第42話 学校へ報告
この日、黒島はなんとなく夜更かしをしていた。
それは、やることがあるからではなく、レイズのことが少し心配になったからである。
しかし、ベッドの上で本を読んでいるうちに寝てしまい、翌朝までぐっすり眠っていた。
黒島が起きたタイミングで、スマホにレイズが戻ってくる。
「あ、レイズさん。おはようございます」
「おはようございます、祐樹さん」
「何か進展でもありました?」
「えぇ、レッド・フリートの所属は日本になることになりました」
「そうですか。これで国連軍とか言われたらどうしようかと思いましたよ」
「そもそもレッド・フリートはオブザーバーですから、強い権限は持ってませんからね」
「さいですか」
「それにオブザーバーとして承認されたからには、これからほぼ毎日国連に行かないといけませんからね」
「そんな大変なんですか」
「まぁ、私としては寝なくても問題ないんですがね」
「それはうらやましい」
そんなことを言いつつ、黒島は自宅で授業を受ける準備を進めていた。
その日の昼。
黒島は後藤に、今回の結果を報告する。
「レッド・フリートの所属国家が日本になったらしいよ」
「そうなんだ。それはよかった。外国に所属って言われたらどうしようかと思ったよ」
「ほんとそれな」
なんて他愛もない話をしている時、黒島のスマホに電話がかかってくる。
「あ、ごめん。電話だ」
後藤との会話をやめ、電話に出る。
「もしもし」
『私だ、山田だ』
「山田さん、どうも」
『レッド・フリートの処遇に関しては、もう話は聞いているか?』
「えぇ、所属が日本になったって話は聞きました」
『よろしい。では、こちらも手続きを始める』
「手続きって、なんのです?」
『いや、こちらの話だ。関係省庁との手続きを始める感じだな』
「そうですか」
『今のところ、黒島君にしてもらうことはない。続報を待っていてほしい』
「分かりました」
『まぁ、やっておいてほしいことなら、君たちの学校の先生に君たちが置かれている状況を説明しておいてほしい』
「……はい」
『できるね?』
「もちろんです」
『ではよろしく頼む』
そういって電話は切れた。
「……だそうですよ、後藤さん」
「先生に事情を説明しないといけないのかぁ……。ちょっと緊張しちゃうな」
「とりあえず、明日になったら先生に言っとこうか」
「そうだね」
この日は授業を受けて終わる。
そして夜になれば、レイズは国連総会に出席するため、黒島のスマホから消えるのだった。
そして翌日。
黒島たちは、先生にどう伝えるか登校中に考えていた。
「普通に担任の先生に言えばいいんじゃない?」
「それはそうかもしれないけど、俺たちクラス別だしなぁ」
「なら共通の先生に言えばいいんじゃない?」
「共通の先生というと、数学の山縣先生か」
「じゃあ山縣先生に言うってことで」
「昼休みでいいか?」
「うん」
こうして昼に、職員室に向かうことにした。
昼休み。
昼食を取り終えた黒島たちは職員室の前に集合し、一緒に入っていくのだった。
「失礼します。山縣先生はいらっしゃいますか?」
「山縣先生ならあっちだね」
そういって、山縣のいる所を指さす。
二人はそちらの方に行く。
「山縣先生」
「あら、なんでしょう」
「実は話しておきたいことがありまして……」
「そんな、二人でどうしたの?まさか結婚するとかそういう話をしに来たの?」
「そ、そうじゃないです」
「冗談よ。それで、話ってのは?」
「それが、例の学生の件なんですけど」
「例の学生って、国連のやつ?」
「はい」
「分かったわ。とりあえず、学長室にいらっしゃい」
そうして、二人は山縣に連れられて、学長室に向かう。
「先に私が入って要件を伝えるから、二人はあとで入ってきてね」
「はい」
そういって山縣が中に入っていく。
しばらく外で二人が待っていると、中から入るように指示する声がする。
黒島たちが顔を合わせると、一緒にうなずいて扉に手をかけた。
「失礼します」
中に入ると、そこには学長と副学長、そして山縣がいた。
「二人とも、例の学生について話に来たんだね?」
「はい」
「取り合えず、そこにかけなさい」
そういってソファに座るように指示される。
その指示通りに座ると、学長が口を開く。
「さて、話を聞かせてもらおう」
「はい。国連に出席した学生は自分たちです」
「君たちが例の学生だったのか」
「はい」
「そうか。よく話してくれたね」
「それで……」
黒島はレッド・フリートのことと、それが置かれている現状について簡単に話した。
「なるほど。宇宙人と結託してレッド・フリートという組織を作り、それが国連で準国家として承認、その拠点を日本に構えるのか……」
「ざっくりといえばそうなります」
ここで学長は少し考え込む。
「しかしこうなってしまった以上、国連や政府の言うことは聞かないといけないわけだな」
「そうなりますよね」
「その場合における特例などを考えておかないといけないかもしれないな」
「学長……」
「それに、我々は生徒を守る義務もある。そこを忘れてはいけない」
この発言は、生徒を守ってくれるという学校からの意思表示に他ならない。
「学生の本分は勉強だが、それ以上に世界を守るという大義を得てしまったのなら、それを阻むわけにはいかないだろう」
「学長先生……ありがとうございます」
「なに、これも一種の多様性というやつだよ」
そういって、今後の対応を協議してもらえることになった。
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