第91話 作戦
4月15日。
この日、黒島のスマホにあるメールが届く。
差出人は国防省だ。
「なんたってわざわざ国防省からメールが……?」
そういってメールの内容を確認してみる。
その内容は以下の通りだった。
『現在、国連軍軍事参謀委員会が主体となって、静止衛星軌道上の流浪の民艦艇に対する攻撃作戦案が計画中だ。これに我が国は主力として参加、艦艇撃破に向けて動くことになる。その際、レッド・フリートにも足を運んでもらい、この作戦遂行に全力を注いでほしい。現在作戦は立案中であり、詳しい内容は話すことができない。そのため、後日詳細のメールを送る』
そのように書かれていた。
「作戦、ですか」
「いよいよ人類の反攻作戦が実施されるわけですね。ワクワクしてきました」
「それでワクワクするのはレイズさんだけだと思いますけど……」
一方、国連本部の軍事参謀委員会では、作戦立案のための会議が行われていた。
「現在、流浪の民の艦艇は静止衛星軌道上にあと5つ残っている」
「No.1、No.3、No.5、No.7、No.8だな」
「No.2、4、6はレッド・フリートの協力あって撃沈することができた」
「左様。よって今回の作戦でもレッド・フリートの存在は外すことはできない」
「彼らが善意で協力してくれている間は、我々も安寧の時を過ごせるということか」
「その話は何度もしたであろう。今は作戦立案に注力するべきだ」
「その通り。まずは作戦目標の決定からだ」
「今回の作戦は掃討戦。残りの静止衛星軌道上の艦艇を撃破することが目的だ」
「現在の所、白の艦艇と称される艦艇群には、レッド・フリートが開発したモジュールが役に立っている」
「しかし、それが静止衛星軌道上の艦艇にも有効であるかは定かではない」
「よって、最初の目標はレッド・フリートの橙の艦艇と呼ばれるものを盾にして、慎重に行くべきだ」
「しかし、橙の艦艇は民間人が操作する無人艦ではないか。もし艦艇が撃墜されることがあるなら、それはそれで問題になるのでは?」
「いや、橙の艦艇はゲームをモチーフに操作される艦だ。よって撃沈されても問題はあるまい」
「では、最初の目標を設定しよう……」
そのような感じで、作戦目標が設定されていった。
数日後、黒島のもとに再びメールが届く。
差出人はもちろん国防省からだ。
『今回の静止衛星軌道上の流浪の民艦艇の攻撃作戦要綱が決まった。作戦名は「自由の咆哮」作戦である。まずは、No.1と呼称される艦艇を攻撃する。それ以降の動きは、国連軍宇宙艦隊の共通フォルダにアップロードした。詳細はそれを参照してほしい』
それと同時に、ファイルが添付されている。
ファイル内容は、作戦概要が書かれたレジュメだった。
それによれば、まずはNo.1を襲撃する予定であるそうだ。そしてその際に、逆位相システムモジュールを起動し、反応をうかがうというものである。
もしこの時に反応があるとすれば、今後の作戦はモジュールを使った作戦が中心になるし、反応がなければ橙の艦艇を中心に殲滅戦を実施するほかないという。
「こんな感じの作戦で十分なんですかね?」
「大丈夫だと思いますよ。共有フォルダの内容もそんな感じでしたし」
「ほんとですかねぇ……」
そういって作戦決行日も指定された。
決行日は5月1日。協定世界時0時より発動される。
日本時間に直せば、5月1日の9時。いい時間だろう。
「ここまで来れば、腹をくくるしかないですか」
「大丈夫です。それまでは橙の艦艇の準備次第ですから」
「そうだな。おかげさまで『Feet of Red』のアクティブユーザーもだいぶ増えた。これからが正念場だろう」
黒島とレイズの会話にトランスが入ってくる。
「そうだ、黒島。パソコンを借りるぞ」
「また何か企んでいるんですか?」
「そうだな。企んでいる訳ではないが、ある構想を打ち出してな。それが実現可能か政府に問い合わせようと思ったんだが」
「今度は何を考えているんですか……」
「ふっふっふ。世界の各主要都市をバリアで覆いつくす、都市バリア展開構想だ」
「……またとんでもないものを打ち出してきましたね」
「ゆくゆくは地球丸ごとバリアで覆いつくせればいいと考えている。それだけ白の艦艇群には各国手をこまねいていたとも言えるからな」
「まぁ確かに脅威ではありますけど」
「そのためには、我々が持つ技術の一部を明け渡さないといけない。特にバリアに関しては、流浪の民に使われている機関が関係してくる。そこも含めてどこまで人類がやれるか、というのは見物だな」
そういって、黒島のパソコンを使って、国防省と技術者との会合に入る。
「なんだかソワソワしますね」
「何がです?」
「レイズさんが戦闘の時にワクワクしているような感じで、なんだか落ち着かない感じなんですよ」
「分からなくもないですよ、そういうの」
「俺は立派にやれているのだろうか……」
「急に感傷に浸るのやめてください」
そういって、黒島は白の艦艇が襲ってこない日々を願った。
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