15.勇者パーティーへの復讐はまだ終わっていなかった
「ふぅーー。疲れたー」
俺はベッドに吸い込まれるように倒れ込む。
すると、エレナからさっきの話についてニコニコ顔で話しかけてきた。
「ねぇ。あの勇者パーティーって国外に追放されるんでしょ? 普通ではあり得ないけどフミヤ何かしたの? 」
スキルを隠していた件のせいで怪しまれても無理はないが俺は断固としてあの男の存在すら知らない事と無実であることを弁明する。
「俺は何も知らないよ。本当に本当! 俺だってあんな事急に言われて驚いてたんだから! 」
「でも、正直あの三人にざまぁと思ってるんでしょ? 」
痛いところを突く。
本心を言えば何よりも嬉しい。
ただ、それをエレナにニヤニヤしながら言われるのが妙にうざい。
「そうだけど……。この話はこれでお終い」
「えーー。何それ。他にもフミヤはレアスキルもちだった話とか王国騎士に目をつけられていた話とか聞きたいのにー! 」
「レアスキル持ちは事実として、王国騎士に目をつけられていた事は俺は一切知らないよ! 」
「そうだったんだ。へぇー」
納得があまりいっていない様子のエレナ。
しかし、これが事実であり俺の伝えられる事なのだ。
俺達は一息つこうと休んでいると神様のいたずらのせいかまだ休ませてはくれなかった。
「これから、マレイン王国から追放する三人組を紹介する! 国民は今すぐに冒険者ギルド横の広場に集合してくれ」
声を拡散する魔法で宿屋の部屋に居ても声が届く。
話の内容的に、三人組で追放の二点がついているのでおそらく俺が元いた勇者パーティーのことだろう。
俺とエレナはベッドに横になっていたが急いで飛び起き、目が合う。
「行きましょう! 」
先に口を開いたのはエレナだった。
「うん! 」
俺達は休む暇もなくまた外に出た。
冒険者ギルド横の広場には遠くから見ても分かるほど人だかりができていた。
人をかき分け、前に進む。
前に出ると、国民に見せつけるかのように地面の上に木の長台を置き、その上にトム、ローズ、カレン。それに王国騎士数名が三人を拘束魔法で拘束している。
「これは一体? 」
俺の一言に見覚えのある王国騎士一人が声をかけてくる。
「やぁ、フミヤ君。君は絶対に来ると思っていたよ。さぁ、国民の皆さん! 拘束している三人に見覚えはあるかな? あるよね? だって、クエストを横取りしたり、討伐した魔物の報酬を横取りしたり、他にも国の優秀な人材を無碍に扱ったりね? やられてきた人間がほとんどだとは思うがどうかな? 」
「そうだ! 」
「こいつらは最低な奴だぜ! 俺、やられたんだ」
王国騎士につられるように被害にあった人達が声を荒げる。
拳を上げ、罵声を放つ者もいれば、殴らせろと荒ぶる者もいる。
広場はすごい騒ぎになった。
「静かに!! 静かにならないと裁けないだろ? 」
冗談を絡め、広場に罵声から笑い声が響く。
この場をエンターテイナーとして楽しんでいるとしか思えないが俺自身も楽しいので続きが気になる。
「この三人を今から……国外にランダムに飛ばそうと思っていてね、海がいいかな? それとも山かな? まぁ、国民のみんなに採決を取ろうじゃないか。どんどん意見を言ってくれ」
王国騎士の後、一人のおっさんが海に沈めたら? と冗談めかした声で言う。それに続き、山やら荒地やら廃れた国など挙がった。
しかし、王国騎士は意見を集めた割に自分で決めてしまった。
「意見を聞いて申し訳ないが私が勝手ながら決めさせてもらうよ。そうだな。ランダムで行こうかな? みんなはどうかな? 」
「いいんじゃねぇか」
「いいね」
意外にも賛成の声が多く上がり、ランダムに決まった。
拘束魔法を三人につけたまま、王国騎士の数名の魔法使いが魔法をかけ始める。
ランダムに飛ばす魔法だとは思うが詠唱がやけに長い。
詠唱を言い終わると王国騎士の男の声に合わせ、空に飛ばされる。
転移魔法ではなく、ミサイルのように狙いを定め、その場に送る。
着火されたように発射し、地上からでは見えない大きさになる。
一方、地上の広場では王国騎士の魔法使いが魔法で三人の映像を出す。
顔が風でブルブルになっている映像がいきなり現れ、広場は笑いに包まれていた。
ランダムに指定したが一体どこへ向かっているのかは分からないがとりあえず下降しているのは映像から伝わってきた。
どんどん、場所がわかる映像になっている。街? 人? それに石レンガでできた要塞のような建物に降り立った。
周囲には高さ八メートルほどある分厚い鉄の柵。
まさかとは思うが……ここは。
「選ばれたのは隣国の牢獄のようだね」
王国騎士の男が笑いながら言った。
運命的とも言える結末。
裁き、追放、迷惑行為。これらの単語をつなぎ合わせたものが行き着く先が牢獄とは因果応報も良いところだとこの場にいる誰もが思った。
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