第81話 東京の戦い
それから数十分後。
霞ヶ浦基地の滑走路脇のエプロンには、特別に地上に接地できるタイプの橙の艦艇が一隻降り立っていた。
「それで、これからどうするんです?」
「簡単だ。この橙の艦艇のメインコンピュータにさっきのシステムをコピーする」
「それ、わざわざ艦艇を地上におろしてやらないといけないものですか?」
「人類には、どんなものを扱っているのかを知っておいてほしいというのが本音だ」
「さいですか……」
そういって、アスクルテックの人はパソコンを操作していた。
「それで、あのパソコンに橙の艦艇操作用ウィンドウを導入させているんですか」
「一応、テストも兼ねるべきかと思ったからな」
「ますます外でやる意味がなくなってきているんですが……」
「それでも、見ろ。整備員の面々は興味深そうに見ているじゃないか」
「それもそうですけど」
そんなことを話しているうちに、アスクルテックの人は操作用ウィンドウの導入を終えた。
「それを起動したら、この橙の艦艇のIDを入力して、接続してくれ」
「……できました」
「それじゃあ、開発者用のウィンドウを開いてくれ」
「はい」
「そこから、さっきの逆位相システムを、上から13番目のフォルダに放り込んで、保存してくれ」
「了解です」
そんな感じで、システムを構築していく。
「……これで完成のはずだ」
「やっと終わりましたか」
「そんな風に言ってやるな。先方も必死にやっているんだ」
「分かってますよ、そのくらい」
「まったく……」
そういうと、アスクルテックの八木がトランスに聞く。
「それで、これが正常に動くかテストを行いたいのですが」
「あぁ、そうだな」
そんなことを言っていた時だった。
全然話に入ってこなかったロビンが出てくる。
「やばいぜ!白の艦艇が攻めてきた!」
「こんな時にか」
「今度はどこです?」
「……東京だ」
大都市東京。
その上空に白の艦艇群が群れをなして押し寄せてきていた。
前回までの反省を生かしているのか、襲撃直後に、対地攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃は地面に到達すると思われた。
しかし、それは東京全体を覆う巨大な膜のようなものによって防がれる。
東京ハイタワー上空に現れたのは、蒼の旗艦であった。
「ジーナさん!?」
「前回はあれだったけど、今回は街を守る。それだけだから」
「ありがとうございます……!」
「それより、白の艦艇群を攻撃しなくていいの?」
「それなんだが、提案がある」
トランスが何か考えを持っているようだ。
「一体何です?」
「簡単なことだ。この橙の艦艇を出撃させる」
「な、何言っているんですか!たった今システムをコピーしたばっかりなんですよ!テストもなしに実戦に出すのは危険です!」
八木が反論する。
「もちろん、テストしない状態で出撃させるのには抵抗もあるだろう。だがそれは問題ない。俺の勘がそう言っている」
「それ信用しちゃいけないやつですよね?」
「まぁ、そんな固いことを言うな」
「とにかく今は白の艦艇群をどうにかしないといけない時間ですよ」
そうレイズがせかす。
「そうでした。とにかく行きましょう」
そういって黒島たちは紅の旗艦へと乗り込む。
そのまま東京上空へと向かう。
その東京上空では蒼の旗艦と白の艦艇群がバリアを介して衝突していた。
白の艦艇群がバリアを突破しようとビーム砲撃を行うものの、それは蒼の旗艦のバリアによって防がれる。
そんな中現れた紅の旗艦は、ワープ直後すぐさま攻撃に転じた。
「主砲一斉射!」
主砲全門を使って、縦横無尽に攻撃を加える。
今回地上への攻撃は、ありがたいことに蒼の旗艦がバリアを張っているおかげで被害のようなものはまったく出ない。
黒島は思いっきり攻撃をすることができる。
「よっこいしょー!」
紅の旗艦を全力で振り回して、白の艦艇群に向けて攻撃を行う。
攻撃によって発生した残骸は、蒼の旗艦が発生させているバリアの上に乗るように落ちる。
しかし今回も数が多い。このままでは、押されて艦にダメージを負う可能性もある。
「白の艦艇群、総数2万!」
「マズいな……。このままじゃ押し切られそうだ」
「紅の艦艇群でも呼びますか?」
「そうですね……」
「いや、その心配はない」
どこからともなく、トランスが出てくる。
「トランスさん。もしかして、さっきの橙の艦艇を使うつもりですか?」
「もちろんだ。そのために飛ばしている」
レーダーを確認してみると、IFFに反応がある。
遠くのほうから、霞ヶ浦基地で改造を施した橙の艦艇がやってきているのだ。
「操作はあのエンジニアにさせている。ついでだからな」
「かわいそうに……」
「とにかく、逆位相システムを起動させろ。それで白の艦艇群に変化がなかったら、この計画はここで終了だ」
そういって、トランスは八木に合図を送る。
それを受け取った八木は、システムを起動させた。
すると、レイズやトランスに異常が発生する。
「ぐぅ……」
「頭が……」
「大丈夫ですか?」
「あぁ。旗艦級のプロテクトがなければ、今頃脳を破壊されていたところだった」
「おかげで、白の艦艇群は活動を停止したようですよ」
そういって空を見る。
そこには、原型を保ったまま、墜落する白の艦艇群の姿があった。
「実験は成功だ。俺の勘は間違っていなかった」
「これ実験のつもりだったんですか」
「でなければ結果が出なかっただろう」
「そうかもしれませんけど」
こうして、人類は新たに戦う武器を手に入れることができた。
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