第六章 健太郎、影武者やめるってよ - 3 偽王の終焉
「ウハハハ! 貴様と朕、どちらが偽物なのか? この玉璽が証明するであろう!」
勝ち誇った賢王、玉璽を高く掲げ、
「元の世界へ送還してくれるわ! この異邦人めが!」
玉璽=異世界召喚のリマンシールで僕を【強制追放】しようと企てた!
「開け! 超越次元断層! 霊氣ロォォォォード!」
賢王は玉璽を掲げ、迸るマナの奔流をその手に集約する!
――――はずだったのだが……
「はぁ?」
賢王の意思に反して、何も起こらない。不発だ。
これまで何十人も、召喚者を招いてきた傍迷惑な召喚装置が……今日に限ってウンともスンとも言わないではないか?
「何故だ? 何故効かぬ???? …………………………………………ああっ!!!!」
ない!
ない!
ないない!
玉璽の底面! 本来あるはずの魔術回路が、綺麗サッパリなくなっている!
それでは動作しないのも当然だ!
だって……その魔術回路は、ここにあるんだから!
「ケンタロウさま」
玉座の影から現れたケモミミアサシンが、僕へ一枚のリマンシールを手渡す。
転写のリマンシールで奪い取ってきた玉璽の魔術回路を。
「サンキューキィロ」
「もんじょわ」
(結果的に上手く行ったけど、本当に冷や汗モノだった……)
賢王を穴熊から燻り出す作戦は。
「危うく、男爵殿の貞操を賢王に奪われるところだったじゃったからな」
玉座の背後に隠れて、僕を茶化すキコンデネル。
気楽なもんだ大賢者様は……と悪態をつきたいところだが、実際、この子の作戦、『大賢者のプランB』が有ったからこそ、ここまで僕らは来れたんだ。
1. エルエルフのリマンシールを餌に、賢王をアンセー大監獄から誘き出す。
2. 偽エルフに成りすました僕が、賢王のリマンシールの謎を見極める。
3. 賢王の戦力が、偽エルフ捕縛へ全投入された隙を見計らって、キィロが監獄へと潜入、玉璽から魔術回路を奪い取る。
特に [3] こそが【大賢者のプランB】のキモだったのだ!
他は全て、そのための陽動と言ってもいい。
グリューエン少尉と守護龍カジャグーグーとのプロレスバトルも、僕がニセモノエルフとしてオークションに出品されたのも!
今や賢王は裸の王様。
絶対防御のリマンシールは秘密を暴かれ、
召喚装置を人質にして、召喚者に絶対服従を迫ることも出来ない!
見たか賢王フラムドパシオン!
これが僕らのクーデターだ!
「今こそ見せよう! 余が王である証を!」
キィロがアンセー大監獄から奪ってきたリマンシールを剥がし……それを僕は自分のおでこに貼り付けた!
「や、やめろ! 早まるなケンタロウ! 思い留まれ!」
「その願い――――余は聞き入れぬ!」
フラムドパシオン帝――平行世界の僕よ! 貴様にはこの世界から退場戴く!
「やーめーろー!!!!」
「逆流せよ! 異世界召喚術式!」
かめはめ波というか波動拳というかウルトラ水流というか。
僕の掌から放たれた霧状物体が賢王にぶつかると……空間に穴が空いた!
「ぐあああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
そしてそのミニブラックホールが賢王を吸い込んで――蒸発した。
断末魔の声と共に、時空の彼方へと消え去った。
「「「「…………!」」」」
大勢の宮廷官僚、教会関係者、地方自治組織の元締め、
「「「「…………!」」」」
北面の騎士、西面の騎士が見守る、その前で。
「「「「…………!」」」」
魔法ビジョンで全国の臣民が見届ける中で、
【悪魔に魅入られし偽王】は伝説の人となった。
以上で第六章、終了となります。
長々とお付き合い戴けた読者の皆様、本当に感謝感謝です m(_ _)m
あともうちょっとだけ、エピローグの予定です。




