第131話 真相
レイズの異変に真っ先に気が付いたのは黒島だった。
「レ、レイズさん!?」
レイズは空中に投げ出されたような感じで、その場に漂う。
すぐさまトランスがレイズの確認に向かう。
そのまま生体確認プログラムを試す。
「……大丈夫だ。意識はないが生きている」
「良かった……。でもなんで急にこんな状態に?」
「それは多分、あれと関係しているからだろう」
そういって、トランスはあるものを見つめる。
その視線の先にあったものは、白の旗艦であった。
「そういえば、白の旗艦を撃破すれば何かが分かるって言ってたような……」
「おそらくそれが作用して、気絶状態に入っているのだろう」
その頃、レイズの深層意識はある場所に連れていかれていた。
「ここは……?」
あたりは暗闇に囲まれていて、一寸先も見えないような状態だった。
そんな中、ある男性が現れる。
「ようやく白の旗艦を撃破したな」
「あ、あなたは……?」
状況がうまく飲み込めず、その男性に聞き返すレイズ。
男性はゆっくりと歩き、レイズに近づいていく。
「俺の姿には見覚えがあるんじゃないか?」
「……そういえば」
レイズは思い出す。パリでジーナと接触した時に、脳裏に浮かんだ映像。そこに映っていた男性の一人であることに気が付く。
「それにその声、何度か聞いたことありますね」
「そうだ。俺は常にお前と共に一緒にいた。今、俺が顕現する時だ」
「それはどういう……」
すると、レイズの頭に痛みが発生する。
「う、ぐぅ……!」
「少しの間、耐えてくれ」
それは現実のレイズにも影響を起こす。
レイズが急に苦しみ出したのだ。
「心拍数上昇……!?何が起きている……!」
「トランスさん、何とかできないんですか!?」
「生体があれば何とかなる。しかしレイズの生体はどこにあるか不明な状態だ。対策のしようがない」
「そんな……」
そのままもがき続けること数分。レイズは目を覚ます。
「レイズ、大丈夫か?」
「レイズさん!」
「えぇ、私は大丈夫。それよりも……」
その時、紅の旗艦のコックピット内に、何者かが現れ出ようとしていた。
その何者かは、足元から3Dプリンターのように、生成される。
そして、全身が現れ出た。
「え、誰?」
紅の旗艦に合流していたロビンが、同じく合流したジーナに聞く。
「分からない。でも、トランスなら知っているかも」
そうジーナはトランスのことを見る。
「そうなんですか?トランスさん」
レイズもトランスのことを見る。
黒島と後藤は、一体何が起きているのか分からない状態だ。
「トランス、もうこれ以上黙っているのは無理だろう」
そう男性が言う。
「……あぁ、そうだな」
トランスはそれに同意するように、ゆっくりと立ち上がる。
「それで、あなたは誰なんですか?」
レイズが男性に聞く。
男性はゆっくりとレッド・フリートの面々を見ると、話し始めた。
「……俺はテリー・ジョーシン。この紅の旗艦の、真の生体艦長だ」
その発言に、トランス以外は驚く。
「レイズさんが生体艦長じゃなかったのか……!?」
「いや、レイズも生体艦長だ。この艦には生体艦長が二人いることになる……!」
「テリー・ジョーシンと言うと、フリット・ジョーシンと共に名前が上がる、流浪の民の初期メンバーで有名」
「私も知識でしか知りませんでしたが、なぜそんな人が?」
混乱が見られるレッド・フリートの面々を差し置いて、トランスとテリーは握手をする。
「久しぶりだな、テリー」
「お前も元気そうでなりよりだ、トランス」
「ちょっと!そこで友情ごっこしてないで説明をしてくださいよ!」
レイズが二人に叫ぶ。
テリーは仕方ないように溜息をつくと、そのままレイズの元に近づく。
「そんなに答えが知りたいのなら、俺についてこい」
そういって、テリーはコックピットの下の方に移動する。
レイズは決心したようにテリーについていく。
興味本位でロビンとジーナも向かう。
「お、俺たちは?」
「見に行きたーい」
黒島と後藤も行きたがっていた。
「こっちだ」
彼らを案内するように、トランスはコックピットの下にいける道を示す。
そして一行はコックピットの真下に移動する。
「ここって?」
「区画ZZ-999だ。重要なものがここに収容されている」
「その大事なものって?」
「流浪の民が流浪の民である所以の代物。生体艦長の体そのものだ」
そういって、テリーがZZ-999の扉に手を当てる。
すると、何かロックが解除されたような音が響き、中に入れるようになった。
「そしてこれが真実だ」
中に案内されると、そこには二つのガラスの管があった。
片方には、テリーと同じ顔をした男性が入っている。
そして問題なのは、もう一つのガラス管。
そこにはテリー、そしてレイズと同じ髪の色をした女性が浮かんでいた。
「こ、これは……」
「これが、レイズが依り代としている我が母親、マリア・ジョーシンだ」
その言葉にトランス以外のレッド・フリート固まってしまう。
より状況が難しくなってしまったからだ。
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