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夢リーゴーランド  作者: 佐渡惺
3/11

夢リーゴーランドの世界へ


 一旦、メリーゴーランドの馬になった私とリードルと別れ、浜坂家に戻ったクログーはネコ用扉から入ると、芽衣亜(めいあ)炉駈哉(ろくや)の姉弟の出掛ける支度が終わっていました。




 芽衣亜は水色のリボンの白い長袖に青のデニムスカート付のレギンスパンツを履いています。炉駈哉は黒のティーシャツの上に紺と白の縞々の上着を羽織り、オリーブ色のズボンを履いていました。




 芽衣亜と炉駈哉はおじさんの支度が終わるのを待っています。姉弟のおじさんの名前は小路(こうじ)と言い、姉弟からは「こうおじさん」と呼ばれていました。




 「こうおじさん、まだ支度が終わらないのー」

 と、言った子は炉駈哉でした。玄関で紫のラインの入った運動靴を履いていた少年は、足踏みをしていました。その横でピンクのラインの入ったおしゃれな運動靴を履いていた芽衣亜も、足踏みはしなかったものの、待ちくたびれた顔でいます。




 小路は髭剃りや髪のセットに時間が掛かり、姉弟を待たせていたのでした。カジュアルな格好をした彼が、ようやく支度を終えると玄関扉の鍵を閉め、姉弟の手を引き、外へ行きます。三人が出掛けてから、クログーもネコ用扉から外へ行き、姉弟たちのあとをついて行きました。




 小路に連れられ、遊園地に来た芽衣亜と炉駈哉は遊園地の中を駆けずり回ります。そして、芽衣亜が先にジェットコースターに乗りたいと言い出していました。




 これには、弟の炉駈哉とおじさんの小路の表情は真っ青です。二人がジェットコースターに乗りたくなさそうにしていたため、次に芽衣亜は観覧車に乗りたいと言い出します。今度は小路だけ真っ青な表情になったのでした。



 「芽衣亜、バカだろ。こうおじさんはな、高いところが苦手なんだよ」




 「あ、そうだった。こうおじさん、ごめんなさい」

 炉駈哉に言われ、芽衣亜はすぐ小路に謝り、三人みんなが乗れるアトラクションを探します。すると、メリーゴーランドが目に入り、三人ともそこに行きました。三人のあとをこっそりとついて来ていたクログーも追いかけます。




 「思ったけど、今日の遊園地、やたら空いてないか? おじさんたちしかいない気が」

 と、小路が遊園地に人があまりいないことに気付きました。しかし、姉弟たちは気にしないでメリーゴーランドに向かって競争します。




 「炉駈哉、メリーゴーランドまで競争ね」




 「うん、いいよ」



 

 このとき、炉駈哉は姉の芽衣亜にイタズラを仕掛けてきます。芽衣亜が後ろから追いつきそうになったとき、炉駈哉は急に立ち止まったのです。芽衣亜は慌てて転びそうになりますが、転ばずに済みます。炉駈哉は舌打ちをしていました。




 メリーゴーランドの前に着いたとき、姉弟は早速、乗ろうとします。




 「わーい、メリーゴーランドー。どの馬に乗ろうかなー」

 先に行った炉駈哉が走り、おじさんの小路に走らないよう注意をされていました。




 「こうおじさんもメリーゴーランドに乗らないの?」

 芽衣亜が小路に声を掛けますが、彼は首を振り、メリーゴーランドの近くのベンチに座ったあと、すぐに寝てしまったのです。




 「あれ、おじさん、寝てない?」




 「お仕事でお疲れなんだよ。乗ろう、炉駈哉」

 と、言う姉の言葉を無視し、どのメリーゴーランドの馬に乗ろうか、炉駈哉は決めていました。




 そんな弟を見て笑っていた芽衣亜も、どの馬に乗ろうかと、メリーゴーランドの中を歩き回ります。ぐるっと歩き進んで行くうちに、芽衣亜は自分の家にある茶色い馬のぬいぐるみの私に似たメリーゴーランドを見つけ、私に乗ることに決めます。




 炉駈哉も黒い馬のぬいぐるみのリードルに似たメリーゴーランドを見つけたのでしょう。リードルに乗っていました。結局、姉の近くのメリーゴーランドの馬に乗ることになり、むすっとしていた炉駈哉でしたが、芽衣亜とドキドキしながら、メリーゴーランドが動き出すまで待っていました。




 クログーもなるべく姉弟の近くの白いメリーゴーランドの馬に乗ります。その瞬間、メリーゴーランドがゆっくり動き出し、ぐるぐると回り始めました。




 初めの一周目と二周目が回っていたとき、芽衣亜と炉駈哉は、はしゃぎます。しかし、三周目が終わって四周目になり、五周目になっても止まらないメリーゴーランドに、そろそろ姉弟はおかしいと感じ、おじさんの小路に助けを求め、大声で叫びました。けれども、ベンチに座って寝ている小路は起きません。




 十周目近く回るメリーゴーランドに不安な気持ちになる姉弟に、変わった出来事が起こり始めます。と、言うのも、私たちがしゃべり始めたことです。




 「リードル、こんな状態じゃ何も懲らしめることが出来ないよ。姉弟たちがかわいそう。ミッケさんを呼んで止めてもらおう」

 私がそう言うと、リードルはいつもより怖い顔で笑っていました。




 「ふっ、はっはっはっ、三毛ネコを呼んでもだめだ。オレの方が魔法が強いからな」




 「お兄さん、何を言っているの? というか、お兄さんって、魔法を使えたの?」




 「お兄さん……ね。オレはこのあと、お前を懲らしめてやるよ、マイリーン」

 リードルはそう言ったあと、ぶつぶつと何か呪文のようなものを唱え、何と私と芽衣亜、クログーまでゆっくりと回転しながら、夢の世界へと飛ばされて行ってしまったのです。




 「ちょっと、リードル、何をするの!?」

 私が怒ると、彼も怒り、




 「黙れ、お前たちをぐるぐるの夢リーゴーランドの世界に閉じ込めてやったんだよ」

 と、言いました。夢リーゴーランドの世界ではリードルの声だけが聞こえてきたのです。




 「リードルに似たお馬さーん、ここから出して下さーい。ぐるぐるして目が回るーよー」

 私の背中の上に乗っていた芽衣亜は本当に目が回っています。




 このあと、リードルは背中の上に乗っていた炉駈哉に話し掛けていました。私たちには彼らの話し声だけ聞こえてきます。




 「なあ、炉駈哉くん、お姉ちゃん、ああ言ってるけど、どうする?」




 「このまま閉じ込めっぱなしでもいいんじゃない」




 「ごめんね、芽衣亜ちゃん、弟くんがダメだって言ってるから、マイリーンと当分いてちょうだい」




 「そんなー、ずっとぐるぐるした世界から出られなーいまーまー?」




 「お兄さん、いい加減にして。意地悪しないでここから出してよ」




 「だから、出さないよ、当分はね。そもそも、オレはお前のことを妹だと思っていないし、日頃からお前が気に入らなかったんだよ」




 「お兄さん……」




 「お兄さんって呼ぶな! やめろ!」




 「あの、リードル、あたしも何も閉じ込めなくたっていいんじゃない。出して欲しいな」




 「嫌だよー」

 クログーの頼みも聞かないリードルの発言の仕方からして、炉駈哉とあっかんべえをしていることが想像出来ました。




 私と芽衣亜、クログーは悔しくなりながらも、ぐるぐると回転は止まらないまま、今の真っ白な景色からだんだんと別の緑の景色が見えてくるのでした。


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