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彼女はかく語らず竜は囁く  作者: たけすぃ
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6

 つまりはお前は何もするなという事だろうか?

 メディスンは銀の炎の言葉を回らぬ頭でそう受け取った。何か聞き捨てならない言葉も付いていたと思うが、死ぬのだと思っていたらなんだかやたらと綺麗で偉そうな人が出てきて何もしなくて良いと言ってくれたのだ。

 つまりは俺は生き残れるのだろうか?

 メディスンはそう思うと自然と目から涙がこぼれた。

 メディスンは慌てて涙をぬぐった、こんなにも綺麗な人の前で泣いてしまうのは恥ずかしかったからだ。

 なぜか銀の炎はそんな自分を見てバツが悪そうに目をそらしたが、きっと自分の泣き顔が見苦しかったのだろうとメディスンは理解した。

「隊長さん」

 その言葉にメディスンが反応出来たのは隊長という言葉に反応したわけではなく、突然目の前を塞ぐ巨体に驚いただけだった。

 自分の頭を二つ三つは優に超える場所から発せられた声は意外なほどに若い男の声で外見との大きな差にメディスンは軽く狼狽した。

 オーガの兵隊さんってのは声は若いもんなのかい? 等と惚けていると、なんとオーガの首がパカリと開いて人の顔が出てくるものだからメディスンの困惑はいや増すばかりだった。

「竜を見るのは初めてかい隊長さん」

 首から顔を出した自分の子供と変わらぬような年頃の顔をした少年がそう問うてきた。

 メディスンは竜ってのはもっと大きいもんじゃなかったかと思ったが頷く他なかった。

 メディスンの頷きに少年は、じゃあビックリするのも仕方ないね等と呟くとその大きな腕を後方を指し示すように動かした。

「生きてた連中はあらかた回収出来た、悪いけど俺たちの隊には医者がいないんで応急処置だけだけど、まぁ殆どは生き残ると思うよ」

 その言葉はメディスンの理解を遙かに超えていた。このオーガじゃなくて竜のお人らはあの弓矢が雨のように降ってくる中、平民の俺たちを助けに行ったのかい?

 平民の常識として竜を駆る人間と言えばそれは貴族であり、大きさは知っている竜より小さいとは言え、それが着る鎧は色こそ黒く地味ではあるものの素人が見ても見事な物だというのもメディスンの誤解を補強していた。

 メディスンがどこぞの貴族子弟で構成された部隊に助けられたと思っても仕方ない事だった。

 メディスンは咄嗟に地面にひれ伏し礼を言いそうになるが、緊張と困惑でこわばった体は中途半端な礼の姿勢を取っただけだった。

 それを見て取った少年が、隊長さんに頭下げられちゃったよ、等と妙に嬉しげな声を上げながら仲間の方へと去って行く背中を見てメディスンはますます混乱した。

 平民に礼を言われて喜ぶ貴族なんてのは見たことが無かったからだ。

 いやしかし貴族様か貴族様ね、ふむやっぱり俺は少々オカシクなっているようだ。貴族様に助けられたってのに全然驚いてねぇんだから。村に帰ったら村の連中に自慢してやろう。銀の炎に率いられた貴族様の竜に助けられたって。

 そうそう銀の炎様の名前は確か――。

 フレイ・クロファースだって!?

 どんな馬鹿でも分かる、この国でクロファースを名乗れるのは王族のみだ。

 メディスンが驚愕に顔を上げ王国の姫だと名乗る少女を見ようとすると、件の姫が涙ぐみながら顔を背ける所だった。

 メディスンにはもはや何が起こっているのか何一つ分からなかった。


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