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異次元無双の紅き艦  作者: 紫 和春


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第9話 現状報告

 それから数日、黒島の耳にとんでもない情報が舞い込んできた。


『国連、第5次攻撃を容認。数週間以内に作戦行動に移す模様』


 すなわち、5度目の流浪の民に対する総攻撃が行われる見通しだという。


「正直無茶ですよ」


 黒島の部屋で、レイズが言う。


「とは言っても、地球存亡の危機みたいなところもありますし、仕方ないんじゃないですか?」

「甘いですよ祐樹さん」


 そういって、レイズはグッと画面に近寄る。


「現在地球の戦力は軒並み壊滅状態、まともに動けるものもいない程じゃないですか」

「それはそうですけど……」

「どれだけ無茶であるかを、ここで説明させてもらいます」


 そういって、レイズは眼鏡をかけ、メモ帳を引っ張り出す。


「……その眼鏡は?」

「伊達です、深い意味はありません」


 そういって、レイズはネットに転がっている情報や秘匿回線から拾ってきた情報を元に、解説を始める。


「今回の第5次攻撃、参加国は日米中露のほかに、フランス、イギリス、ドイツ、インド、ブラジルが参加する予定です。ここまではいいですね?」

「もちろん」

「地球側の戦力としては、物質浮遊技術によって建造された艦艇が日米中露合わせて28隻。この国以外の国からは合計で7隻参加予定です」

「はい」

「物質浮遊技術というのは、2040年にアメリカが保有していたUFOに関する機密文書に存在していた技術のことです。アメリカはこれの開発をスタートさせて、6年後に初めて垂直離着陸型の宇宙戦闘艦が誕生しました。そしてその技術を日本に与えたり、情報流出で東側に流れたりして、現在技術をして保有しているのは主に日米中露となっています」

「この辺は知ってますね」

「で、そんな所に流浪の民がやってきて、保有していた艦艇を使って総攻撃を行うも敗走。結果第4次攻撃までに全体の8割程度を喪失したというわけですね」

「こう考えると、結構ひどい結果になってますね」

「でしょう?そして現在は、この物質浮遊技術を他国に供与し、世界全体で戦力の確保を行うとしています」

「なんというか、無残な結果になってますね……」

「地球側の主力兵装は、レールガンによる側面投射というもの。地上と宇宙を行き来する関係上、艦底部分には主砲を設置できないという設計ミスのような残念さ。これじゃあ敗走するのも仕方ないですね」

「いや、艦底部に主砲置けないのはしょうがないでしょう……」

「ま、こんなところですかね」


 そういって、レイズは眼鏡をとる。


「総合的に見てみると、地球の戦力は全体的に前世代的な装備をしていて、流浪の民と敵対するのは悪手と見るべきですね」

「そんなこと言ったら負けが見え見えじゃないですか」

「だからこそ、私たちが手を貸すべきなんです。そのための私と艦なんですから」


 しかし、黒島は渋っていた。

 今ここで紅の旗艦を地球側に出すというのは、混乱を招きかねないことを意味している。

 そうなれば、世論がいろんな方向に飛び火すること間違いなしだ。

 ただでさえ世の中は、流浪の民と徹底抗戦する人々と流浪の民を歓迎する人々、そして神の一種として神格化している人々などが渦を巻いている状態である。

 むしろ今の状態でいいのかもしれない。白の旗艦が、地球到達一発目に質量爆弾を大量投下しなかった保障はどこにもなかったはずだから。

 そう考えると、現状の方がまだ恵まれている方なのかもしれない。


「とにかく、あとは祐樹さんの決意次第ですよ」

「そう言われても……」


 悩みに悩む黒島。

 ここで選択を間違えれば、圧倒的に不利な状況に陥る可能性もある。


(レイズとしては、ここで地球側に加担していることを示したいんだろうけど……)


 そうなると、タイミングというものが問題になる。

 しかし、どんなタイミングであっても、地球には相当な衝撃が走ることは必死だろう。


「……ちょっと考えてもいいですか?」

「なるべく早くしてくださいね」


 そう言われ、黒島はこの日は眠ることにした。

 翌朝起きたとき、テレビのニュースでは、第5次攻撃についての解説が行われていた。


『……本日は軍事に詳しい、埼玉工科大学の山下教授にお越しいただいています。山下さん、今回の第5次攻撃というのはどのような役割があるのでしょうか?』

『今回、国連が承認した第5次攻撃はこれまでの攻撃の総集となる形になると考えます。これまで人類は敗走の一途を辿っています。そのため、この作戦では、人類の命運を掛けることが前提となってくるでしょう』

『しかし、これまで日米中露の艦隊は負け越しています。今回参加国が増えたからといって、勝ちに転ずることはあり得るのでしょうか?』

『正直言って、難しいことではあります。事実、これまで人類は負けしか経験していません。参加国が増えた程度では、もしかすると勝つことが困難だと言わざるを得ません。本当はこんなこと言いたくはないのですけど』

『確かに、日本では規模は小さいですけど、世界終末を謳うデモ行進が行われています。世界に向けてみると、大規模に行われていて混乱が続いている国もあります。今後人類は地球知的生命体とどのように接していくべきなのでしょうか?』

『それは私には答えることができない質問と言えるでしょう。今後、どのようにしていくかは、知的生命体の出方次第としか言いようがありませんからね』

『ありがとうございました』


 黒島はこれを聞いて、複雑な気分になった。

 もし、この機を逃してしまったら、地球側の大きな損失になるだろう。

 黒島は葛藤の中、学校へと向かった。

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