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異次元無双の紅き艦  作者: 紫 和春


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第11話 思考

 現場に急行した紅の旗艦は、その後たった1隻で数百の白の艦艇を一方的に撃破した。


「いやはや助かった。一時はどうなるかと思ったぞ」


 そうトランスが言う。


「白の旗艦の対応が早いですね。やはりこちらの行動は筒抜けというわけですか」

「それも仕方ないだろう。紅の旗艦に続いて、黒の旗艦も白の旗艦の隷下から抜けたのだからな」

「そうなると、すぐに対応しないとまた白の旗艦に襲われるのではないですか?」

「その可能性も十分にあります。しかし、黒の旗艦はその特性上、高度な艦隊運動には適していません。旗艦級の中でも最も足が遅い旗艦ですから」

「しかし黒島の意見も一理あるのは確かだ。この際、レイズの切り取った亜空間に逃げ込むのも一つの手だろうな」

「それはいくら何でも無茶ですよ。ただでさえリソース圧迫しているのに、これ以上空間把握にメモリ使ったら私死んじゃいますよ」

「俺のメモリを分けてやる。それを使ってなんとかしてくれ」

「そんなぁ……」


 そんな話を紅の旗艦のコックピットでしていると、声が上がる。


「あのー……」

「あ、後藤……」

「黒島君でいいんだけど、この状況説明してくれない?」

「分かった。説明するよ」


 こうして黒島は後藤に、地球外知的生命体である流浪の民や、それを取り巻く環境の話をする。


「……というわけで、現状こんな感じなのかな?」

「はぁー……」

「後藤、大丈夫か?」

「はっ。ごめん、遠くの世界に行ってた」

「まぁ、これでもだいぶ端折って説明していたつもりなんだけど……」

「えーと。つまり、レイズさんやトランスさんは今地球を攻めている知的生命体の仲間で、それから逃げてきたってこと?」

「うん、まぁ、それでいいや」

「それすごい重要なことじゃない!?」


 後藤は興奮か慌てているのか、そんな感じの言動をとっている。


「これ大変なことじゃない……?私すごい重要な情報を持っちゃってるよ……」

「後藤、そこまで慌てる事じゃないと思うんだけど」

「慌てるでしょ!だって宇宙人が目の前にいるんだよ!私たち誘拐されてるじゃん!」

「おぉ、最初の俺の時と同じ反応してる……」


 その後、後藤を落ち着かせるのに数分かかった。


「とにかく、悪い人たちじゃないから、ね?」

「は、はい」

「話は終わったか?」

「あ、はい。終わりました」

「それで、話は少し変わるのだが。戦力の増強についてだ」

「そういえばそんな話していましたね」

「正直に言って、俺が保有している技術では、無人化は困難だという結論に至った」

「困難……ですか?」

「そうだ」

「どうして困難なんです?生体を機械に取り込めるレベルの技術力を保有してるのに?」

「確かに昔は無人化していた時もあった。しかし時間の流れと共に、その技術は衰退していった。結果として残っているのは、失われた技術(ロストテクノロジー)としてアーカイブに記されているのみだ」

「そんな……」

「ただ、希望がないわけではない」

「どういうことですか?」

「地球のネットワークを調べさせてもらった。それによると、地球では積極的に無人化を推し進めているらしいではないか」

「……まさか人類に手助けをしてもらうつもりですか!?」

「それ以外に道はないだろう。どうする?」

「え、それ俺に振ります?」

「ある意味お前さんが人類代表みたいな所あるからな」

「そんな……」


 黒島は困ってしまった。それは、勝手に人類代表にされてしまったからである。

 実際はレイズとトランスが勝手に言っているだけであるが、黒島にはその責務というのが重くのしかかる。


「黒島君……」

「少し、考えさせてください……」

「別に構わないが、いつまでも待てないぞ。時には英断を下すことも重要だ」


 そう言われて、その日は解放される。

 黒島たちは、元の帰り道に戻された。


「黒島君、大丈夫?」

「あ、あぁ。後藤も大丈夫だったか?」

「うん。何とか現実として受け止めるね」

「そうしたほうがいい」

「黒島君の方はどうなの?」

「……とにかく今は結論は出せない」


 そういった黒島の手は、わずかに震えていた。


「まさかこの手に人類の命運がかかっているなんて思いもしなかった……」

「黒島君……」

「とりあえず、今日は帰ろう。暗くなる前に」


 そういって、二人は帰路に着いた。

 その日の夜。

 黒島は自室のベッドで考えていた。

 人類の命運をどうするか、自分の手に握らせていいのか。

 その葛藤の中にいた。


「祐樹さーん、いい加減決めてもらってもいいですかぁ?」

「それは分かってる。分かっているんだけど……」

「何をためらう必要があるんですか。地球を守る!それだけで十分な理由になるじゃないですか」

「でも失敗したときには……」

「その時は仕方なかったとするしかありませんよ」

「けど、そんな度胸が俺にあるかな……」

「あるかないかではなく、出すんです。そうしなければ、物事は進みませんよ」


 そういった会話をしている所で、スマホに着信が入る。

 相手を見てみると、後藤からであった。


『明日学校休みだから、黒島君の家に行きます』

「……家に来るのか」


 なんの話をするのか、大体検討がついているのだが、黒島はそれを知らないふりをする。

 とりあえず、後藤にはOKの返事をして、部屋の掃除を始めた。

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