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彼女はかく語らず竜は囁く  作者: たけすぃ


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 竜を馬の代わりに使う。

 思いついてみると成る程それは理にかなっていた。竜は馬と違い魔石が主食である。魔石は飼い葉に比べればずっと少ない量で済む。

 それは馬のための飼い葉を運ばなくて良いという事だ。運ぶ物が増えれば増える程に荷馬車が増え、その荷馬車を引くための馬の餌を運ぶ為に更に荷馬車が増える。

 そうして大量輸送をしようとすればするほど、荷馬車の餌を運ぶ為の馬車が増えていってしまうのは、この陸上輸送を馬車に頼っていた軍にとっては大きな問題だったのだ。

 竜を馬の代わりに使う。

 それはまさに革命的とも言える思いつきだった。

 だがそれが軍や民間に広まるまでは随分と時間がかかった。

 一つは寄士竜の入手がそこそこに難しい事。

 更には竜の主食たる魔石の安定的な入手が、貴族はともかくとして平民には難しかったからだ。

 フレイは所領に魔石の鉱脈がある為、その点については帝国内においても屈指の安定供給が出来る立場にあった。

 むしろそういう立場にあったからこそ竜寄兵という物を思いついたのだ。


 テツ・サンドリバーは三日目の朝、その光景を見るまでは自分が非常に良くやったと思っていた。

 連れて行く兵の数は四十人、本来はその半分のつもりだったがフレイが同行するという事になったので護衛の為に数を倍にした。

 その半分は既に幌付きの馬車に乗り、もう半分は竜を纏い隊列を組んでいる。

 そして隊列の真ん中には荷台の馬車がある。

 一つは見た目は質素ではあるが王家の紋章が入った立派な馬車で、もう一つは作りはしっかりしているが機能優先といった感じの馬車だった。

 王家の紋章が入った馬車はもちろんフレイが乗るための馬車でもう一つはメイド達が乗る。

 そしてテツは気が付いた。

 竜に引かれる馬車に自分が馬で付いていくワケにはいかないという事に。

 そうテツはどちらかの馬車に乗らなければならないのだ。馬では竜のペースにはついて行けないし休憩もより多く必要になる。そも飼い葉を運ぶ用意を何一つしていない。

 自分だけが馬で行くわけにはいかない、当然と言えば当然の帰結なのにテツは今の今までその事に思い至らなかった、自分で準備の指揮をとったのにである。

 馬の代わりに竜を使う、自分で思いついた策に有頂天になっていてつい忘れていたのである。

 テツは無言で先頭を走る事になる兵士が乗る幌馬車へと向かおうとしたがヴォラ子爵に無言で肩を引き留められ、あちらには私が、団長殿はどうぞあちらへ、と紋章付き馬車へと追いやられた。

 高貴な身分の婦女子と同じ馬車に乗る、まだ早朝であった為にまたぞろ貴族から顰蹙を買う行為を目撃されなかっただけマシだとテツは自分を誤魔化した。


 フレイが付いてくると言い出したのが一つ目の誤算であるなら、自分がそのフレイと同じ馬車に乗らなければならない、というのがテツの二つ目の誤算だった。

 だが三つ目のこの誤算はいったいどういう事だろうかとテツは小首を傾げずにはいられなかった。

 馬車に乗り込んだテツを迎えたのは三人の少女だった。

 一人は当然フレイ。

 テツは彼女がいる事にはもちろん何一つ疑問は感じなかった。本来は感じるべきではあるのだがともかくテツは感じなかった。

 だが残り二人に関してテツは大いに疑問を感じずにはいられなかった。

 何故クエル嬢とピレ嬢が馬車に乗っているんだ?



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