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異次元無双の紅き艦  作者: 紫 和春


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第59話 反撃の狼煙

 時は流れ、年末。黒島の家では、久しぶりに父親が帰ってきていた。

 そして、2074年にあった出来事を語り合う。

 話題は特に、レイズとの邂逅と黒島の国会招致であった。

 その後は黒島の家に後藤がやってきて、一緒に年越しをしたり、元日には近所の神社に参拝しにいったりと、比較的充実した年末年始を過ごしていた。

 そして三が日が過ぎ、1月4日。

 この日は、学校の登校日である。冬休みが終わり、いよいよ3学期に突入する時期だ。

 その朝、黒島のスマホにメールが入る。

 差出人は八十野少将だ。


『1月6日にJAXAや無人宇宙戦闘艦の設計開発を行っている関係者が来る予定だ。申し訳ないが、君たちがこちらの予定に合わせるように動いてもらえないだろうか。この日以外でも問題はないのだが、なるべくなら話し合う機会を多く設けたい。検討頼む』


 このように入っていた。

 それを登校途中の後藤に話す。


「6日っていうと、日曜日だよね?だったら特に問題はないかな」

「俺も問題はないから、この日にうかがうように連絡しておくよ」

「うん。分かった」


 そうして返事をする。その後、10時に霞ヶ浦基地に集合ということになった。

 また時が流れ、当日。

 レイズのワープによって、黒島たちは霞ヶ浦基地へとやってきていた。

 身分証を提示して、基地に入る。そして基地本部庁舎へと足を運んだ。


「やぁ、待っていたよ」


 八十野少将直々に出迎えてくれていた。

 そしてそのまま基地本部庁舎の会議室へと案内される。そこには、部屋いっぱいに人が入っていた。


「皆さん、お待たせしました。こちらが、レッド・フリートの黒島君と後藤君です」


 そう八十野少将が紹介すると、パラパラと拍手がなる。


「到着して早々だが、早速会議を始めよう」


 そういって、八十野少将が前に立つ。


「えー。今回はレッド・フリートとJAXA、そして民間企業との提携で、量産可能な宇宙戦闘艦の建造を行うべく、こうして皆さんに集まっていただいた次第です。今回皆さんに行っていただくのは、ソフトウェアの開発ということになります。詳しくはレッド・フリートの担当者から話を聞きましょう」


 そういって、黒島に目くばせをする。

 黒島は用意してあったパソコンにスマホを接続した。そのパソコンにはトランスが映る。

 そして、それはプロジェクターを通して、壁に投影された。


「どうも、不本意ながら技術担当となったトランスだ。今回、諸君らには流浪の民の技術を用いて、無人艦の建造を手伝ってもらいたい。詳しく説明する。今回の目標は、艦を自立制御させることだ。これは攻撃、防御、機動を複合的に行うことを意味している。こちらで拝見した限りでは、海上での無人艦の運用は成功しているようだ。しかし、これはあくまで地上に艦橋やCICを構築して運用しているに過ぎず、結果として完全な無人化を行っているわけではない。しかし心配することはない。今回は人格のコピーを用意できる。これを用いて、人格一人につき一隻を担当させる。これをベースに無人艦のソフトウェアを作ってほしい」


 それを聞いたエンジニアたちは顔を見合わせる。おそらく、実現可能かどうか考えているのだろう。

 しかし疑問はそれだけに過ぎない。一人のエンジニアが質問する。


「あの、その人格っていうのは、どういうことですか?」

「簡単だ。我々流浪の民の艦艇は一隻一隻に一人の人格が入っている。それが何億とあるものだから、平均的な人格データというものがある。個人を極力まで排除した完全な無個人データだ。それをコピーして艦の制御に使うということだ」

「それって、倫理的にはどうなんですか?」

「個人の平均から導き出されたデータを使用しているから倫理的には問題ないはずである。諸君らにはこのデータを活用してもらいたいだけだ」

「そのようなデータがあるなら、我々に頼まなくても、あなた方で何とかなったのでは?」

「これは、そちらでいうビッグデータのかけらに過ぎない。それを活用するための手段がないから、その方法を考えてほしいというわけだ」


 会議室にいる関係者はザワザワしだす。

 もちろんこれは技術的な問題だけでなく、倫理的な問題も絡んでくるからだ。


「何を騒いでいるのかは知らないが、この無個人データはいわば赤子のようなものだ。これまでの諸君らの技術同様、ここに必要なデータを教え込んでやればいい」


 しかし誰も首を縦に振ろうとはしない。ここで首を振ったものに責任が押し付けられ、面倒なことになりかねないからだ。

 その状況を重く見た八十野少将が、腰をあげる。


「諸君、ここはつらい決断を強いられるだろうが、どうか賛同してほしい。我々には戦力も時間も限られているのだ。彼らの言う白の艦艇は数にして10億あるとも言われているらしい。もしこの数を相手にするのであれば、戦力の拡充は必須とも言える。そのために、我々は手を取り合い、各種問題を解決して進まなければいけないだろう。もしもの時の責任は私が取る。どうか、事を進めてほしい」


 そういって八十野少将は頭を下げる。

 それを見た関係者は、仕方がないという顔をする。


「まずはそのデータを見せてもらってからにしよう」

「確かアランテック株式会社に人間と同じ動きをさせる研究をしていたはずだ」

「JAXAと厚生労働省の倫理委員会と各種すり合わせをしよう」

「特に問題はないはずだがな」


 そういって、動きは賛同のほうへと傾いていった。


「ありがとう、諸君。ここから人類の反撃は始まるのだ」


 そう八十野少将は語る。

 そしてトランスに向き合う。


「これからこちらに来て作業することも多くなるだろう。このパソコンを使うといい」

「申し出に感謝する」


 こうして、人類は新たな一歩を踏み出すことになる。

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