第94話 「自由の咆哮」作戦 中編
No.1撃墜後、国連軍宇宙艦隊とレッド・フリートは次の攻撃目標に向かうために移動していた。
「しかしこの作戦、全部撃墜するまで終わらないってどんなものなんですか……」
「仕方ないだろう。この作戦自体、地球の包囲網を完全に破壊するという目標が備わっているのだからな。のこり4つの艦を破壊し終わらない限りは終わらないぞ」
「えーと、戦闘自体が数十分で終わって、そこから移動が数時間かかるとして、その間に休憩時間が小一時間程度入ってるってことは……。24時間くらいかかりそう……」
思わず黒島はいやな顔をする。
「そういうことを言わないものですよ。士気にも関わることですから」
そうレイズがたしなめる。
「でも、その士気は国連軍では最高潮に達しているようですけど?」
「あれはいいんです。自己解決しているようなものですし」
「はぁ……」
少しモヤモヤしたまま、黒島は艦を進める。
そして次なる目的地へと到着した。
「次はNo.3の撃破ですね」
「そういえば、サンプルとかって取らないんですかね?」
「今回はいらないみたいですよ。普通の白の艦艇で十分回収しているみたいですし」
「あれとはまた別のようにも見えますけどね」
「あれは結局の所、地球を封鎖している悪い奴らなんですよ。そんな悪い奴らはやっつけるのが一番です」
そういって、レイズは何かを悟ったような目をした。
『こちら国連軍宇宙艦隊旗艦鞍馬。これよりNo.3の攻撃を開始する。全艦、逆位相システム準備』
再び戦闘モードに移行する。
黒島は主砲の展開を済ませ、いつでも発射できるようにしていた。
『逆位相システム、照射』
そうして逆位相システムによる照射が行われる。
これも数分間、静かに照射された。
『攻撃用意、ミサイル発射準備』
全艦、ミサイルサイロが開く。
『ミサイル発射』
数千にも上るミサイルが一斉に発射された。
そのままNo.3側面に命中し、そして内部で爆発する。
その一撃だけで、No.3は簡単に誘爆し、そしてその制御を失う。
そのまま地球へと落下していった。
再び歓声が湧き上がる。それはまさに、人類の勝利へ一歩ずつ近づいている証拠だからだ。
『諸君、喜ぶのはまだ早い。我々には倒さねばならない敵があと3つ残っているのだ』
そう鞍馬から注意が入った。
もちろんそんなことは分かっている。だが、抑えきれないものは誰にでもあるのだ。
そんな国連軍宇宙艦隊とレッド・フリートは次なる目的地に向かって、歩みを進めていた。
次の目標は近いという理由でNo.8へ。
早速同じように逆位相モジュールを展開し、照射する。
『ミサイル撃ち方始め』
「発射!」
これまた数千のミサイルが宙域を埋め尽くして進む。
そして弾着した順番から爆発が発生し、まるでゲームのように爆発によって掘削するような感じで、次々と爆破しては掘り進めていく。
そして完全に風穴が空いた。
その時では、もうすでに自身を支えることも出来ずに、完全に墜ちていくだけであった。
また歓声が上がる。
その声には、もはや余興や娯楽の類いのような声まで入っていた。
「心配ですね……」
「何がですか?」
「艦を墜とす作戦が、こんなにも単純な作業となっていることがです。これでは緊張感が足りず、何かしらの被害を被る可能性があるということです」
「でも、多分、大丈夫でしょうよ」
「そうだといいんですけど」
そういって、今度はNo.7の撃墜に向かう。
No.7も、何事もなく、地上へと墜ちていった。
『残るはNo.5だけだ。総員、気を引き締めていけ』
そう鞍馬の指揮官は言う。
確かに、ここまで緊張の糸が緩んでいるような感覚ではある。
「そして残るはNo.5だけですか」
「これまでと同様に、変化のない艦です。よほどのことがない限りは問題ないでしょう」
そういって同じように、鞍馬から通信が入る。
『これよりNo.5撃破のために攻撃を開始する。心してかかれ』
その瞬間、後藤が叫ぶ。
「No.5から高エネルギー反応!攻撃来るよ!」
その瞬間、国連軍宇宙艦隊の横をかすめるように、長距離砲撃が入る。
レイズは叫んだ。
「蒼の艦艇群出動!国連軍宇宙艦隊を守って!」
そういうと、国連軍宇宙艦隊の前に蒼の艦艇群がワープしてきて、バリアを展開する。
しかしこのバリアがどこまで国連軍宇宙艦隊を守ってくれるかは定かではない。
するとまた後藤が叫ぶ。
「艦隊後方にワープ反応!これは……白の艦艇群!」
「不味い!後ろには黒の艦艇群が!」
「それに関しては大丈夫だ」
そういってトランスは橙の艦艇群に呼びかける。
「諸君。現在、我々は挟み撃ちのような状態に入っている。そこで、このまま前方のNo.5に攻撃するか、リスポーンして後方の白の艦艇群に攻撃するか5秒以内に選べ。選ばなかったらこちらが勝手に割り振る」
そういって橙の艦艇群の戦力を二分させて、静止衛星軌道上の艦と白の艦艇群に対応するようにする。
「まさに正念場か」
黒島はそう呟いた。
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