第31話 レイキャビクの戦い
紅の旗艦のコックピットにワープした黒島と後藤。
早速目的地であるレイキャビクの上空へワープする。
「おでましですね」
そういってレイズの見る先には、多数の白の艦艇がひしめき合っていた。
「レイズさん、数は?」
「1024隻、前回と同じです」
「それならやることは一緒ですね」
「今回は最初から飛ばしていきますよ!」
「機関、出力130%突破!」
「よっしゃ、いきます!」
そういって黒島は白の艦艇群を真正面から迎え撃つ。
白の艦艇群は紅の旗艦のことに気が付いたのか、一斉にそちらへと向かっていく。
「主砲、全門斉射!」
艦首ビーム砲や全周囲ビーム砲を使い、前方に向けて火力を集中させる。
実際この方法が、紅の旗艦の攻撃力を最も高める方法なのだ。
一斉に向かってきていたため、主砲に巻き込まれる艦艇は多い。そのまま次々と墜ちていく。
しかし、それを超えた白の艦艇がいることも確かであり、それらの艦艇は自分が撃墜するという意気込みを感じられるほどの勢いで突っ込んでくる。
そんな白の艦艇群には、次の攻撃が待っている。
「ミサイル発射!」
艦後方に装備されているミサイルランチャーから矢継ぎ早にミサイルが発射される。
斉射状態で100を超えるミサイルが発射され、そのまま白の艦艇群を捉える。
そして、一斉に着弾した。
ミサイルのほとんどが敵艦に着弾し、白の艦艇群を墜としていく。
しかし、それでもなお紅の旗艦に突撃する白の艦艇は多い。
「回避!」
その言葉通り、黒島は回避を行う。普通の航空機ならば絶対に起こりえないであろう軌道を描きながら、回避を行っていく。
だが、その動きを察知した白の艦艇も多く、軌道修正をしながらもいまだ紅の旗艦に突撃を敢行する。
それを阻止するのが、黒島の放ったミサイルだ。
放たれたミサイルは、後藤の誘導によって次から次へと確実に白の艦艇を沈めていく。
黒島は回避した軌道を生かしつつ、白の艦艇群の横をすり抜けていく。
そしてそのまま、地表に向かって加速を続ける。そのスピードは、確実に音速を超えていた。
「後藤!踏ん張れよ!」
「うん!」
そういうと、黒島は思いっきり艦首を上げる。
慣性の法則によって、二人の体はシートに押し付けられるような感覚を味わう。イナーシャルキャンセラーが働いているものの、それでもキツいくらいだ。
そのまま、地表すれすれを這うような軌道を描く。
そしてそのまま白の艦艇群の後ろについた。
「主砲発射!」
黒島の合図とともに、主砲からビームが発射される。
そのビームは、しばしの間飛翔すると、紅の旗艦に軌道変更している白の艦艇群を撃ち抜く。
そのままミサイルも一緒に発射し、掃討戦へと移行する。
今回も前回のように群れずに単体で攻撃を加えてくる艦艇がおり、再び後藤の攻撃の餌になっていた。
そんな白の艦艇を掃討しているときだった。
黒島は、レイズの様子がおかしいことに気が付く。
「どうしたんですか?レイズさん」
「いえ、なんか嫌な予感がすると言いますか……」
「嫌な予感?」
「そう、杞憂ならいいんですけど……」
そこまで言った所で、レイズは上を見る。
「上!その手があった!」
「な、なんです?」
その時、後藤が叫ぶ!
「上空に何かがいる!」
黒島は慌てて上に視線を向ける。
するとそこには、巨大な塊が鎮座していた。
「ヨーシャーク級地表制圧艦……!」
レイズが恨めしそうに言う。
そしてそこから巨大な何かが投下される。
「敵、巨大な何かを投下!」
「質量爆弾!しかも以前より巨大です!」
「被害予想は!?」
「……レイキャビクが蒸発するレベルです……!」
「とにかくあれを何とかしないと!」
黒島は艦を縦にして、まっすぐ質量爆弾へと向かう。
「主砲斉射!」
黒島の合図とともに、火力が前方に集中する。
しかしそれでもなお、質量爆弾は止まらない。
「こうなれば、あれを使うしかないですね……!」
「あれって?」
「二重銃身回転式狙撃銃ですよ、これがあればなんとかなるはずです」
「なら使いましょう!」
「しかし、これを大気圏内で使うのには少々抵抗がありまして……」
「なんでですか?」
「詳しい説明は省きますが、気象条件や重力の関係でビームが直進しないんですよ。もしかすると変な方向に飛んでいく可能性だってありえます」
「でも使わないと大変なことになりますよ!」
「……分かりました!ここは艦のリソースも使ってとにかく演算します!射撃前後のことはお二人に任せましょう!」
「はい!」
そういって、レイズは目を閉じる。
その瞬間、艦が揺れる。今までレイズが補正していた航行方法から、完全に黒島の手に操縦が任されているのだ。
黒島はなるべく艦を安定させるようにする。
一方レイズは、狙撃銃の起動を終わらせ、質量爆弾に狙いを定める。
各種条件を加味しながら、照準を合わせていく。
そして、一瞬だけ照準が合った。
その瞬間、レイズは撃鉄を落とす。
一筋の閃光が空高く伸びていく。
そして、ビームはまっすぐに、質量爆弾へと伸びていった。
着弾した瞬間、ほんの少しだけビームが弾かれたような軌跡を取ったが、それも束の間。ビームは表面を掘削するように、内部へと侵入を許した。
そして爆ぜる。
その大規模な爆発は、かつてソ連が実験を行ったツァーリ・ボンバを彷彿とさせた。
爆発した瞬間の衝撃波は、地球を何周もすることになる。
それと同時に、狙撃銃のビームは、ヨーシャーク級地表制圧艦まで届き、その船体を貫く。この攻撃によって、この艦は爆発し、完全に沈黙した。
「目標撃破……」
「周囲に敵影なし。白の艦艇群は掃討されたよ」
「祐樹さん、お疲れ様でした」
そういっているところに、何者かから通信が入る。
『国籍不明艦、聞こえているなら返事が欲しい』
「この通信は?」
「おそらく国連軍でしょうね。今頃出てきましたか」
『こちらは国連軍宇宙艦隊旗艦のエンタープライズである。通信が聞こえているなら返事をしてほしい』
「で、どうします?」
「俺たち国連本部に呼ばれてる身ですし、いいんじゃないですか?」
「分かりました。では私が代表で通信しますね」
そういってレイズは一つ、咳をする。
「こちら、紅の旗艦レイズ・ローフォン。エンタープライズ、ご用件は何でしょう」
『こちらエンタープライズ、率直に問う。貴艦は敵か?味方か?』
「これは愚問ですね。その答えは国連本部で報告しましょう」
『国連本部だと?なら貴艦は……』
「時間です。またどこかでお会いしましょう」
そういって、レイズは通信を切る。
「さ、帰りましょう」
「いいんですか?」
「いいんです。深い話は来週するわけですし」
「それもそうですね」
そういって、黒島は元の亜空間へと戻っていく。
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