第47話 ラスベガスの戦い
ラスベガスは混乱に見舞われていた。
それは当然のごとく、白の艦艇群がラスベガスに降下してきたからに他ならない。
ラスベガスに降下してきた白の艦艇群は、容赦なくラスベガスの街を蹂躙していく。
主要な建物を確実に破壊していき、人々を混沌の渦に巻き込む。
そんな中、国連軍宇宙艦隊を差し置いて、別の基地にいるアメリカ空軍の戦闘機が出撃してきた。
さらに、各地に整備されている中距離弾道ミサイルもラスベガスに向かって飛翔してきている。
アメリカ空軍のF-66戦闘機が接近し、空対空ミサイルを発射した。
しかし、その攻撃は艦艇にあたることなく、空中で突如爆破する。
『畜生、奴ら報告にあったバリアのようなものを展開してやがる』
『隊長機から各機、攻撃を機銃に切り替え。少しでも奴らの気を引いて、民間人の避難を援助するんだ』
『了解』
機体に装備された機銃が掃射される。
こちらは幾分か攻撃が通るものの、それでも外郭によって弾丸は防がれる。
『こちら隊長機、まもなく中距離弾道ミサイルが到着する。攻撃はここまで。各機影響がいまで散開せよ』
『くそ。まるでおもちゃの兵器を扱っているみたいだぜ』
『そんなこといってやるな。今回のはドでかいものをくれてやるんだからな』
『ドでかいものって、まさかミサイルに核弾頭を?』
『そのまさかだ。お偉いさんは世界の危機ってものを理解しているようだ』
『なるほどな』
『おぉ、怖い怖い』
『それなら早く家に帰らねぇとな』
そういって、複数の戦闘機はその場から離れていく。
しかし、そうは問屋が卸さない。
一瞬白の艦艇の外郭部分が発光したと思うと、うち一機が爆発を起こした。
『4番機撃墜された!』
『なんてこった、奴ら対空兵装も持っていたのか』
『何でもいい。早くこの場から離脱するんだ』
そういった隊長機も対空攻撃によって、一瞬のうちに爆発した。
どんな遠くでも、確実に敵を葬り去る姿には、一種の怨念のようなものを感じるだろう。
そして、ラスベガスの上空にいたすべてのアメリカ空軍機が撃墜された。
しかし、そこに核弾頭を乗せた中距離弾道ミサイルが飛んでくる。
それでも、白の艦艇は冷静そのものに見えた。
あと数十秒もすれば、ラスベガスに着弾するだろうといった時だった。
突如白の艦艇が巨大な渦を巻くように移動を開始する。
そして、白の艦艇群から一斉に主砲が発射された。
その主砲は弾道ミサイルに近づくにつれて収束し、やがては一本のビームになる。
その極太のビームは、まっすぐ弾道ミサイルへと吸い込まれるように直進した。
そして着弾する。
その瞬間、空中で巨大な大爆発が発生する。
核弾頭が作動し、誘爆したのだろう。
その衝撃はすさまじく、ラスベガスの街まで届くくらいだ。
一方で白の艦艇群はそんなことお構いなしに、編隊を解いて再びラスベガスの街を蹂躙していた。
そんな中、ラスベガスの上空から、あるものがやってくる。
紅の旗艦だ。
「弾道ミサイルの爆発を確認。弾頭は核でしょうね」
「自分の領土なのに核爆弾ぶっ放したのか」
「アメリカってそういう所ありますからねぇ」
「とにかく、今は白の艦艇群だ」
「敵の数、およそ4000!」
「それじゃあ行きますか」
そういって、レイズは旗艦の制限の一部を解除する。
攻撃力や機動力が上がったところで、黒島は全力で攻撃を始めた。
まずは定石通り、全速力で突っ込みながらの全力射撃。
これで全体の1割が墜ちる。
そして横にスライドしていくように軌道を変更し、ミサイルで攻撃。
これでさらに何百隻もの白の艦艇が墜ちる。
そのまま地面すれすれに移動しながら白の艦艇を攻撃していく。
しかし、紅の旗艦の速度が速かったのか、慣性が強く働く。
このままでは、体に負荷がかかり、場合に寄っては気絶する可能性すら出てくる。
そこで黒島は思い切って、速度に任せて全力でその場を離れることにした。
それを白の艦艇群は後ろから追いかける。
しかし、スピードの差は歴然としており、あっという間に紅の旗艦は白の艦艇群を突き放していく。
ある程度突き放したところで、黒島は艦首を180度反転させる。そのまま後退しながら、白の艦艇群に主砲を当てていく。ついでにミサイルも置いていった。
これによって最初にいた数の半分程度にまで減っていた。
黒島はそのまま反転して再び上昇する。いくら宇宙戦闘艦といっても、高度という概念がある場所では低いほうが不利になるからだ。
そのまま突き放すように、高度5000mの所まで上昇する。
しかし、この高さまで来ると、白の艦艇群は紅の旗艦のことを追いかけることを諦め、ラスベガスの街を蹂躙していた。
「くそっ。こうもうまく動いてくれないと、やりづらいな」
「落ち着いてください。焦ったら負けですよ」
そういって、黒島は再び反転し、地上に向かって降りる。
そして同じように、白の艦艇に向かって攻撃を加えた。
艦艇数が残り1割になったその時だった。
『こちら国連軍宇宙艦隊旗艦エンタープライズだ。援護に来た』
「やっとお出ましですか。ずいぶんと遅かったみたいですね」
「しかし、今やってきて何かやれることでもあるんですか?」
「特にないですね」
レイズはきっぱりと断言する。
「せいぜい成果の横取りとか、囮くらいでしょう」
「これまた辛辣ですねぇ」
「事実ですから」
そう話していると、後藤が怪訝そうに話してくる。
「あのー、談笑している所申し訳ないんだけど……」
「どうかした?」
「レーダーに何か映っているんだけど……」
画面が切り替わり、立体映像を流す。
すると、画面の端の方から何かが塊になってやって来ているのが確認できる。
IFFは不明。しかし、そこから送られてくる信号を解析したレイズの表情が変わった。
「翠の艦艇……!」
レイズの顔に、少し焦りの表情が見えた。
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