第54話 国会
電話があった直後に、山田はすぐさま関係者に連絡を取り、調整に入る。
その結果が手紙として来たのはわずか数日後の12月17日であった。
そこには、12月21日に国会の閉会中審査の予算委員会にて参考人招致をする旨が書かれていた。
「とりあえず、学長に報告しないとだな」
翌日の12月18日、黒島たちは再び学長室を訪れた。そして事の経緯を話す。
「なるほど。ひとまず状況は分かった。12月21日というと、金曜日だから公欠扱いにしよう」
こうして、黒島と後藤は国会に行くことが許された。
「国会までどうやって行こう?」
「無難に電車でいいんじゃない?」
「行き方は……ネットで調べればすぐに出るか」
こうして当日。
予算委員会での招致は午後からである。
黒島たちは午後の招致に間に合うように、電車に乗った。
特急に乗る高校生二人の姿は、まるで修学旅行にでも来ているかのような姿を見受けられる。
そして11時30分ごろには、二人の姿は国会議事堂前駅にあった。
「ここが国会かぁ」
「小学生の時に一度だけ来た事あるけど、やっぱりおっきいね」
そんなことを話しつつ、黒島たちは指定された場所に移動する。
そこは、国会議事堂裏手に存在する、衆議院西通用門だ。
そこで待っていたのは、見たことある姿であった。
「よう、お二人さん」
「山田さん」
「こんにちは」
「出会って早々で悪いが、俺の仕事はここまでだ。あとはこいつが引き受ける」
そういって、ある人物を紹介される。
「私は国会議員の東だ。よろしく」
「よろしくお願いします」
「さて、少し時間がある。二人とも昼はまだだっただろう?」
「はい」
「では昼食でも食べにいくか。東京に来た記念に、それらしいものでも食べるか?」
「いえ、そんなお気遣いなく」
「では国会内にある牛丼屋でも食べに行くか」
そういって、衆議院西通用門を入っていく。黒島たちも一緒になってついていくが、警備員に変な視線を送られた。
そして国会内にある牛丼屋で昼食を摂り、少ししたあと、本題に入る。
「さて、今回は衆議院の予算委員会で君たちのことについて聞かれる。正直、質問主意書も台本もない答弁だ。何が起きるか誰にも分からない。君たちは君たちなりに正直に答弁を行ってもらいたい」
「はい。もちろんです」
「どこの誰かさんは虚偽の回答しても云々って言ってなかった?」
「知らないなぁ?」
「ははは。別に構わないさ。とにかく、場を混乱させるのは得策ではない。十分に注意してくれ」
「分かりました」
「さて……。そろそろ時間だ。移動しようか」
「はい」
そういって牛丼屋を出る。
そしてそのまま国会内部へと入っていく。
国会の中をあちらこちらと移動していると、なんとなく二人に奇妙なものを見る目で見られた。それは、ただの高校生が議員に案内されいている図が、奇妙に見えたのだろう。
そして、ある部屋の前に止まる。
「ここが今日参考人招致された予算委員会の委員室だ。時間はまだあるから、少しここで待とうか」
「はい」
そういって、委員室の前で、しばらく待つことにした。
その間にも、いろんな人間が委員室やその前を行き来する。もちろん、見たことある議員も何人か委員室に入っていく。
「そろそろ出番だ。準備しておこうか」
黒島たちに緊張が走る。
委員室の扉が開く。
「さぁ、行こう」
そういって東に誘われるように委員室に入る。
中では緊迫した空気が漂っていた。
東を先頭に、黒島たちは委員室を進む。
そして、部屋の壁に並べられている椅子のうちの二つに案内され、そこに座るように指示される。
その隣にはモニターとパソコンが用意され、レイズが居座ることができるようになっていた。
それからもらった自分が参考人であることを示すネームプレートのようなものを身に着ける。
それが終わったあたりで委員長が話を始める。
「これより会議を始めます。本日はレッド・フリートと政府の関係、および今後の対応の件について、参考人として現在レッド・フリートの人類代表として活躍している黒島祐樹君。その補助であると同時に共にレッド・フリートで活躍している後藤梓君。現在レッド・フリートの中心であり、紅の旗艦として活躍しているレイズ・ローフォン君。以上三名の方にお越しいただきました。三名には、現在前線に出ている方々として忌憚のない意見を述べていただきたいと思います」
そういって、委員長は立ち上がり、黒島たちに礼をした。黒島たちも礼を返す。
「意見には時間が限られていますので、質問や回答は簡潔にしていただきますと幸いです。また、今回の参考人には、事前に質問の内容は知らされておらず、また参考人が現役の高校生である事も加味しまして、質問の内容は簡潔にしていただきたいと存じます」
これから参考人として質問される。
その事実が、黒島の体を強く強張らされた。
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