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彼女はかく語らず竜は囁く  作者: たけすぃ


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 翌朝、テツは三十名の竜寄士を連れて森へ行く事をピレに告げた。

 ピレは村が襲われなくなったと聞いて、無駄足を踏ませてしまったと思っていたので何かしら抗議でも受けるのではと思っていたらしく、テツのその言葉にキョトンとした顔をする。

「ピレ嬢、襲撃が収まったとは言えまだ今日で六日目です」

 テツは村に広がりつつある安堵とは関係なく自分達は働くと明言する。また無駄足などとは思っていない事をそっと伝える。

「ゴブリンが襲撃してきた原因も気になりますし確かめる為にも森に調査に行こうかと思います」

 残りの十名は村の警護に当たらせますので、その旨をピレ嬢より村へしらせて頂けると助かります。

「はい、テツ様」

 テツの行動は全て無駄足を踏ませたと思っている自分を慮っての事だと思ったピレは素直に頷いたのだった。


 村から森までは小さな道が繋がっており、村長から借りた猟師を道案内にフレイとテツ達は太陽が中天に差し掛かる前に森の入り口へと到着した。

 クボ大森林――、三つの貴族領にまたがる、またがるというより貴族領がへばりつくと言った方が正確な巨大な森である。

 普通こういった森は境界線を引くのが難しく貴族同士の争いの種になったりするのだが、クボ大森林にそのような問題は起きない。

 なにせ森の中央には誰も入っていけないのである。

 それほど巨大な森であり、そして人が森の恵みを得るにはその外縁で十分すぎたからだ。

「この辺はまだ木が少ない場所でして」

 そう説明したのは案内に付けられた猟師の男だった。

 男が言うにはゴブリンは森の浅い所にいて、森が濃くなる所になると見なくなるとの事だった。自分もそのあたりからは森の奥に行かないので確かな事は言えないが、とも言っていた。

 ゴブリンの巣穴の位置は分かるか? とテツが尋ねると大凡おおよその場所はと答えたのでテツは満足した。


 フレイは何をしているんだ、とテツが森から振り返ると三十名の兵を五人組六班に分けているフレイの姿があった。

 テツは頭痛を覚えた。

 嬉々として兵の班分けをしているフレイの顔は明らかに森へ入る気満々だった。

 おかしい、とテツは思う。

 ここまでの道中でフレイには森の入り口で待機してもらうと言っておいたはずだ。アイツも了承していた。

 だいたい三十人もの兵を連れてきたのはフレイの護衛の為だ。

 テツは森へは自分と案内の猟師、後は二人の竜寄兵しか連れて行く気はなかった。

 間違ってもフレイを連れて行く気はない。

 そもそも調査と偵察なのだ、そんな大人数をそれも不慣れな森へと入れさせる気はテツには無かった。

「フレイ、駄目だぞ」

 テツのその一言にフレイが絶望的な顔を見せる。

「そんな顔をしても駄目だ、出発する前にも道中でも言っただろ」

「せっかく……」

 フレイが例えるなら子供のお菓子を理不尽に取り上げる大人を見るような目で見てくる。駄目だ俺、ここで甘やかしては駄目だ。

「せっかく持ってきたんだぞ新兵器を!」

 そう言って班分けした竜寄兵を指さす。

 彼らはみな巨大な弓を装備していた。

 弓と言うより小型のバリスタと言った方がシックリくるサイズであったが、実際にそれは小型のバリスタその物だ。

 人間では到底扱いきれないし、そもそも引くことすら不可能なその弓は、スタト攻略戦でテツが破城鎚を竜寄兵に投げさせたのを見てフレイが思いついた物だ。

 通常はこっちを使う、とフレイが主張する木製の矢でさへ信じられない太さと長さだが、フレイは更に全て鉄で出来た矢さへ作らせて持ってきていた。

 どちらも人間相手に使うには過剰な威力だし、かかる費用もちょっと洒落にならない程だ。

 木製の矢も馬鹿げた弓の力に耐えられるように特別な加工をしていたし、鉄製の矢にいたっては剣を飛ばしているのと大差ない。

 使った矢を毎回全て回収出来るのならともかく、まともな経済観念のある指揮官なら思いついても使おう等とは思わない代物だ。

 テツは我が儘が受け入れられない幼女のそれである顔をするフレイに冷然と言ってのけた。

「駄目だ、絶対に」

 ほら、見ろ俺だってちゃんと言えるんだ、いつでもフレイの我が儘をきくわけじゃないんだぞ。

 テツはそう思ったが、それを見ていた兵達は団長が超頑張ったと感心していた。


 フレイは信じられない思いで森の中に入っていくテツを見送った。

 何故だ、何が悪かった。

 というか私が悪いのか? いやそんなハズはない。

 非常識なのはテツの方だ。

 こんなにも楽しそうな事に私をのけ者にするなんて酷すぎる。

 せっかく弓も用意したのに!

「姫様」

「用意したのに!」

 フレイはヴォラにかけられた声に思わず心中が口を突いて出た。

「あーはい、そうでありますな」

 ヴォラが何とも言えない顔をしてそう答える。

 こんな時テツ殿はどうしていただろうかとヴォラは考えたが自分が同じように出来るわけは無く、声をかけた当初の目的を思い出した。

「班分けした兵達はどうしましょう?」

「知らない」

「は?」

 ヴォラの口から流石に間の抜けた声が漏れた。

「今なんと?」

 半ば義務感に駆られてヴォラが聞き直す。

「知らぬ!」

 フレイは遂に叫んだ。


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