16.新たな目的
「因果応報だな」
俺はボソリと呟く。
横目で聞いていた王国騎士の男は口角を少し上げ、この状況を楽しんでいた。
俺も正直、選ばれた場所に笑いが込み上げる程あいつらにぴったりだと思っている。
ざまぁないし追放した身がいつ牢獄に行くと思ったか?
予想を裏切る展開と運命的とも言える末路。
牢獄に入れられた三人は仮にも勇者パーティーの一味だったはずがならず者のように剣を振り鉄の柵を壊そうとしたり、弓矢や魔法で破壊を試みている。
しかし、この世界ではそうやって破壊されることは想定済みのようで鉄の柵に傷一つついていない。
「音声も流せるが流すかい? 」
王国騎士の提案に広場にいた人々は賛成する。
怒り狂った声が魔法のモニターから響き渡る。
「おい! 出せや!! 早くださねぇとぶっ殺すぞ! 」
リーダーのトムはもはや勇者パーティーの一人の人格ではなかった。
この姿がトムの本来の姿なのかもしれない。
ローズやカレンだって同じだ。
ローズは常日頃から態度や言動に問題はあったからあまり違和感はない。
しかし、問題はカレンの方だ。
カレンは大人しくいつも冷静な裏のリーダーの役割を担っていたほどまともな人間だったはず。
今はその姿とは程遠く、化けの皮が剥がれた妖怪になっている。
勇者三人が鉄の柵に向かって本気で怒り狂う姿は面白い以外に何も言えない。
広場でドン引きをする者やもっとやれと促進する者、他にも笑っている者と広場はめちゃくちゃだった。
「この姿を見て分るように、勇者パーティーのトム、ローズ、カレンは醜く、最低な人間だ。もし、奴らが釈放され、マレイン王国に来た時にはこの国から追放するように。いいね」
穏やかで隙のない声で仕切り、まとめる王国騎士の男。
この国に入ってくるとまた追放とは面白い案だと感心している自分がいる。
言いたいこととやりたいことをやり終えた王国騎士の魔法使いは魔法で映し出した映像のモニターを消し、王国騎士の男と一緒にスタスタと帰って行った。
嵐のような復讐だった。
この国に害のある存在になればこの勇者パーティーのように国外追放すると国民に見せつけているとしか思えない。
王国騎士いや、王国として演出を作り、マレイン王国の統制を改めて強固にした。それも、自然にだ。
王国騎士団が去った後。広場では盛り上がりが無くなり、次々に解散していった。
最後まで残っていた俺とエレナは二人見つめ合い、この状況に笑いが込み上げてきて笑い合った。
「フミヤのいた勇者パーティーの三人。ざまぁないね。でも、良かったじゃん、復讐できて」
「こんなに心がスッキリするとは正直思わなかったよ」
「フフ。これで一区切りついた事だし世界でも旅する? 」
面白いことを言うなエレナは。
世界旅行。
響きはいいが旅に災難はつきもの。
何が起こるか分からないのは心配だ。
ただ、勇者パーティーに復讐をし終えた今。正直、魔物討伐のクエストを受け小銭稼ぎをするのもつまらない。
「世界を旅か……。いいかもな」
ボソリと呟くとエレナは前のめりになった。
「でしょでしょ! 旅の準備とかし終えたらさ、世界を回ろうよ!! 」
エレナの勢いに押されてしまい、つい了承をしてしまった。
俺の悪いところがうっかり出てしまった。
「わかったよ。わかったって! じゃあ、一旦宿屋に戻って必要なものの確認しよ! 」
「だな」
俺達は広場を後にしてスタスタと宿屋に戻った。
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