第88話 SNS
3月も終わりに近づいている26日。
この日、黒島のスマホには、あるメッセージが届いていた。
「なんだろ?」
差出人はツイッチューブ日本公式のようだ。
内容は次の通りである。
『ツイッチューブをご利用のお客様。いつも弊社サービスをご利用いただき、ありがとうございます。今回、弊社はお客様である「レッド・フリート」を公式に認定し、今後のサービス向上を狙っていただきたいと考えています。この公式認証は弊社内部でもいくつかの会議を経て行われたものであり、特例として認められたものです。今回の公式認定によって、受けられるサービスが大きく変更されることはありません。細かいサービス変更については以下のリンクからご確認ください』
このような内容だった。
「……これ、つまりはどういうことですか?」
「これ、あなたに公式マークをつけますよって言う内容のことなんじゃないですか?」
レイズに言われるように、ツイッチューブのアカウントに飛んでみる。
すると、ユーザーネームの横には公式マークを示す、認証バッジがつけられていた。
「俺たちのアカウントが公認されたってことですか?」
「そういうことになると思いますよ。メッセージの内容もそんな感じですし」
「特にそういった申請はしてないんだけど……」
「特例として認めたって書いてありますし、そうなんじゃないですか?」
「ふーん。まぁそれはそれでいいとしましょう」
そういって黒島はスマホをしまおうとする。
「ちょっと待った」
そこに待ったをかける声が。
声の主はトランスであった。
「なんですか、トランスさん」
「せっかく公認バッジもらったことなんだし、これまでため込んでいた戦闘映像を公開するべきだろう」
「トランスさんそんなの撮ってたんですか?」
「当たり前だろう。ツイッチューブのためにと思ってやってたんだ」
「それは、わざわざご丁寧に……」
「それに最近はツイッチューブに何か投稿しているわけでもあるまい。ならここら辺で我々の活動を知ってもらうためにも何か動画でも上げたほうがいいんじゃないか?」
「それは、まぁ一理ありますね」
「だろう?それじゃあ今からアップロードする。少しパソコンを借りるぞ」
「あっはい」
そういって、トランスは黒島のパソコンに入り、動画をいじる。
簡単な編集を行ったあと、トランスはそれをレッド・フリートのアカウントに投稿した。
「これで良し。いやはや、すっきりした。これで心置きなくデータを削除できる」
「なんでわざわざ削除するようなことを……?」
「机の上に散らかった授業のプリント類をノートに書き直して、プリント類を捨てたようなものだ。すっきりもするだろう」
「まぁ、そうかもしれないですが」
そんな感じでツイッチューブにこれまでの戦闘動画をアップロードした。
黒島は今後は適度なつぶやきでもしようと考える。
それから半日程して、黒島はふとレッド・フリートのツイッチューブを覗く。
するとそこには、大量の通知が来ていた。
「な、なんだこりゃ!」
思わず黒島は大声を出してしまう。
その内容は、特に面白味もない戦闘風景だけ。
しかしこれが、主にミリタリー界隈にて拡散された模様である。
コメントも多数寄せられており、貴重な資料であるなどと言った、戦闘を絶賛する声が多くあった。
「こ、こんなに反響があるなんて……」
「それだけ、人類は勝利というものに渇望していたのだろう」
そういってトランスが出てくる。
一緒にロビンやレイズ、ジーナも出てきた。
「ほんと、ただの戦闘だっていうのに、価値を見いだせる人はいいねぇ。人生楽しんでるよ」
「そういう人もいる。それを許せるのが社会の多様性だよ」
「私たちはただ、勝利をするだけ。それ以外には何もありません」
「彼らは欲しがっているのよ、人類はまだ負けてないということを」
なんだかネガティブなことを言い出したレイズとジーナ。
黒島は、その考えに肯定も否定もしなかった。
その後、投稿した動画は拡散を続け、様々な人間の目に止まる。
そして論争や衝突がツイッチューブ上で発生した。
この辺りは特筆すべきことはない。なんてことはないツイッチューブの日常だ。
しかし、黒島は考えを改めるべきかとも考えた。
「ここで不用意に何かを呟けば、それが論争になる……」
SNSでの怖い所はまさにここだろう。
残念ながら、レッド・フリートのアカウントの立場としては、まさに火種と言っても過言ではない。
例えば、戦闘のことに関して何か反省をした所で、反戦主義者のアカウントが殺到し、コメントを荒らしていくことだろう。
では日常のことについて呟くのはどうか。これも同じように反戦主義者が出てくることだろう。
そしてどちらにせよ、ミリタリー界隈としては邪魔な呟きは避けてほしいという願いで一致する。
こうして、そこからどのような発信をした所で、何かしらの論争が始まるのは目に見えているのだ。
「故に発言は慎重に、か……」
黒島はソーシャルメディアやSNSの怖さについて悟ったのだった。
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