第二章 エルフが狩るものたち
「異世界で優雅にバカンスせよ」
王様のご厚意で貴族の地位を与えられた輿水健太郎だったが……
危うくドラゴンのファイアボールで黒焦げになるところだったぞ!
と、泣きを入れたくなる事態に。
どうにか生還を果たした彼に待っていたものは……?
第二章、スタートです!
翌日。
僕は「上司」から呼び出しを受けた。
エスケンデレヤ城、謁見の間。
拝謁した王に、僕は跪いて頭を垂れる。いつも以上に深く。
「――朕は誠に遺憾である」
「申し開きの言葉もございません……王よ」
帝都最大の鉄火場で【 あんな騒ぎ 】を起こしてしまっては。
オペラタウンの地下賭博場、
表向きには非公認の違法施設だとしても ―― 為政者には「必要悪」。
民衆の間に募る不平不満や叛意の気配などを、効率よくガス抜きできる「処分場」だった。
その圧倒的効率は、直接、現地へ足を運んだ僕だからこそ実感できる。
呑む・買う・打つは高効率で世の憂さを晴らしてくれる精神安定剤となる。
反動の副作用を考えなければ。
そんな有用な施設を……僕は使用不能にしてしまった。
正確に言えば、破壊行為は箍の外れた暴れ龍のせいだし、
その龍を引っ張り出したのは、僕ではなく軍服の彼女の差し金で……
僕は彼女からストーキングを受けた上に、人違いで拉致されて……
いや、今更グチグチ言っても仕方ない。
僕の迂闊な行動が招いた惨事だよ。
ニセ貴族とはいえ、上流階層が戯れに訪れるような場所じゃなかった。
僕が「行きたい」と言わなければ起こらなかった事件だろう。
「自分とは全く無関係」とか言い張るのは、面の皮がドラゴン並みに厚い人間のすることだ。
「……僕の給料で弁済ですか?」
あの惨状では、早期の営業再開など望み薄であろうことは、誰の目にも明らか。
大規模な復旧作業が必要になる。
こんだけ「やってもうた」ならば、さぞかし、
王様は、僕の首を刎ねんばかりの激怒しているかと思ったら……
「爵よ、是非に及ばず」
畏まる必要などないぞ? とばかりに――普段通りの、フランクな笑みを向けてくれる。
ちょっとでも気に障ったら首チョンパ! な専制君主像など、王様には無縁。
「男爵殿下、地闘技場の修繕費は国庫からオペラタウンの顔役へ流しておきますので」
美形の宰相も笑顔でフォローしてくれた。
「ははー!」
土下座。反射的に土下座。
北町奉行遠山左衛門尉の名裁きに感服したお白洲の善人の如く、額を赤絨毯に擦りつける。
名君の御沙汰には涙を流し土下座。
日本人の遺伝子に刻まれたセレブレーションで、寛大な王様に感謝を捧げる。
ありがたやありがたや。
で、
金さんなら『これにて一件落着~!』がルーティンじゃないの?
お約束の流れは?
でも異世界の掟は違っていた。
「以上の処置によりアーシュラー爵には不良貴族ポイント、☆三つを賜う」
王の言葉に呼応した小姓が、僕の名が記された「表」の☆印を三個、塗り潰す。
「アーシュラー爵様~ポイント三となりまして~、残り七~」
朗々と詠い上げる小姓。
「不良貴族ポイント? なんすかそれ?」
増えると何かペナルティでもあるんですか?
「☆が上限に達すると、市中引き回しの上、切腹もしくは磔となります」
「えええええ!」
もう、いかがわしい場所に近づくのは止めよう。切腹させられちゃ適わない。
「決めた!」
君子危うきに近寄らず。
大人しく自室に籠もって寝てた方がマシだ。
「はぁ……」
(アッー!!!!)
そっと扉の隙間から部屋の外を覗くと――
また「禁忌異本ツーリスト 僕専用窓口」でケモミミ添乗員さんが深い溜め息を吐いてる!
僕が部屋に籠もってしまうと、彼女の営業成績がガッタガタになり……彼女の一族郎党まで、路頭に迷わせかねない!
この不良顧客のせいで彼女がクビに!
異世界には労働基準法も労働基準監督署もない!
とにかく何か仕事を発注してあげないと!
貴族(お金持ち)が散財することで王国経済は回っていくのです!
(とはいえ……)
基本的に僕はインドア派。
ゲームと動画鑑賞くらいしか興味のないネット弁慶だ。
旅行代理店なんて僕の人生には最も縁遠いサービスなのに……
「旅行か……」
余計な騒ぎに巻き込まれる恐れのない、あんしんあんぜんな旅……
悪目立ちせずに、穏便に済ますことが出来る旅行プラン……
「ん?」
そうだ、あれはどうだ?
夏休みなので、更新してみました。
いや、僕ではなく、世間の皆さんが。
続きは……なるべく早めに。




