表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女はかく語らず竜は囁く  作者: たけすぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/51

43

 村に到着すると、結構な騒ぎとなっていた。

 一部の村人は既に避難を開始しており、テツは数名の部下を走らせて彼らを呼び戻さねばならなかったし、フレイの姿を見つけたクエルが感極まって泣き出し、返り血だらけのテツの姿を見て、やはり感極まって泣き出した。

 村人達は初めて見る地竜の死体に、その大きさや爪の鋭さに大いに驚き、それを倒したテツや竜寄兵を大いに称えた。

 その日はそのまま村中巻き込んだ大宴会へとなった。

 テツは持ってきていた糧食を持ち出し、村はゴブリンが興味を示さなかった為に残っていた酒類を持ち出した。

 夕暮れ前には避難していた村人も加わり、楽器ができる者が音楽を奏で、たき火が焚かれ陽気な者がその周りで踊り出し始めた。

 ピレは何故かレイドリックを脇に従えたまま、主賓として振る舞い、フレイは当然のようにその側で主賓以上に主賓のような顔をし、クエルが甲斐甲斐かいがいしく世話を焼いている。

 テツはそれを蜂蜜酒を入れた茶を舐めながら見ていた。考える事は山ほどあった。

 レトゥラトスの解体は村人の手を借りれる事を村長に確認したが、その他はまったくの手つかずだ。

 帰路の計画も建てなければならないし、解体したレトゥラトスの運搬方法も考えなければならないのだ。それにゴブリン退治と思ったら竜を退治しなければならなくなった部下達への報償も考えなければならない。

 考える事は山ほどあった。

 ああ、それにダナスター家へ森にレトゥラトスが出たと報告しなければならないな。

 退治したとは言え領内の森に危険な地竜が現れたのだ、事後報告になってしまうがしないわけにはいかないだろう。

 さて、誰を使者にたてるか。

 テツがそんな事を考えながら、茶を半分程飲んだ所で竜寄兵りゅうきへいが慌てた様子で宴会場に駆け込んできた。

 コリンである。

 ゴブリンの危険も無くなったと思われたので、特段歩哨ほしょうを立てるつもりの無かったテツだが、コリンの希望により歩哨にたって貰っていた。

 本人曰く、団長を置いて逃げる事になった自分なりのケジメ、だという。

 テツはコリンの意外な真面目さに驚いた。

 ラトランはコリンのその言葉を聞いて、黙ってコリンに付き合って歩哨に立っている。

 宴会場へと駆け込んできたコリンはテツを見つけると。

「団長! 馬に乗った奴らが近づいてくる! 武装してた!」

 そう叫んだ。

 その叫びを聞いた瞬間、テツは近くの農具に立て掛けてあった自分の剣を掴むと駆けだした。

「コリン案内しろ! 他の者は急ぎ装竜せよ!」


 コリンの案内で村の入り口まで行くと、テツにもそれが見えた。

 松明たいまつを持った複数の集団が馬に乗ってこちらに駆けてくるのが見えた。

 テツの目では武装しているかどうかまでは分からなかったが、竜を纏うコリンが言うのであれば間違いないだろう。

 最初は野党の類いかと思ったが、わざわざ松明を掲げて襲いには来ないだろう。

 それにダナスター男爵領は確かに裕福な土地ではあるが、それ故に野党の類いは活動しにくいだろう、裕福な土地は騎士や兵を揃えやすいからだ。

 それともスタトへ派兵している今ならと、どこかの野党が流れてきたか。

 どちらにしろ確かめなければならない。

 テツは、相手が抗戦の意思ありと確認できたら自分を抱えて村へ退いてくれ、とコリンに頼むと、コリンとラトランを引き連れて謎の集団へと近づいていった。

 オーガのような巨体の兵を連れて行けば、相手も警戒していきなり襲いかかってくる事も無いだろう。

「怪しい奴! そこで止まれ!」

 テツはまさか自分が、不審人物達に不審人物扱いされるとは思わず、驚くというより笑いそうになってしまった。

 テツ達が謎の集団に向かって歩き出すと、すぐに彼らと対面する事になった。

 どうやら謎の集団は夜にも関わらず、馬をそこそこの足で走らせていたようで、互いの姿を視認するのに村をでて幾ばくもなかった。

 道は田舎の割に綺麗に舗装されているが、それでも野党がするにはリスクの高い行為だ。何せ馬が潰れれば襲うにしても、逃げるにしても不利だし、何より馬は高い。

 テツはその事と、こちらを逆に不審人物扱いしてきた時点で、この謎の集団が野党ではないと確信していた。

 テツは名乗りを上げる。

「私は近衛兵団団長テツ・サンドリバーである。貴君らの所属と目的を述べて貰おう」

 少し離れてこちらを警戒している彼らに聞こえるよう、テツは声を張った。

 松明の光の向こうで、近衛兵団? 声が若いぞ、団長と言っているが、等と戸惑いの声が聞こえてくる。

 戸惑うのも良く分かる、とテツは思う。何せ自分が一番その役職に戸惑っているのだ。

 戸惑いの声が一瞬静かになると、馬列が割れて一頭の馬がこちらに近づいてくる。

 慌てたように松明を持つ若い男が後を馬を操り後を追う。

 テツと馬上の人物の顔が松明の明かりに照らされる。

 馬上の人物は端正な顔立ちの中年男性だった。小綺麗に整えられた口ひげがよく似合っている。

 ああ、しかしこの目は。

 テツはその翡翠色の瞳を見て、この人物が誰か大凡の見当が付いた。

「私はホズ・ダナスター男爵である。近衛兵団団長テツ・サンドリバー殿、我々は竜が出たとの報せを聞いて急ぎ駆けつけた」

 ピレ嬢の目に良く似ているな。

 テツはダナスター男爵の極めて簡潔な言葉に好感を感じながら一礼する。

「その件についてはこちらかご説明にあがる所存で御座いました」

 テツは自分が一礼する間も、コリンとラトランが決して油断していない事に満足しながら、笑顔を浮かべる。

「どうぞ村の方へ、そこでご説明いたしましょう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ