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11.手のひら返し

迫ってきた三人の顔を見ただけで俺は寒気が走った。


その三人はトム、ローズ、カレン。


俺が元いた勇者パーティーのメンバーかつ俺を理不尽な理由で追放した裏切り者達だ。


だが、俺の近寄るなオーラと失せろという表情を無視し、奴らは俺に泣きながら両足にしがみついてきた。


「うわーーん。助けてくれよフミヤ様!! 」


わざとらしく、あざとい声。俺を真っ先に追放したリーダーのトムが半ベソになりながら俺に言葉を発した。


何が様だ?

いい加減にしろよと怒りが湧き上がってくる。


しかし、まだ怒りは頂点を知らなかった。


「フミヤ様! 私、ずっとあなたはこのパーティーにいなければならない人だと思ってたのよ! だから。戻ってきて、ねぇってばー」


嘘泣き混じりで弱々しいクソ演劇の女主人公が人生何もかも上手くいかず露頭に迷っています感を出しているその声。


俺はその声に頭の血管が切れそうなほど怒りの温度が上昇している。


ローズは嘘も大概にしろとでも言ってやりたかったが逆ギレされるのも面倒だったのでこのまま何も喋らないことにした。


「フミヤ様! 私は前からあなたの能力は高くかっていたわ。だけど、この二人があなたを……。だから、私を信じて! あなたが今私たちのパーティーに必要なの!! 」


笑わせてくれる冗談もほどほどにしてもらいたい。


カレンもカレンで俺を侮辱し、俺をあのパーティーでの名誉を汚し、追放した裏切り者だ。


そんな奴が何を今更。


誰があんな奴らを信用するか。


自分たちの都合でパーティーから追放をしておいて、都合が悪くなったら手のひらを返したように俺に接してくる。


ご都合主義も良いところだと飽き飽きしている。


「なぁフミヤ様。貴方様のスキルはとてつもないほど私達のパーティーに必要なんです」


トムは俺をたててくれたように言っているが俺は見逃さなかった。


話の終わり際、トムはニヤリと君の悪い薄ら笑いを浮かべていた。


とんだ茶番劇に付き合ってしまったと思う反面。奴らの態度がどこまでいくのか見ものだ。


若干の方向性の変化はあるものの俺は一貫としてこの三人を許さない。


だから、何としてでも追放した分の仮は返したい。


「トム。お前は俺に戻ってきて欲しいのか? 」


「もちろんさ。もっと言えば魔物の討伐をそのスキルで手伝って欲しい。報酬は前の100倍は出す! 」


始めは穏やかな声のトーンだった。話が進むにつれて段々と興奮しだしたトムは思い切って言ってしまった。


報酬100倍は普通の人ならば喜ぶ交渉材料だ。残念なことに俺は勇者パーティーにいた頃ほとんど分け前を貰ったことがない。言ってしまえばゼロのようなもの。


ゼロに百をかけようがゼロ。


分かっていっているのかは知らないがいずれにしても俺を騙す気でいるのは確かだ。


だから、俺はあえてのってみることにする。


「ほー、100倍か」


「な。どうだ。俺達に協力をしてくれれば出すものは出す」


「断る」


「なっ……」


顎が外れたような顔をするトム。


他の2人も似たような顔をしている。


「なら、やるしかないな。力尽くでフミヤ、お前を俺達のパーティーに入らせてやる!! おい、ローズ! カレン! 荒っぽくはなるがやるぞ」


ドスの効いた声でローズとカレンの名を呼ぶ。


呼ばれた方は呼ばれた方で打ち合わせ通り待ってましたと言わんばかりに武器に手をやる。


冒険者ギルドだというのに。


やれやれ。ならばこちらも手を取らせてもらおう。


「良い顔をしているなフミヤ! だがな、お前は武器など扱えないし持たない。お前にあるのは回復スキルのみ。勝ち目なんてあるとお思いかな? 」


したてに俺の足に半べそになりながらしがみついていた時とは比べ物にならないほど狂気に満ちた態度と顔。


俺はこの変わり具合に少しの恐怖を抱いていた。


「そうだ。マレイン王国北部にあるバル山で決闘といこうじゃないか!! 言っておくがお前に拒否権はない」


トムの傲慢な態度と言動に怒りの沸点が度を超えてしまったエレナは俺が言葉を発するよりも早く、ペチンという音をたてる。


「痛ぇなー! 」


どすの利いた声でエレナを睨みつける。


急にビンタされたのだから睨みつけても何も言えないが自業自得だろうという感情の方が強かった俺はトムに呆れていた。


「いい加減にしなさい!! フミヤはあなたの都合の良い道具じゃないの! これ以上、彼の邪魔をしないで! 」


トムよりもキレていたエレナ。


今まで聞いたこともないような怒鳴り声で言い切った。


俺はエレナの言葉で背中を押され、元気が出る。


「エレナ。ありがとう。だけど、これは俺の問題だ。だから、トムと決闘で決着をつけるよ」


エレナは少し呆れた顔で俺を見ていた。


「随分というようになったなフミヤ。じゃあ、今日の太陽が沈む頃までにバル山に集合で」


不気味な笑顔でまとめる。


ちなみに、バル山はマレイン王国北部にある大きな山である。


俺は正直、真面目に戦って勝てるような作戦はない。


武器はおろかスキルとしては癒すことしかできない。


そんな俺は無謀としか言いようがない戦いに今日の日没挑まなければならない。


相手は勇者パーティーであり剣の勇者のトム。


俺は自分から提案したもののうーむと悩んだ表情の後。


「分かった。バル山で日没集合な」


と返事をした。


トムはうはははははと今にも笑い声をあげそうなニヤリ顔をする。


「楽しみだな。せいぜい、俺を退屈にさせないでくれよフ、ミ、ヤ」


最後に決め台詞を言い、ローズとカレンを連れて冒険者ギルドをあとにした。


エレナには今回の件で一番迷惑をかけてしまった。


間に入り、庇ってもらったりとしてもらったがやはりこれは俺自身の問題だ。


だから、最後は決闘という事で解決するしか思い付かずなんとかこの場を凌いだ。


「ごめんな。エレナ。変なことに巻き込んじゃって」


「気にしなくていいよ。フミヤも大変だよね。私も似たような立場だったからあの男に私の鉄拳ビンタをお見舞いしちゃった」


俺の予想よりも意外と気まずかった状況を楽しんでいたことに驚いた。


それに、最後にテヘペロという顔をされてはにこりと笑うことしかできない。


エレナの人間としての魅力が俺の中で今日また一段と格が上がったのだった。


「俺としてはどうやってトムを負かすか日没までに考えておかないとな」


「そうだよ! 無茶苦茶だよ! だけど、私楽しみにしてるよ」


優しく微笑みながら俺に勇気を与えてくれるエレナはやはり俺のパートナーだと認識させられる。


「やれるだけのことはするよ」


「頑張れ! 」


応援の声を胸に秘め、俺はエレナと別行動し、一人宿屋へと帰っていた。


ただなんとなく今は休みながらじっくりと作戦を考えたかった。


時間と戦闘スキルが無いながらに。

数多くある作品の中からこの作品を拝読してくださりありがとうございます!


ブックマークや星の評価をいただけると嬉しいです!


よろしくお願いします。

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