第92話 シンガポールの戦い
何事もなく、「自由の咆哮」作戦まで時間がつぶせるだろうと黒島は思っていた。
すでに学校側には、5月1日以降作戦のために公欠扱いにしてほしいという要望は出しているし、受理もされている。
あとはその時まで待つのみであった。
しかし、ひと悶着が発生する。
黒島のスマホから鳴り響く警報音。早期警戒システムの緊急速報メールだ。
「こんな時に……!」
「行きますよ祐樹さん!」
そういって黒島と後藤は紅の旗艦に乗り込む。トランスも紅の旗艦に乗り込み、「Fleet of Red」のイベントモードを発動していた。
「レイズさん、場所は?」
「場所は……、シンガポール!」
アジアでも有名な観光地、シンガポール。
その上空を闊歩するように、白の艦艇群はゆっくりと、しかし確実に進んでいた。
そして地上攻撃が行われる。白の艦艇群から発射されたビームは地上目掛けて直進していく。
その時だった。
途中に現れた何者かによって防がれ、爆炎がほとばしる。
そして煙が晴れたとき、そこにいたのは蒼の艦艇群であった。
「よかった、間に合いましたね」
これはレイズの発案で、相手が初手で攻撃してくるのなら、こちらは初手で防御をすればいいという、ざっくりとした考えのもと行われた行動である。
「なんともまぁ、ざっくばらんとした考えではありましたけど」
「実際地上には攻撃がいってないでしょう?」
「それは認めますよ」
「それじゃあ今度はこっちからの攻撃ですね!」
そういってレイズはゴーサインを出す。
それに合わせて、黒島は紅の旗艦を前進させる。
上空にて待機していた紅の旗艦はそのまま降下して、白の艦艇に攻撃を仕掛ける。
地上では蒼の艦艇群がバリアを張って防御しているため、まともにやりあうことはできない。そのため、必然的に紅の旗艦の相手をしなければならないのだ。
紅の旗艦は、艦首砲を使って白の艦艇群を精密に狙い撃つ。
それを察知した所で、白の艦艇群は散り散りになるだろう。
そこをばらけさせないように、外周をミサイルによって包囲する。
無理に通ろうとすれはミサイルの餌食になり、密集すれば主砲を食らうことになる。
蒼の艦艇群が地上にいるからこそ成り立つ、完全な包囲状態だ。
そこに橙の艦艇群と国連軍宇宙艦隊がやってくる。
『こちら国連軍宇宙艦隊旗艦瑞鶴、ここからは我々の仕事だ』
「『Fleet of Red』の諸君に告ぐ。ここからはボーナスタイムだ。自由に撃ち落としても白の艦艇を拘束してもいい。早いもの順だ」
こうして、国連軍宇宙艦隊と橙の艦艇群によって殲滅状態に陥った。
しかし、そう簡単に幕は閉じなかった。
「っ!上空より反応あり!白の艦艇の第二波だよ!」
上空10000mに現れた白の艦艇群。
それが一斉に降下して、今まさにレッド・フリートと国連軍宇宙艦隊に攻撃を加えようとする。
「蒼の艦艇群は上空に向かって防御!橙の艦艇群は蒼の艦艇群の下につくように待機!紅の旗艦は最前線に出ます!」
「了解!」
そういって各員は動いていく。
橙の艦艇群は指示に従う余裕がないのか、モタモタと動いている。
仕方なくトランスが誘導表示をつけ、橙の艦艇群を動かしていく。
それに合わせて、蒼の艦艇群が配置についた。
紅の旗艦は白の艦艇群を迎え撃つべく、急上昇する。
「全砲門、撃て!」
火力を前方に集中させて、攻撃を行う。
降下してくる白の艦艇群相手なら、それだけで十分な攻撃になる。
砲撃が命中して、そのまま残骸に命中する白の艦艇群。それだけで連鎖的に白の艦艇群は墜ちていく。
もちろんそれに限らず、回避して降下を続ける白の艦艇群もいる。
「そんな白の艦艇にはプレゼントをやらないとな!」
黒島はノリノリでミサイルサイロを開く。
そして一斉にミサイルを発射した。
ミサイルはそのまま上昇し、回避していた白の艦艇群を追い詰めていく。
回避した所に、また回避しなればならないものがやってくるというのは、まさに極限の状態ともいえるだろう。
そんなミサイル攻撃も回避してきた白の艦艇群。
紅の旗艦の出番はここで終了といわんばかりに、前線から離れていく。
そこに待っていたのは、橙の艦艇群であった。
今回はトランスが橙の艦艇群の司令官となり、攻撃を加えようとする。
「橙の艦艇群、一斉攻撃開始!」
瞬間、まるで直径が何kmもあるかのようなレーザービームによる集中砲火が白の艦艇群を襲った。
それにより、白の艦艇群はほとんど蒸発するように爆沈していく。
そして残骸がシンガポールの街並みに降り注ぐ。
こうして、シンガポールでの戦闘は終了した。
「いやぁ、まさか第二波が来るとは思ってもなかったですよ」
「本当ですよ。蒼の艦艇群や橙の艦艇群がいたからなんとかなってたようなものですからねぇ」
「今回の戦闘で一体何隻が墜ちたんだろうな」
「急にどうしたんですか、トランスさん」
「いや、少し前から引っかかっててな。以前声が聞こえる白の艦艇がいただろう?」
「あぁ、あの雑音交じりの」
「本来、旗艦級の隷下に存在する艦艇群は、命令を忠実に果たすために、思考や自己を封印されるように設計されているのだ」
「ん?それじゃああの時の会話のようなものは成り立たないってことですか?」
「そうだ。本来ならおかしな話だがな」
「……何かいやな予感がします」
そうレイズが言う。
その言葉の真意は黒島たちは、まだ知る由もなかった。
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