第60話 戦争
2075年になって1週間が経とうとしている1月7日。
学校に行く前に、黒島はニュースを眺めている。内容は流浪の民に関するニュースが多く、ついで政治や経済のニュースが多い。
『国会、レッド・フリートに関する法律を制定』
『日経平均株価、9か月ぶりに3万円台を突破』
『EU共同で物質浮遊技術による艦艇建造を表明』
そんな中で、黒島は気になるニュースを見つける。
『38度線にて小規模な武力衝突か』
『中国・インド両軍、にらみ合い』
『アゼルバイジャンとアルメニア、再び戦争状態に』
レッド・フリートの登場により、これまで抑制されていた活動が活発になっているからだろう。
これまで身をひそめていた各国の思惑が再び動き出したのが、昨今の情勢というわけだ。
この情報は、国連の軍事参謀委員会にも入ってきている。
「昨今、各国の思惑が再起してきているようだ」
「いまだ危機的状況は脱していないというのに」
「国連安保理はどうだ?」
「今は勧告にとどめているが、今後状況がひどくなるようだったら強制措置を取ることも致し方あるまい」
「しかし、ここで紛争や戦争を起こされても、人類にとってはただ衰退の一途をたどるだけなのだがな」
「だが、それが国家だ。常に自国の利益を優先するものだからな」
「その考えは古いのを承知か?」
「……冗談だ。しかしこの状況、一体どうする?」
「どうしようもないだろう。総会でも安保理でも勧告を行って国家間の緊張をほぐすように言ってもらえないだろうか」
「その方がよいな」
そんな話をしている時に、部屋に入る者がいる。
その者が、一人の男性に耳打ちすると、その男性は頭を抱えるしぐさをした。
「諸君、残念なお知らせだ」
「……なんとなく話は分かったから、説明を頼む」
「朝鮮戦争が再開した」
韓国の首都、ソウル。
そのソウルが、北朝鮮のミサイル部隊によって砲撃され、火の海になっていた。
人々は倒壊するビル群の中を逃げまどっている。
このニュースは一斉に報じられ、世界中を駆け巡った。
100年以上沈黙を保ったままの戦争が再開した、と。
そのニュースは、休み時間中の黒島の元にも届けられた。
「おい、黒島。戦争が始まったみたいだぞ」
「は?どこで?」
「韓国でだよ。歴史でやっただろ」
「朝鮮戦争が再開したってことか?」
「さっきスマホでニュースを見たからな」
「学校でスマホ使うなよ」
しかし黒島の心に、何か残るようなものを感じた。
次の休み時間の時に、黒島は気になってスマホを起動する。
「あ、祐樹さん。面倒なことになってますよ」
「知ってます。朝鮮戦争が再開したんですよね」
「実は国連安保理が国連軍によって、これを鎮圧すると言っているんですよ」
「それが何か問題あります?」
「もしかすると、レッド・フリートが駆り出される可能性があるってことです」
「あぁー、その可能性があるのか」
「そういうわけで覚悟しておいたほうがいいですよ」
「分かりましたよ」
その後、夕方のニュースではどこも朝鮮戦争の様子を報じていた。
そんな中、黒島のスマホに電話が入る。
「はい」
『八十野だ』
「どうしたんです?」
『いや、今日の朝鮮戦争再開のニュースを見たかね?』
「えぇ」
『実は流浪の民が来たあたりで朝鮮戦争再開の兆しはあったんだ。それが今爆発した感じだな』
「国連は何か言ってますか?」
『まだ私の所には来てないな。もしかしたら外務省には来ているかもな』
「そうですか」
その時、黒島はあるものを思い出す。
「そうだ、羽黒国連大使の連絡先をもらってたんだった」
『なるほど、それはそっちに聞いたほうが早いな』
「早速聞いてみます。話は以上ですか?」
『あぁ。ニュースを見ているか聞きたかっただけだからな』
そういって電話は切れる。
続いて黒島は羽黒国連大使に連絡を取る。
「もしもし」
『君は誰だね?』
「レッド・フリートの黒島です」
『あぁ、君は黒島というのか。あの時自己紹介してなかったからね』
「えぇ」
『それで、私になんの用事かい?』
「朝鮮戦争再開において、何か動きのようなものはありますか?」
『それに関してなんだがな、国連軍を本気で動かす予定のようだ』
「なるほど……。それが聞けただけでありがたいです」
『そうか。黒島、といったか』
「はい」
『気を付けたまえ。世の中は存外悪い人間がいたりするものだ』
「肝に銘じておきます」
そういって電話は切れる。
黒島は考える。仮に国連軍が戦争に介入したとして、自分はどのような選択を行えばよいのだろうかと。
それはその時によるのだろうが、着実にその時はやってくるのだろう。
そしてその連絡はやってくる。
英文のメールだ。
今はレイズは国連総会に出ているため。黒島本人が自力で英文を翻訳する。
『こちらは国連軍である。今回、国連軍は朝鮮戦争に介入することを決定した。ついてはレッド・フリートもこれに参加してほしい。いかがか?』
「いかがかって言われてもなぁ……」
そういっても、黒島はどうしようか悩んでいた。
しかし、ここで介入しなければ、今後最悪の結果になることも目に見えているだろう。
黒島は、介入を決意した。
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