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彼女はかく語らず竜は囁く  作者: たけすぃ


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 セルエント王国王都は王国領のほぼ中央に位置し、北部の穀倉地帯に南部の鉱山、両方を繋ぐ運河の要衝に位置している。

 更には帝国東西を貫く竜骨街道により帝国国内の物流に置いても重要な位置にある。

 必然その人口は多くなり帝国七王国の中でも屈指の巨大都市となっている。

 巨大な城壁に寄生するように広がる外街を抜けてテツ達は街へと入っていく。

 馬の蹄が硬質な音をたてながら石畳を薄く削っていく。列をなして上街にある兵舎へと歩いて行くテツ達の姿を、より正確に言うならばそこにいるだろうフレイの姿を見ようと住民達がにわかに集まってくる。

 若く美しく高貴、しかも平民を近衛兵としているフレイは、確かに変わり者であったが王都では平民から絶大な人気を誇っていた。

 テツの耳に今もフレイを賞賛する声が入ってくる。驚くべき事にフレイが近衛兵と戦争に参戦した事も彼らは知っていた。

 テツ達の行軍速度とこの時代の情報伝達の速度を考えるとそれは驚くべき早さだった。

 住民達の賞賛を受けながらテツ達は上街にある自分達の兵舎へと帰還した。


 上街には二つの兵舎がある。

 一つは近衛騎士団、そしてもう一つがフレイ率いる近衛兵団の物だ。

 兵舎と王都の民には呼ばれているが、事務機能、訓練の為の広場や厩舎などの機能を持ち実質的には基地として機能している。

 敷地の広さとしては城に次ぐ大きさであり、半個中隊にも満たない近衛兵団が持つ物としては明らかに大きすぎる物だが、フレイはあらゆる苦情を無視してこの兵舎を手に入れた。

 壁に囲まれた敷地は浅いが堀に囲まれており上品な上街では浮いている。

 門を守る兵士が少年兵となればなおさらだ。

 門番の少年兵がテツ達の姿を見ると大きく手を振って満面の笑顔を浮かべると、あろう事か門番の役割を放り投げて兵舎の方へ走り出す。

 その姿を苦笑で見送りながらテツは先頭で門を通過する。続いて馬車も通るが現在その中には誰もいない。

 フレイには真っ直ぐ城へと帰って貰ったのだ。

 観覧と称しながらも戦闘に参加したのだ、フレイが申し開きをするかどうかは怪しい所だが、少なくとも王に報告はしなければならないだろう。

 本来なら近衛兵団隊長であるテツも一緒に出向くべきなのだが、貴族受けを狙ってヴォラ子爵に頼んである。

 ヴォラ子爵はテツのその頼みにかなり不満げだったが拝み倒して了承してもらった。

 初めての戦争に参加したあげくに部隊に一人の死傷者も出さずに街を落とすというのは控えめに言っても目だつ戦果であり、フレイはともかくとして貧乏騎士のテツが受けるには過大に過ぎるのだ。

 例えその参加の過程に問題があったとしても。

 ただでさへ謀殺されるのではと命の危機を感じているのだ、それを自分から確信へと変える気はテツにはなかった。

 テツがそんな事を考えていると、先程門番の役割を放棄した少年に連れられて兵舎の中からワラワラと同じような年格好の兵士達が出てくる。

 みな一様に笑顔だ。

 それもそのハズで彼らの多くは皆同じスラムの出であり、兄姉や友人達だった。

 そして今や近衛兵団という家族でもある。

 規律を考えないとなぁ、という現実的な事を考えながらも、歓迎を迎え撃つ部下達の笑顔を見るテツの顔もまた笑顔だった。

 誰一人も欠けること無く帰ってこれた。

 それはおよそ戦争という現象で望みうる最良の奇跡だろう。

 なんの事はない、貴族の反発がどうなどと言い訳を並べながらも本当はこの光景をただ見たかっただけなのだ。

 テツ・サンドリバーはそういう男だった。



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