第56話 フエゴ島の戦い 前編
その日、諸々の事務仕事を終えた黒島たちは、夕方の電車に乗り、茨城県に帰ってきたのは完全に日が暮れたあとだった。
「ただいまー」
「お帰り、中継見てたよ」
「げっ、見てたのか」
「なんだかガッチガチに緊張してて笑っちゃったわ」
「そこはフォローするなりなんなりするところじゃないの?」
そういって、黒島は自分の部屋に入っていく。
それからのニュースでは、現役高校生と元敵である知的生命体が国会に参考人として招致されたというのが一面で報道されていた。
もちろん、黒島の名前などは報道されてしまっている。これでもう後戻りはできないというわけだ。
それから週末を過ぎて、12月24日。
クリスマスイブであるにもかかわらず、黒島の学校はまだ冬休みにはならない。
そんな中、黒島が教室に入ると、それはもう注目の的であった。
「よっ、国会議員!」
「その呼び方はやめてくれよ……」
「わりぃな。でも国会デビューしたのは間違いないだろ?」
「そうだけどさ」
「見ろよ、他のクラスからも黒島がどんな奴が見たがってるぜ」
「国会で十分に見せただろうに……」
「これでお前も有名人だな」
「こんな感じで有名になりたくなかったよ」
「あとはレイズ・ローフォンかな?」
「レイズさんのほうがよほど有名人になれる要素が強いよ」
「それもそうか」
その後、授業が終わるたびに、黒島の教室の前には他のクラスの人が物珍しそうに黒島の姿を見ていた。
その様子を見ていたであろう学長が、その事態を憂いて昼休みの時に放送を入れた。
「えー、学長です。先週の金曜日に国会の中継を見ていた人は知っているかもしれませんが、わが校の生徒が参考人招致を受け、国会で答弁を行いました。これに関して名前を伏せますが、彼らはわが校の教育理念の一端を垣間見せてくれたと考えています。彼は珍しい人ではありません。この学校を代表してわが校の魂を全国に示してくれたと思っています。皆さんもこのような生徒になれるよう、努力をしてください」
学長のよくわからない説教を聞き流した黒島。
結局の所、この日は見世物のような感じになってしまう。
その頃、国連軍宇宙艦隊軌道衛星部隊は、あるものを捕捉していた。
「その情報は本当か?」
「間違いありません。白の艦艇がわんさか湧いて出てきています」
「今概算でどの程度だ?」
「およそ5000。まだ増えます」
「ふぅむ。これは我々の手には負えそうにはないな……」
「では?」
「レッド・フリートの協力を要請しよう」
その宣告通り、レイズの元に、連絡が入る。
「さきほど、国連軍宇宙艦隊から、協力の要請が入りました」
「協力の内容は?」
「レッド・フリートによる、白の艦艇群の撃破ですね」
「数は?」
「現在の所、6000を超えているそうです」
「6000か……。前の時より多くなってますね」
「今回はさすがに紅の旗艦単艦ではきついですね。紅の艦艇を出しましょう」
「俺からも艦艇を出すか?」
そういったのはロビンである。
「その申し出はありがたいのですが、歩調は合わせられるんですか?」
「その辺は問題ないさ。俺の艦艇は囮として使ってもらっても構わない」
「分かりました。そのようにします」
「それで、作戦の日時とかの指定はあるんですか?」
「特に指定はされていないようです。ただ早急にこれを撃退してほしいとあります」
「ではすぐにでも行きますか。ちょうど夜ですし、タイミングがいい」
そういって、黒島と後藤は紅の旗艦にワープする。
「それじゃあ行くか」
そういって紅の旗艦を始動させる。
場所は南米大陸最南端に位置するフエゴ島。そのはるか上空に白の旗艦が集結していた。
数はすでに9000を超える。
そんな中に、紅の旗艦は出現した。
「うわ、これは壮観だなぁ……」
「感心している場合じゃないですよ。これは大変な数ですからね?」
「まぁいいじゃないですか。それじゃ、紅の艦艇を出してください」
「はいはい」
そういって、レイズは目をつむって集中する。
すると、紅の旗艦の後方から、何かが大量にワープしてくる。
それはすべて紅色の外装をしていた。
「すっげぇ……」
「ざっと白の艦艇と同じだけの数を呼び出しました。これで劣勢になることはないでしょう」
「俺も呼び出しておくか」
そういって、ロビンも翠の艦艇を呼び出す。こっちは数は断然少ないが、機動力には自信がある。
「敵の数、10000に達したよ!」
「さぁ、行きましょうか」
白の艦艇群は整然と並んでいる。そこに、黒島はミサイルで攻撃をした。
白の艦艇群はそれをよけるように、散り散りになる。
そこを狙いすましたかのように、翠の艦艇群が突撃した。
「おっしゃあ!行くぜー!」
有機的な動きの元、翠の艦艇は白の艦艇を墜としていく。
それに合わせ、白の艦艇群は翠の艦艇群を追跡する。
「各艦艇、白の艦艇に照準」
レイズが紅の艦艇に指示を飛ばす。
その指示通り、紅の艦艇は各々が白の艦艇に照準を定めた。
「斉射!」
その合図と共に、紅の艦艇群は一斉に艦首砲を発射する。
そしてそのビームによって、白の艦艇群は半数以上が墜ちた。
「よし、このまま全部墜としてやる!」
そういきこんで、黒島は紅の旗艦を前進させた。
本日も読んでいただきありがとうございます。
もしよろしければ、下の評価ボタンを押していってください。また、ブックマークや感想も随時受け付けています。
次回もまた読んでいってください。
それでは皆さん、よいお年を。




