第95話 「自由の咆哮」作戦 後編
橙の艦艇を割り振ったトランスは、黒島に言う。
「紅の旗艦は後ろの白の艦艇群に注力してくれ」
「しかし国連軍と橙の艦艇群でアレを墜とせるんですか?」
「大丈夫だ。その域に達していると俺が保障しよう」
「そうですか」
黒島はその言葉を信じ、後方へと移動する。
そこではすでに、大量の白の艦艇群が押し寄せてきていた。
「これは不味いですね。紅の艦艇群を呼び出してきます」
そういってレイズは目をつむる。
すると、紅の旗艦の後ろに紅の艦艇群が大量に出現する。
もちろん、白の艦艇群と同じだけの数を出す。
「紅の艦艇群を出して来たら、橙の艦艇群は必要ないんじゃないですか?」
「こういうのは経験と実績が大事ですから。ちゃんと民間人を前線に出してあげましょうね」
「はーい」
まるで小学校でのやり取りのような光景。
これが戦場で彼らは高校生以上でなければ、どれだけのどかだっただろうか。
「それじゃあ行きますか。最初から全力で!」
そういって、黒島は主砲を展開し、ミサイルサイロを開く。
「フルファイア!」
主砲射撃とミサイル発射が同時に行われる。
それと一緒に、紅の艦艇群も主砲による攻撃を開始した。
一方、それを見た橙の艦艇群も、状況を把握し、主砲攻撃を行う。
白の艦艇群も、遠距離から砲撃を開始し、両者撃ち合いとなった。
「よし、我々もやろう」
その様子を見ていた鞍馬は、決断する。
『こちら国連軍宇宙艦隊旗艦鞍馬、レッド・フリートが敵を引き付けている間に、我々の仕事をしよう。逆位相システム照射準備』
そういって国連軍宇宙艦隊と橙の艦艇群はモジュールを準備する。
『逆位相システム照射開始』
そういってモジュールから逆位相電波が照射される。
それはすぐさま静止衛星軌道上の艦に届き、そして機能を停止させた。
しかしそれは、人類側から見たら分からない。
そのため、しばし時間をおいてから鞍馬は次の指示を出す。
『全艦、敵側面に主砲攻撃準備』
そういうと、人類戦力の主砲が敵の側面を捉えるように動く。
そして照準が定まった。
『主砲、撃ち方始め』
国連軍宇宙艦隊からはレールガンが、橙の艦艇群からはビームが発射される。
それは、宇宙空間を飛翔し、そして敵の側面に命中した。
命中したとはいっても、特に爆発が発生するわけではない。しかし、レールガンから発射された砲弾は敵側面を粉砕し、ビームは外装を融解させる。
これを好機と見た宇宙艦隊司令官はさらなる攻撃を指示した。
『全艦、ミサイル攻撃準備』
そういうと、国連軍宇宙艦隊と橙の艦艇群のミサイルサイロが開く。
『ミサイル撃ち方始め』
そして攻撃命令を下す。
発射されたミサイルは数百以上に上り、そして敵に命中する。
敵側面に穴が空いていたこともあり、ミサイルは敵の内部のほうまで入っていく。
そして爆発する。
これにより、敵は制御を失い、そして地球に墜落していく。
『敵は撃墜された。これにより、静止衛星軌道上の敵はすべて墜とした』
その瞬間、通信からは歓声が湧き上がる。
流浪の民が襲撃してから1年と少し、地球を監視するように浮いていた敵の存在はすべていなくなったのだ。
鞍馬に搭乗している司令官は感極まって泣きそうになるが、まだ仕事が終わってないことを思い出す。
『全艦、後方の味方の援護に回れ。それの撃破をもって「自由の咆哮」作戦は終了とする』
一方後方では、紅の旗艦が中心になって白の艦艇群の撃墜に力を注いでいた。
「こりゃキリがないなぁ」
黒島はそう呟きながらも、突撃と離脱を繰り返しながら白の艦艇群を墜としていく。
「橙の艦艇群の逆位相システムはちゃんと起動しているんですか?」
「そのはずだ。現に生体艦長を破壊されている白の艦艇群も多くいる」
「でもそれ以上に数が多いってわけですか」
「システムも万能ではない。数が多いってことは、それだけ距離も空く。長距離になればなるほど、システムの効果は薄くなる」
「それってつまり、殴ったほうが早いってことですか?」
「そうなる」
その結論に、黒島はトホホとなる。
「そんじゃまぁ、システムの効果が出るように、頑張って白の艦艇群を沈めますか」
黒島は張り切って突撃を敢行する。
それに追従するように、紅の艦艇群が後ろにつく。
そして主砲攻撃やミサイル攻撃によって、白の艦艇群を次々と墜としていった。
その間に、国連軍宇宙艦隊や残りの橙の艦艇群が合流し、一大決戦となる。
橙の艦艇群や国連軍宇宙艦隊が逆位相システムモジュールを使って、白の艦艇群の生体艦長の活動を停止、もしくは破壊する。
白の艦艇群の活動を停止させたところを、紅の旗艦とその隷下にある紅の艦艇群が、その火力をもって全力で撃墜していく。
ある種の流れ作業のような連携で、白の艦艇群はみるみるうちに数を減らしていった。
そして残ったのは残骸のみとなる。
「活動中の白の艦艇群、レーダーに表示なし」
そう後藤が報告する。
それはすなわち、人類側の勝利を表していた。
『以上をもって、「自由の咆哮」作戦を終了する』
鞍馬からの通信。
この通信は、人類の偉大なる勝利であることを宣言していた。
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