第93話 「自由の咆哮」作戦 前編
それから幾ばくか時間が過ぎて、5月1日。
ゴールデンウィークの真っ只中にも関わらず、黒島たちはある場所に集合していた。
「これからNo.1を撃破しにいくんですか」
「まぁ、撃破と言っても差支えないですが、作戦行動が分岐しているのでなんとも言い難いですね」
紅の旗艦では、そういった会話がなされている。
そこには、すでに国連軍宇宙艦隊。そして黒の艦艇群とそれに付随するようにいる橙の艦艇群。
これから大規模作戦、「自由の咆哮」作戦が始まるのだ。
『こちら国連軍宇宙艦隊旗艦鞍馬、これより「自由の咆哮」作戦を開始する。艦隊前へ』
そうして一斉に艦が動き出す。
それに合わせて、レッド・フリートも配置につく。黒の艦艇群はある程度距離を取った場所で待機するからだ。
しばらく航行していると、目的の艦が見えてくる。
「No.1か……」
通し番号のみで呼ばれる白の艦艇の一つ、No.1。
まるで国連軍宇宙艦隊とレッド・フリートを出迎えるように、そこに鎮座していた。
「No.1とは言っても、他の奴とは別に差はないんですよね?」
「えぇ、通し番号は人類側が勝手につけた名前ですから」
「それじゃあこれも、頑張れば紅の旗艦のみで何とかなっちゃうタイプですか」
「やろうと思っても、状況が状況なので出来ないと思いますけどね」
「そうですよね。今は仲間も増えましたし、何とかなりますよ」
そのまま艦隊は全身を続ける。
そして作戦宙域までやってきた。
『国連軍宇宙艦隊旗艦より各艦へ。作戦宙域に侵入した。これより、逆位相システムを一斉照射させる。全艦、逆位相システム用意。モード、破壊に設定』
そういうと、逆位相システムモジュールが起動する。
国連軍宇宙艦隊と橙の艦艇群に搭載されている分の逆位相システムモジュールが一斉にNo.1へと向いた。
『モジュール、照射』
そして逆位相システムが起動する。
しかし絵面的にはまったくもって何をしているのか分からない。
「これ本当に照射しているんですよね?」
「している。その証拠に俺は頭痛に見舞われている」
「そうですか……」
そのまま数分が経過する。
外見的には何も変化がない。
「これさっさと攻撃した方が早くないですか?」
「まぁ、待て。次の指示が来るまでは辛抱だ」
そういっていると、鞍馬から連絡が入る。
『総員、主砲攻撃用意。目標No.1側面』
「ですって」
「よっしゃ」
そういって、黒島は主砲を展開する。
「主砲エネルギー充填完了」
『全艦撃ち方始め』
「発射!」
そういって主砲が発射した。
国連軍も一緒にレールガンを発射する。
数十秒後、No.1側面に命中した。
バリアも特に張っているわけでもなく、そのまま破損したままである。
「命中してますけど?」
「ここまでは想定していた内容だ。問題はここからだな」
そういうと、トランスは橙の艦艇群に連絡をする。
「ここからは、敵の動向を偵察する任務だ。誰かやりたい奴がいれば、No.1に接近せよ」
そういうと、何隻かの橙の艦艇が前進する。
そして、その距離は次第に近づいていく。
そして弾着した穴から内部に侵入する所まで行った。
「これは?」
「モジュールが効いているということだな。内部にいる生体艦長が破壊されたのだろう」
「と、いうことは?」
「成功だ」
『こちら鞍馬。モジュールの有効性を確認した。これよりNo.1撃墜のための攻撃を行う。全艦、殲滅戦用意』
ここからが本番だ。偵察に出ていた橙の艦艇は内部にとどまり、自爆予定である。
『全艦、撃ち方始め』
その合図とともに、国連軍は全力攻撃を敢行する。
それに倣い、紅の旗艦も全力で攻撃を行う。
「フルファイア!」
全主砲斉射とミサイル全力発射。
そして橙の艦艇群による一斉攻撃。
そのレッド・フリートによる攻撃は地上からでも観測できるほどであった。
そして着弾する。
一斉攻撃をしたことによって、No.1の外装は完全にボロボロになる。
そして内部に入り込んでいた橙の艦艇数隻が自爆することで、内部から誘爆を誘う。
これにより、No.1は静止衛星軌道上にとどまるだけの推力を得られなくなる。
そのまま大気圏に突入し、地球に墜落した。
その瞬間、通信から歓声が響き渡る。
「うるさっ。どんだけ喜んでるんですか」
「それも仕方ないだろう。半分程度ではあるものの、人類の力によって撃破したんだ。そりゃ喜んでも誰も叱る者はいないだろう」
「そんなものですか」
「祐樹さんは人類側なのに喜びが少ないですね。もっと喜んでいいんですよ」
「まぁ、この程度は出来ても当然ですから」
そういうと、レイズは黒島にズイッと近寄る。
「な、なんですか?」
「それではダメです。できることを当然のように言ってしまっては、人間は成長しません。自分を肯定してください。自分の長所を伸ばしましょう」
「急に人生相談みたいになったんですけど」
「それもまた人生です」
なんだか哲学のようなことを言われた黒島であった。
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