第12話 決断
翌日、学校が休みのタイミングで、黒島の家に後藤が来た。
「こんにちは、黒島君」
「おう。とりあえず上がっていってよ」
そういって、黒島は後藤を家に上げる。
そのまま、黒島の部屋に案内した。
「お茶持ってくるから」
「うん」
黒島は自宅のキッチンに向かい、麦茶のペットボトルとコップを持って部屋に戻る。
「お待たせ」
「ありがと」
そのまま、しばしの間無言が続く。
部屋の中は冷房をつけたエアコンの音が響いていた。
先に口を開いたのは後藤の方であった。
「こうやって黒島君の部屋に来るのも久しぶりだね」
「ん、そうだな」
「よく勉強会とかしたよね」
「あぁ」
「……今日来た理由、分かってるよね?」
「まぁ、なんとなく」
「黒島君に委ねられた命運、どうにかして受けてくれないかな?」
「……まだ、決めかねてる。どうしたらいいのかも、どうやったらいいのかも、まだ……」
そういうと、また無言の時間が流れる。
そして再び後藤が口を開いた。
「確かに大変な決断かもしれないよ?けど、黒島君には乗り越えてほしいの」
「……なんか俺が悪いみたいな言い方するな?」
「そんなことないよ。私は黒島君を応援してるつもりだし、これからも応援していく」
「んなわけないじゃん、他人事みたいに言ってるし」
「違う、そうじゃないの」
黒島は、自分がイライラしていることに気が付く。
普段は温厚な彼がここまでイラついているのは、おそらく自身に課せられた運命というものに怖気ついているからかもしれない。
そんなことを察した後藤は、突然こんなことを言う。
「私も乗る」
「……は?」
「私もあの宇宙船に乗って戦う」
「それ本気で言ってるのか?」
「本気だよ。だってそうじゃなきゃ黒島君ばっかりが重荷を背負うことになるから」
「後藤……」
再び沈黙が流れようとしていた時だった。
「はい、この話終わり!そんな固くならない!」
黒島のスマホから声が鳴り響く。
その声の主は、言わずもがなレイズだった。
「何の用事ですか、レイズさん……」
「もー、こんな所で重苦しくなっても仕方ないでしょ?せっかく梓ちゃんが決意表明してくれてるのに、祐樹さんもそれを受け入れなくちゃ」
「いや、それは関係ないでしょう……」
「とにかく、梓ちゃんが私たちの陣営に入ってくれるのはいいことよ」
「そうだ。せっかくの好意を無駄にしない方がいい」
そこにトランスが混じってくる。
「トランスさんまで……」
「とにかく、梓ちゃんがこっちに来てくれるのは大いに歓迎するわ」
「あ、ありがとうございます」
「そう固くならないで。私のことは気軽にレイズって呼んでくれてもいいから」
「……うん、レイズ!」
女子の間で、謎の絆が生まれた。
「それで、トランスさんもここに来れるんですね」
「あぁ、レイズがここを改造したようでな。意外と居心地がいいものだ」
そういって、スマホの奥のほうへと消えていく。
「一体何をしにきたんですか……」
「あぁ、そうだった。肝心なことを忘れていた。どうやら地球の連中が動くらしい」
「まさか、第5次攻撃が始まったんですか?」
「おそらくだがな。また輸送艦や工作艦の類いが出てきているに過ぎないのだが、本隊が出てくるのも時間の問題だろう」
「祐樹さん、どうするんですか?」
「うぅん……」
黒島は悩んでしまう。
結局、ここで悩んでしまうのだ。
「黒島。昨日も言ったが、英断は早いほうがいい」
「分かってますけど……!」
「黒島君、私は人類と一緒になって流浪の民と戦ったほうがいいと思う。それは私たち人類のためになると思うから」
「祐樹さん、私は力になれます。地球を守るため、どうか決断をお願いします」
その場にいた全員に説得される。
「……てか、俺が大将みたいになってるんだけど、違うよね?」
「あ、でしたら役職でも決めておきますか?」
「いいね」
「俺はパスだ」
「ダメです。トランスさんもやりますよ」
そういって、なぜか役職決めが始まり、ワイワイと行われていく。
「やっぱり大将から決めたほうがいいですよね」
「だったらレイズがいいと思うな」
「それは俺も賛成だ」
「右に同じ」
「えー、私ですかぁ」
結果として、レイズが大将、トランスが副長、黒島が人類代表、後藤が人類代表代理となった。
そして、余計なことかもしれないが、レイズたち流浪の民から離れた反逆組を「レッド・フリート」とした。
「気は済んだか?本題に戻るぞ」
トランスが本題に戻す。
「とにかく今は、地球の艦隊と合流するのか否かを聞いている。それに対して黒島、どうだ?」
「……分かりました。人類と手を組みます」
「よく言った」
結果として、レッド・フリートは人類と手を組むことを決定した。
「よし、では地球側とコンタクトを取る準備でも始めよう」
「私は地球の攻撃艦隊の様子でも観測してますね」
「分かりました。俺たちで何かすることはありますか?」
「そうですね……。本当の人類代表になる覚悟でもしておいてください」
「本気で言ってるんですか……?」
こうして時間は少しばかり過ぎていく。
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