第21話 予告
黒島が自宅で授業を受け終えたときだった。
「祐樹さん、祐樹さん」
「なんですか、レイズさん」
「なんかツイッチューブのDMに変なの来てるんですけど」
「変なの?」
そういって、黒島はツイッチューブのDMを覗く。
するとそこには、英語で「UNIC_Tokyo」と書かれたアカウントからであった。
「UNICって、なんです?」
「United Nations Information Center、国際連合広報センターの略ですね」
「……え、本物?」
黒島は、そのアカウントを何度も確認する。
いくら確認しても、アカウントの横には公式を示すマークが存在していた。
「マジ?公式じゃん」
「本物で間違いないようですね」
「本物が一体なんの用事なんですかね……」
黒島は内容を読んでみる。
幸いにして、文章は日本語であった。
『初めまして、レッド・フリートさん。私はUNIC東京の所長、坂東亜土夢です。今回は一つ確認のためにDMを送らせていただきました。挨拶はここまでにして、早速本題に入らせていただきます。我々の国連安保理に属している軍事参謀委員会は、あなたが世間を賑わせている紅き艦であると確信しています。今回、その証拠となるものを見せていただきたく、このように連絡を取った次第です。今後の返信次第ではありますが、国連本部に召喚させていただくこともあります。早めの返事、よろしくお願いします』
これを読んで黒島はなぜか緊張しだした。
「これ、本物じゃん……。マジモンじゃん……」
「向こうから連絡取ってくるなんて、先見の明がありますね」
「いや、そうかもしれないですけど」
「とにかく、こっちから慣れさせる手間は省けましたし、いいんじゃないですか?」
「確かにそうかもしれないですけどぉ」
「とにかく、トランスさんと相談ですね」
「そうですね」
その夜、後藤とトランスを交えて会議を行った。
「……というわけで、これからどうするか判断を仰ぎたいんですけど」
「ふむ。向こうから接触してきたか。それなら話は早いな」
「それでどうするんです?」
「ここは素直に応じるべきだろう。今なら向こうが受け入れるのも簡単なはずだ」
「それはそうかもしれませんが、どうやって行くんです?俺パスポート持ってないですよ」
「私も」
「それなら問題はない。二人はここに残ってもらってもらうからな」
「それって、レイズさんとトランスさんで行くってことですか?」
「最初のうちはな。そのうち二人もいけるようになればいいんだが」
「んな曖昧な……」
「とにかく、このDMには返信しておこう。どのような返信内容がいいか?」
「現状の内容をそのまま言ってもいいんじゃないですか?」
「いや、それでは面白味がない」
「ここに面白味を足されても困るんですが」
「そうだな……、ここは一つ驚きを加えよう」
「なんかロクでもないこと考えてますね」
そういって、トランスはある考えを示す。
「まぁ内容は至極単純だ。国連本部上空に紅の旗艦を出現させる」
「そんなことでいいんですか?」
「あぁ。あらかじめDMで予告をしておいて、その時間に現れればいい」
「普通だったらびっくりしますよね」
「もちろんだとも。それが狙いだ」
「なんでそんなに面白味を求めるんですか……?」
「人間たるもの、常にユーモアを求めるべきだからな」
そういって、トランスはDMに書き込む文面を作成する。
「こんな感じでいいだろう」
『現地時間10月11日午前9時国連本部』
「こんな単純でいいんですか?」
「これくらい単純でいいんだ。さてレイズ、これでいいか?」
「もう、仕方ないですね」
そういってレイズは了承する。
早速この文面を送った。
その数時間後、軍事参謀委員会では、早速この文面が取り上げられる。
「……一体どういう意味だ?」
「さてな。しかし文章をそのまま読んだら、数日以内に確実に何かが起きるということだろう」
「しかし何が起きるというのかね。まさか侵略が始まるとかあるまいな?」
「まさか。こんな丁寧に送り返しているというのに、侵略なんぞされたらたまったものではないぞ」
「とにかく、数日中は国連本部の警備を強化したほうがいいかもしれんな」
「それには賛成だ。不測の事態が起こってからは問題だからな」
そうして、軍事参謀委員会の面々にとっては、長い数日が経過した。
そしてアメリカ東部標準時10月11日午前8時58分。
「……そろそろだな」
「あぁ、一体何が起きるのやら」
「あれから向こうに問いかけはしたのか?」
「もちろんだ。何も返答しなかったがな」
「……そろそろ時間だ」
そして午前9時。
その瞬間、外が暗くなった。
国連本部、その上空に、紅の旗艦が出現したのだ。
周辺にいた人間はざわざわしだす。
もちろん、その様子は軍事参謀委員会の面々にも伝わっていた。
「これが、紅き艦……」
「なんと巨大な……」
周辺に影を落とすその様子は、まるで神々しさを放っているようだった。
それから10分程度は居座っただろうか。
突如として紅き艦は上空に向かい、そのままワープして消えた。
「……あの艦は我々の味方で合っているかもしれん」
誰かがそうつぶやいた。
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