13.復讐II
勇者パーティー時代。
俺は数々の雑用系のスキルを磨いてきた。その中には敵のヒットポイントや弱点がわかるスキルもある。
スキルと一概に言っても、ただ、見えるようになっただけのステータスに過ぎない。
俺の使えるスキルは《癒すもの》のみ。
だから、能力が身についたと言った方が正しい。
その甲斐あってか、今俺の目の前でヒットポイントを吸われ、悲鳴を上げ干からびつつあるトムを見てあとどれくらいで倒せるかが分かっている。
トムのヒットポイントは残り数ミリ。
暴れるような乱れ斬りもスピードが落ち、剣すら触れていない。
俺はここまで勇者パーティーのリーダーであり剣の勇者を追い詰められたことに嬉しくてたまらなかった。
「チェックメイトだな」
俺の一言と同時にトムはバル山の硬い地面にばたりと倒れた。
「トム!! 」
慌ててローズとカレンがトムに近寄る。
その焦った表情は俺にとっては何物にも変えられない復讐となった。
ローズ、カレンは回復するスキルは愚か魔法すら持っていない。
役に立たない二人が近寄ったところで何も出来ない無様な姿を眺められ笑いが止まらない。
「ンハハハハっ! ザマァないなカス共! 俺を追放した天罰が降ったんだよ。お前達が勇者パーティーとして名高い地位につけたのは俺が常にお前達を癒し、縁の下の力持ちとして守っていたからだよ! そんなこともわからないで、やれ使えない? 無能だ? ふざけたことを抜かしてくれたな! 」
今まで言えてこなかった言葉を流水のように言う。
この狂気じみた顔と言葉に反省したのか素直に謝り始める。
「そ、その。私達が悪かったのは充分に分かったわ。だから、お願いします。トムを助けて下さい」
悪かったでは済まない。
俺への理不尽な扱いをこんな謝罪一つで許すはずがない。
答えは一つだ。
「嫌だね。そいつはほっとけば時期に死ぬ。魔物の餌にでもしておけばいい」
「そ、そんな……。お願いです。少しでいいので回復してあげて下さい」
カレンは必死な顔で俺に懇願する。
一方、ローズはというと。
やはり、あいつは素直な奴だった。
歯を食いしばり、俺を睨みつける。
「バレてないとでも思っているのか? ローズ? その態度はなんだ? そうだお前を犠牲にしてトムを助けてやるよ」
「えっ⁉︎ 」
睨みをつけていたローズの表情が焦りへと変化する。
ドレイン。
心で叫び、ローズのヒットポイントを残り十分の一まで減らし、トムにローズのヒットポイントを分け与える。
ローズはめまいが起きたかのように地面に両膝をつき、息を切らす。
「じゃあな。これからは約束通り、俺達二人に一切関わるな! 分かったな? 」
トムが目を覚まし、地面から何とか立ち上がる。
「約束は守る。ただ、いつかこの仮は返させてもらうぞ」
弱々しい声でそう叫ぶ。
しかし、エレナを連れて俺は左手だけを上げ、横に振る。
復讐をし終えた後の横から吹く涼しい風が心地よい。
追放され、使えない無能と言われたがそんな無能にコテンパンにされたうえに情けとして回復までしてもらうこの情けなさ。
俺は腹の底から嬉しくて帰り道に鼻歌とスキップをしてバル山を降りた。
あいつらはこれで非戦闘スキルを舐めない方がいいと身をもって分かったはずだ。
今後は俺と同じ目に合っている奴を助けたい。そんな思いが生まれた。
エレナと一緒に追放された者を助ける事業らしきものを魔物討伐と並行してのんびりとやっていこうと思う。
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