで少ないが俺のような一般庶民には到底手の出ないアイテムである。


あの時、アンチマジックに触れなくて本当に良かったと宿屋への帰り道で思っていた。


用も済ませたことだし、次は装備を揃えることにする。


旅とはいえ、万が一の時がある。


その時に自分を守れるのは装備や武器だ。


これを実感したのは俺が勇者パーティーに入って間もない頃だった。


あの頃はなけなしの金で装備を何か買う必要があると非戦闘職のヒーラーながらに思っていた。


その時はくさりかたびらしか買えなかったが実際の魔物との戦闘で俺が標的になりスキルを上手く使えず焦り、身を守ってくれたのがくさりかたびらだった。


それ以来、俺はスキルは勿論のこと装備にしっかりとお金を出し、妥協しないことにした。



装備屋に入り、ヒーラー向けの装備を眺めていると自分のスキルを装備に込めることで自分を守る装備を発見した。


一見すると魔法使いのロープに見える装備は黒を基調としている。


俺はこの装備に見惚れ、欲しい欲求に駆られ、値段を見るも今の所持金ではギリギリ買えない額だった。


だが、何としてもこの装備が欲しい俺はここの店主に交渉しに行った。


「すいません。あの装備が欲しいのですが……」


欲しい装備を指差しながら店主をその装備のある場所まで連れてくる。


「あぁ、これね。物は良いらしいんだけど、結構不評なんだよ。それ! 」


こんな良い装備を不評とはクレーマーもいいところだと思う俺は店主に事情を教えてもらう。


「それね、スキルによって装備としてのステータスが変わるんだよ。だから、人によるんだよ。お兄さんもスキルに自信があっても後で後悔するよ? それでも良いの? 」


「はい。ですが、値下げってしていただけないですか? お恥ずかしながら持ち合わせのお金が少し足りなくて……」


口をゴニョゴニョとなりながら話す。


「いくらあるの? 」


「450Gです」


この装備は550G。あと100だけ足らない。


「分かった。じゃあ、400で売ろう! ただし、うちに文句は言わないでくれよ! 」


そんなに安くなるとは思っていなかった俺は目をキラキラさせ前のめりになる。


「良いんですか? ではどうぞ、400G」


俺は400Gを店主に渡し、装備を着用して宿屋に帰った。


道中はスキップをしルンルンだった。


所持金が50Gになってしまったが後悔などなかった。むしろ、定価よりも安く良い品を買えたことへの嬉しさで幸せだった。

数多くある作品の中からこの作品を拝読してくださりありがとうございます!


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お手数ですがよろしくお願いします。

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