表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/97

第六章 大反撃! 大賢者のプランB - 5

毎度毎度、素晴らしい解決策(※ただし、前提条件が鬼畜)という策を提示してくる大賢者キコンデネル。

今度の「クーデタープランB」には、『エルエルフのリマンシール』なる超激レアシールが必要とのこと……

中古ジャンクショップの常連であるキィロが、朝から晩までディグリまくりで探しても、全然みつかならない……


どうするどうなる、クーデター計画!?

今回もまた、計画は頓挫してしまうのか?


 そして朝が来た。

 今日を逃せば、俺たちに明日はない。

 明日には凄絶な斬首祭りが開催されてしまう。

 『大賢者のプランB』、決行するならば、二十四時間以内に決断を下さねばならない。


 やるか――――やらないか。


「とはいえ……」

 計画の最後のピースである【エルエルフのリマンシール】、未だキィロから入手の報はない。

 最も重要な一欠片が欠けている。

 このままゴーサインを出しても失敗は確定的だ。

 計画を強行したところで、オークションのエルフは「偽物だ!」と即座に見破られ、賢王には再び安全圏へ逃げ込まれる。

 哀れ、クーデター計画は頓挫の憂き目に。アンセーの大獄も予定通りに執行され――

 聖ミラビリスの歴史に血の惨劇を刻むこととなる。


「くそっ!」

 このまま指を咥えて見ていることしかできないのか!? 僕らは!

 他の準備は整っている!

 細工は流々、仕上げを御覧じろ! と誇れるくらい「プランB」のお膳立ては済んだのに!


 ――あとひとつ!

 肝心の要素だけが足りない!


「見切り発車なんか、させられるかよ……」

 失敗が確定的なプロジェクトにゴーサインを出すなど、そんな無責任なことが出来るものか!

 僕は上司だぞ?

 部下の犬死など見過ごせるものか!

 見込みがないプロジェクトは、(上司)が止めなくちゃいけない。

 誰かが「それでもやる!」と抗ったとしても、僕がなだめないといけない。

 それが上司(責任者)の責任だもの。


(頼むぞ、キィロ……君の吉報だけが頼りだ……)


 「今日は具合が悪い」と、魔法ビジョンで登城中止を王城の執事へ伝えた。

 そして娼館『石神井』のVIPルームに籠もり、キコンデネル&少尉と共に吉報を持つ。


 十時、

 十一時、

 正午、


 濃いめのルームサービスも、味がしない。

 機械的にスプーンを口に運びながら、ピリピリ待機する僕ら。


 一時、

 二時、


 少尉は居ても立っても居られず部屋中を歩き回り、掃除と料理と剣の素振りを交互にやり始め、

 キコンデネルは唐突に、ビヤ樽サイズの壺で賢者の秘薬を作り始める。

 僕は延々とソリティアを繰り返す。

 三者三様、気ばかりが焦って、もはや何をしていいのか!


 そして三時、

 四時、


(――――もう限界だ!)

 ジャンクショップの店舗群が閉まるまで、あと一時間。もはや新規の入荷も見込めまい。

 前近代は、日没と共に街が終業を迎えるのだ。


 告げねばならない。タイムアップを。

 プランBの【死刑宣告】を僕が部下へ伝えねば。

 それが、上司の務めだ。

 言いたくなくても僕が言わなきゃ。


 今まで懸命に用意した準備が全て水の泡になるんだ。

 その無念さをおもんばかりつつ、だがハッキリ伝えなくてはいけない。


「少尉、キコンデネル…………残念だけど、この計画(プランB)は…………」


「「いやだ!」」

 即答された。

 上司のメンツ、丸潰れである。


「ここで諦めないで、陛下ユアハイネス!」

「キィロは、必ずヤる女じゃ! 必ず! キィロならば成し遂げるぞな!」


「だけど……」

 もう時間切れだ。

「これ以上、計画を進めても……成功の見込みは……」


陛下ユアハイネス!」「男爵殿!」

「は、はいぃぃ!」

「ここで諦めたらキコンデネルのお爺ちゃんを助けられないのよ!」

「うっ!」

 それを言われると立つ瀬がない。

 だけど、この状況でゴーサインを出したら自殺行為に等しい。成功確率は限りなくゼロに近い。

 いいのか?

 確実に失敗すると分かってて、それでもやるのか?


「「やる!!!!」」


 の気合で満ちていた。少尉とキコンデネルは。

 ああ、確かに、確かに君たちは僕の部下だ。

 【デスマーチにハマるに決まってる】プロジェクトでも、一旦取り掛かったら最後、進め一億火の玉だ、二十四時間働けますかの精神で突っ走る社畜体質。

 それでこそジャパニーズビジネスマンの真骨頂じゃないか!

 グリューエン少尉、キコンデネル……

 見事に、二人は「僕の部下」らしく染まってた。


「…………分かったよ……」

 部下が社畜の暗黒面に堕ちたのなら、それを看取るのも上司の務め。

 駄目なら駄目で、僕が腹を切るしかない。

 文字通りの『HARAKIRI』を賢王の御前で披露することになるが!(泣


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ