第136話 決戦 その2
レッド・フリートが攻め込んでくる白の艦艇群を掃討している時だった。
後藤が叫ぶ。
「12時方向から高エネルギー反応!何かが来る!」
次の瞬間、総旗艦から何かが発射されたような光が迸る。
それは、直径十数kmにも及ぶ極太のビーム砲撃だった。
そのビームは1本ではなく、複数のビーム砲が相互的に絡まりあい、あたかも1本のように見せていた。
そのビームは可視光より遅いが、それでも相当な速さでレッド・フリートに近づいていく。
「全艦回避!」
テリーが叫んだ。
直後、すべての艦艇群はビームから避けるために、回避運動をとる。
翠の艦艇群と紅の艦艇群、そして橙の艦艇群は、持ち前の運動性能でビーム範囲から回避する。
しかし、黒の艦艇群は運動性能がそこまで高くないため、回避は難しい。
だが蒼の艦艇群がいた。蒼の艦艇群はバリアの出力を最大にしてビームを迎え撃つ。
そして着弾。
まぶしい閃光があたり一帯を包み込む。
そしてビームが収まると、そこには、ボロボロになった蒼の艦艇群があった。
どうにかしてあのビーム砲撃をしのぎ切ったのだが、撃沈していく蒼の艦艇群がいるのもまた事実である。
「アレを食らったらひとたまりもないな」
「んな冷静でいられますか!どうにかしないと全滅ですよ!」
テリーの落ち着いた分析に、黒島は思わず突っ込んでしまった。
「そんなのは分かり切っているだろう。見てみろ、蒼の艦艇群もギリギリの状態だ」
「何か対策をとらないと!」
「対策をとるには分析が必要だ。ここは一度落ち着いて状況を確認しろ」
テリーはそうアドバイスする。
「見ろ、総旗艦の形状はどんな形だ?」
「……球体をしてます」
「そうだ。球体というのは、どんな方向から見ても一定の表面積を見せる。そして先ほどの砲撃の様子だ」
そういうとテリーは戦闘履歴から、先ほどの総旗艦からの砲撃の映像データを引っ張り出してくる。
「見えている表面積よりも小さい径の砲撃がされた。それはすなわち、攻撃方法がそれしかないということだ」
「それしかないっていうのは?」
「考えられるのは、総旗艦の表面上に主砲を垂直に立てる方法だろう。これで前後左右方向に数度でも傾けられれば、目標に対して数十、下手すれば百もの砲門が向くことができるだろう」
「そんな……脅威ですよ!」
「逆に考えろ。今考えたことが正しいとして、それしかないということは弱点はそこにある。それに見たところ、狙いを定めるには白の艦艇群を利用しているようだ。混戦状態に入っているなら、レッド・フリートはそこに固定されていると考えるのがベストだろう。そこから導き出される答えはなんだ?」
「……固定されないようにするには、動き続ける?」
「そうだ。一方方向にとにかく逃げ続けるんだ」
「そういうことならお安い御用だぜ!」
そういってロビンが応答する。どうやら会話を盗み聞きしていたようだ。
「すべてとは言わないが大部分は俺が引き付けてやるぜ!」
そういって翠の艦艇群は、今まで相手にしていた白の艦艇群を引き連れて、遠くのほうへ移動していく。
一方で、残った紅の艦艇群と橙の艦艇群のやるべきことは一つである。
白の艦艇群を寄せ付けないようにするのだ。しかも、普通の迎撃をしていては再び総旗艦からの砲撃を食らうことになる。迎撃箇所に工夫を凝らさないといけないのだ。
それを踏まえると、紅の旗艦は遠距離から白の艦艇群を攻撃しつつ、ゆっくり移動するという方法をとる。
一方で橙の艦艇群は、橙の旗艦の指示の元、白の艦艇群を流動的に撃破していく。これによって橙の艦艇群は簡単に総旗艦の照準に定まらなくなっていく。
残った蒼の艦艇群と黒の艦艇群は、少数ながら白の艦艇群に攻撃を受けていた。しかし防御特化の蒼の旗艦である。簡単にはやられはしない。
翠の艦艇群は得意の速度で白の艦艇群を翻弄していく。そのまま撃墜させていきながら、橙の艦艇群以上に流動的に動いていく。
そのころ、フリットは混乱していた。
「くそ、白の艦艇群がバラバラになってしまって、狙いが定まらない……!」
フリットは悔しそうに、コントロールパネルを叩く。
「こうなったらなりふり構ってられない……!」
そういって次の手を繰り出す。
「総旗艦が吐き出すエネルギー出力をなめるなよ!」
そういってあるボタンを乱暴に叩く。
すると、総旗艦のすべての主砲がグラグラと動いた。
「総旗艦から超高エネルギー反応!なんかヤバいよ!」
後藤が叫ぶ。
その直後、総旗艦のすべての主砲からビームが放たれる。
「おわっ!アブねぇ!」
黒島は反射的に回避する。
他の艦艇群も同様に、総旗艦からの攻撃を回避しているようだ。蒼の旗艦は自前のバリアで何とかしているようだが。
「これは厄介なことになったぞ」
「今度こそ冷静になってる場合ですか!?」
「とにかくだ。サンダルフォン計画ではあの総旗艦に近づかないといけない。いけるか?」
「うぅぅ……!ぃきます!」
「よく言った。では行くぞ」
黒島は覚悟を決めて、ビーム砲撃の中を前進していく。
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