第六章 大反撃! 大賢者のプランB - 3
キコンデネル発案の「大賢者のプランB」、その露払いとして、守護龍さんと少尉の「シナリオのある闘い」が繰り広げられる中、
大監獄アンセーでは……
一方その頃……
大監獄アンセーの体育館では、間近に迫った『サンジョー河原 SYOKEIフェス』に向け、賢王直々のリハーサルが行われていた。
「ここで劇伴の盛り上がりとシンクロして、罪人の首がスパパパーっと斬れます」
「で、朕が客に向かってPut your hands up in the air !!!! ……じゃな?」
「そこでバンガバンガと花火が上がりますので、タイミングだけお願いします、MCクレバー……では、いっぺん練習してみましょう」
舞台監督が王立交響楽団に音を指示しようとした、その時、
ぴよよよよ! ぴよよよよ! ぴよよよよ!
「あ?」
賢王の懐で魔法ポケベルが鳴った。
「なっ! なんじゃとー!!!!」
「宰相! 馬を! すぐ馬を用意せよ!」
アンセーの獄長室で事務作業をおこなっていた宰相の下へ、
「どうかなされましたか?」
血相を変えた賢王が飛び込んできた。
「エルフが上場されたのじゃ! とんでもない上玉エルフがマーケットに!」
アラートで震える魔法ポケベルを掲げ、賢王、興奮が抑えきれない。
「こんな時にですか?」
災厄の龍が帝都を襲ってる真っ最中だというのに、好事家の宴はお構いなしなのか?
【龍襲警報】が鳴り響く中でも、人買いどもは平常営業か?
時に裏社会も手懐ける宰相ですら、さすがにドン退きである。
「こんな時もそんな時もあるか! エルフじゃぞ、宰相! 滅多にない出物じゃぞ?」
ああもう――――またこの御方の悪い癖が!
ことエルフの話になると、どんなに諭そうが聞く耳を持ってくれない!
宰相は賢王の性癖に頭を抱えた。
「宰相!」
しかし相手は専制君主、
部下としては嘆きのロザリオを握りしめるしかないのだ。悲しきかな宮仕え。
「ええい! 帥が馬を用意せぬのなら、朕、自らが出る!」
一刻の猶予もならん! と賢王は綺羅びやかなローブのまま、その足で人買い市場へと向かおうとする始末!
「ああっ! お待ち下さい! 賢王陛下! せめて王冠はお脱ぎ下さい!」
だが…………こうなったら誰も王を止められないのだ。
宰相は観念するしかなかった――深い深い溜息とともに。
☆ ☆
「よしゃ……!!」
災龍(※守護龍)と征竜鎮撫将軍グリューエン少尉が迫真の死闘を演じる中……
アンセー監獄の裏門から慌ただしく出ていく豪華な馬車を確認し、キコンデネルは拳を掲げた。
「これで役者は揃ったきに……」
エルフ狂いの王は必ず、人身売買マーケットへと向かうだろう。
自称大賢者の目論見は見事に叶った。
「あとは、お主次第じゃぞ、キィロ……」




