その1
布団に潜り込み、目を閉じた。
―――気づくと、女子高生になっていた。
目が覚めた途端、私はすぐにその異変に気づいた。
カーテンを開けて外を見ると、空が真っ赤に染まっていた。休みなのをいいことに、うっかり夕方まで寝過ごしてしまったのだろうか。部屋の時計を見ると、時計の短針は1の文字を指していた。
私はもう一度窓の外を見た。いつもは交通量の多い幹線道路がよく見えるのだが、今日は車が1台も走っていない。空の異様な赤さは、それが夜中の1時なのか、昼間の1時なのかも分からなかった。空の赤さの原因は、高く昇っている真っ赤な月のせいのようだ。
私は自分の部屋を出て、1階のリビングに駆け下りた。母は幼い妹を抱きしめてソファに座ってテレビを眺めていた。父は落ち着かない様子で部屋の中を歩き回っては、時折テレビに目をやった。テレビの中では、ガスマスクのようなものをつけたニュースキャスターが、篭った声で私たちに必死に呼びかけていた。
「原因はただ今調査中です。しかしこれは異常な事態です。ウイルスによるものか、もしくはこの真っ赤な月のせいなのか、未だに分かっておりません。皆様、絶対に外には出ないでください。」
そう言い終えると、カメラは外の画面に切り替わった。外に出歩いている人は少ないものの、ちらほらと、ゆっくりとした足取りで歩いている人達がいた。
いや、あれは「人」なのだろうか。
真っ白な髪の毛、燃えるような真っ赤な瞳、背中からは服を貫いて角のようなものが2本生えていた。その「人」が数人、足を引きずりながら、ゆっくりと歩き回っていたのだ。