第75話 パリの戦い 前編
フランス、パリ。現地時間2月22日10時28分。
いまだバリアによる都市封鎖が行われていた。
この状況を打破するため、フランス軍による工作活動が続いていたが、それも全くの無意味に終わる。
そんな状況の中、パリ郊外に突如として現れるものがいた。
紅の旗艦である。
紅の旗艦はゆっくりとバリアのそばまで行くと、そのままシャボン玉の膜を通り抜けるように進んでいった。
それを見たフランス軍の兵士や現地住民は驚く。あれだけ何物も通さないという強い意志を感じるものを、いとも簡単に突破してしまったのだから。
一方、紅の旗艦では、この後のことについて話し合っていた。
「まさかジーナがこのような強硬な手段を用いてくるとは思いませんでした」
「レイズに執着していることから、このようなことを考えられなかったものかね?」
「女の子って意外と執着心持ってるからねぇ」
レイズとトランス、そしてロビンが話す。
「しかしどうするんです?本当に決闘することになったら」
黒島が聞く。
「いえ、必ず決闘になります。ジーナはそういう子ですから」
「なんか決闘って怖いなぁ……」
「大丈夫です。紅の旗艦に乗っている限りは墜ちる心配はありませんから」
「本当かなぁ?」
「本当ですって……。と、もうすぐ着きますよ」
目前にはパリを象徴するエッフェル塔がそびえたっている。その真上に、それはいた。
艦全体を蒼くした少し古い潜水艦のような形をした艦。紅の旗艦と対をなすようなそれは、静かにこの時を待っていたようだった。
「あれが蒼の旗艦……」
「そう、完全防御を得意とする防御特化の艦。ほかにも機能を備えていると聞いていますが、それを明かすことはありませんでした」
「不明な機能ねぇ」
「とにかく、それに気を付けましょう」
そういっていると、蒼の旗艦から通信が入ってくる。
『レイズ、ここまで来てくれてありがとう。貴女とはいつも決着をつけたいと思ってた』
「へぇ。そんなことを思っていたんですね。人から愛されるというのは悪くないですね」
『私のこの思いを愛と表現するなら、貴女からの思いは残虐そのものよ』
「あなたいつからそんな文学的な少女になったんですか」
『御託はいいわ。決闘を始めましょう』
そういって通信が切れる。
黒島は気を引き締めた。
その瞬間、蒼の旗艦から砲撃が飛んでくる。
「グゥ!」
黒島の操縦と、後藤のバリア展開のおかげで、何とか直撃は免れた。
しかし急な回避行動だったため、少しバランスを崩してしまう。
建物ギリギリの所まで高度を落とす。
「危なっかしいな。オートパイロットでもつけるか?」
「そんなことしたら戦闘に制限がついてしまうでしょうに」
そんな無駄口を叩きつつも、黒島は姿勢を元に戻す。
蒼の旗艦はなんの追撃を行わず、ただ静かにエッフェル塔の上に浮かんでいるだけだった。
「なんだ?こっちから攻撃しない限りは何も手出ししないつもりか?」
「そうかもしれません。彼女の防御力は決して侮れるものではありませんからね。基本的に自分から手出ししなければ、最強の存在と行っても過言ではありませんから」
「そう言われると、撃破したくなるような存在ですね」
「黒島はそういうのに燃えるタイプか」
「そういう自分の個性は大事にした方がいいぞ」
「今、人生相談してました?」
そんなことを言いつつ、黒島はゆっくりと蒼の旗艦に近づいていく。
「こんな状況だからでも、分かっていることはあるんですよ」
そういって主砲を一門分発射する。その主砲は、蒼の旗艦のバリアに阻まれた。
「やっぱり一筋縄では行かないか」
「じゃあどうするの?」
「まずはごり押しだな」
そういって黒島はすべての主砲を展開する。ついでにミサイルも発射可能状態にした。
「全門斉射!」
通常の紅の旗艦による、全力火力投射。
それをもってすれば、完全な状態のアメリカ海軍第7艦隊を壊滅状態に陥らせることも可能な程だ。
しかし、そこは蒼の旗艦。完全な防御を持っているため、それらをすべて防いでしまう。
「これでもダメか」
「機関圧力低下。出力20%カット」
「次の手はどうするの?」
「ちょっと考えがあるんですけど、レイズさん協力願えますか?」
「はい?」
そういって、レイズに提案をする。
「なるほど、やってみる価値はありそうですね。難しいですけど」
「何、その辺は俺も協力しよう」
「ありがとうございます」
そういって、黒島はあるものを起動する。
二重銃身回転式狙撃銃だ。
これにあるものを接続する。
『コマンドにないユニットが接続されました。深刻な障害が発生する恐れがあります。直ちに使用を中止してください』
メインコンピュータから珍しくエラーメッセージが表示される。
黒島たちはそれを無視して、作業を続ける。
そして準備が整った。
「狙撃銃、発射!」
狙撃銃からビームが発射され、それはまっすぐ蒼の旗艦へと向かった。
その様子を見ていた蒼の旗艦、ジーナ・シェリー。
「二重銃身回転式狙撃銃……。あんな攻撃も、私の防御の前では無駄なのに」
そして砲撃が着弾する。
その瞬間、蒼の旗艦の前方が爆散した。
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