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第六章 大反撃! 大賢者のプランB - 2

 『大賢者のプランB』、キコンデネルの秘策は災龍の活用だった!?


 でもでも大賢者さん?

 災厄の龍は、実は守護龍・カジャグーグーで、「諍いなんて大嫌い!」な平和主義の龍ですよ?

 【龍災】の正体だって、「静かな暮らしを邪魔してくる」盗掘者にキレて、お灸を据えるために人の巣(帝都)を襲っただけで……

 「大監獄を潰してくれ! 悪王を焼き殺してくれ!」とか頼んでも絶対NGでしょ?

 だいたい、本気で災龍がブレスを吐きまくったら、何万人の死傷者が出るのか分かったもんじゃない。

 出来得る限り、最小限の犠牲でクーデターを成功させたい、僕らの方針に反する。


 はてさて、

 大賢者の腹案は如何に?


 だが。

 ところが。

 見守った近衛兵・憲兵、全員の予想を裏切り――――


 ぶはっ!

 ファイアブレスは霧散した! ぶちまけたバケツの水が四散するかのように。


「…………え?」

 目を疑う光景に、固まる兵士たち。


 歴代征竜鎮撫将軍、その三十九人目の犠牲者として、既に墓まで用意されてるのに。聖ミラビリス教会の大聖堂に。

 焼かれた遺体を運び出す葬儀屋が待ち構えているのに。黄金の棺を担ぎながら。

 龍を囲む憲兵と近衛兵が、葬送の国歌を唄い出す寸前だったのに。

 宮廷のお抱え楽団が、指揮者タクトのタイミングを計っていたのに。


「もんじょわー!」


 馬上で雄叫びを上げるグリューエン少尉!

 彼女は聖ミラビリス王国史上初めて――龍へ挑み、生き残った将軍となった。



 いや。

 事情を知る側(ぼくら)から見れば、完全にヤラセなんだけどね……

 『ブレスは出来る限り弱く吐いて、あとは流れでお願いします』と事前に調整してあるから。

 守護竜カジャグーグーさんと、動物会話のリマンシールで打ち合わせ済みなんです。


 カジャグーグーさんいわく、

『戦うの絶対NGですから! 誰とも戦いたくないんです!』

 と嘆いていらっしゃった平和主義の龍なので。

 元々、帝都を襲うのも、傍若無人な冒険者たち(盗人)に対して、堪忍袋の緒が切れた末の行動であって、特に理由もなく人に危害を加えるつもりなど全くない、優しい龍なので。


「誰も殺させません。誰も傷つけさせません」という条件で発注オーダーしてあるので。

 僕から守護龍さんに。


 なので……

 家一軒まるごと飲み込むような大火球、

 そりゃ見栄え自体はメチャクチャ大迫力。

 だけど、吐かれた速度はふんわりと、まるで子供のシャボン玉遊びと見紛うもので……

 それを少尉がキャンセルする。

 ポラールシュテルン家特製の最新型耐熱リマンシールで無効化する。

 そう、炎熱だけなら充分防げる。どんなに巨大な火球であっても。

 これがもし通常のブレスの風圧であれば、たちまち少尉は馬上から振り落とされるけれど、

 そこはそれ。「ブック」も「アングル」も「ギミック」もある戦いなので。

 「安全第一でお願いします!」と、伝えてあるのだ。守護龍カジャグーグーさんにも少尉にも。


 そんなカラクリなど(僕ら四人以外は)誰も知る由もない。


 となれば――

 目の前で繰り広げられる「大怪獣プロレスショー」に、帝都中の目が釘付けだ。


 そりゃそうだ、これまではブレス一発で炭化昇天してた「人間代表」が、ゴジラ級のドラゴンと戦えてるんだ、それで盛り上がらないはずがない!

 龍を囲む兵たちも、遠巻きに眺める民衆も、「昭和の街頭プロレスもくや」の熱狂だ!


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