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告白タイム

ライブが始まった。

めっちゃ楽しい。テスト勉強の疲れが吹っ飛んだ。

JーPOPのコピーバンド中心。バンドの合い間に、男子ばっかの乃木坂ありーの、お笑いありーの。軽音部サイコー。


トリのミナトとタケちゃんのバンドは、ノリノリ。

踊りっぱなし。

音楽に疎いオレには、どれがキーボードの音でどれがバイオリンの音なのか判別不可能。でも、素人だって分かる。このバンド、巧い。


曲の合間にメンバー紹介。

ボーカルがマイクに向かってミナトとタケちゃんの名前を言い、ミナトは情熱大陸を1フレーズ奏でた。


「「「「「おおー」」」」」

「「「「「きゃー、ミナトくーん」」」」」


客席の最前列には、アラサーのおばちゃん音楽教師。女生徒に混じって黄色い声を張り上げている。

なんつーの、アイドルや韓流スターを追っかける熟女のノリにしか見えねー。


舞台ではボーカルがイタイ感じでマイクを水平に持つ。


「はい、西武君、言いたいことあるんだよね?」


タケちゃんが後ずさりする。でもボーカルはタケちゃんの首にがっちりと腕を回した。


「男子も告白タイム欲しかったんだよね? ターケちゃん」

「……」

「言おう。すっきりしよう! はい」


マイクを向けられたタケちゃんのイケメンボイスが体育館に響いた。


「百田志桜里さんに、次の曲を捧げます」


ざわざわと体育館がどよめく。


「タケちゃん、はっきり言えよ。男の子だろ?」


笑顔のボーカルは、まだタケちゃんを解放しない。


「オレ、マジで好きやったんや」


「1、2、1234」


タケちゃんの関西弁の告白を合図に曲のカウントが始まり、バイオリンフューチャーの派手な曲が始まった。きゃーっという女の子の歓声やおおーっというヤローの野太い声も混ざり、盛り上がりは最高潮。


体育館をきょろきょろ見渡しても、暗がりで見えない。ももしお、どこ? 聞いてたか?

タケちゃん、漢らしいぞ。


踊っていると頭上にドローンが飛んで光のショー。


その光を目で追っているときに、ももしおを見つけた。割と近く。5メートルくらいしか離れていなかった。ももしお×ねぎまは、普段通り華やかな7、8人の友達と一緒にいて、その周りはぐるっと男子生徒に陣取られていた。


人の間から見えるももしおは、ねぎまや他の友達に抱きつかれたり、考え込んだりしていた。

みんなが音楽に合わせて揺れてたのに、ももしおだけ音楽に乗らず、つっ立っていた。だから見つけられたのかも。


バイオリンフューチャーのダンスタイムの途中、ももしおがすーっと体育館の隅に行った。


「ちょっと悪い。トイレ」


オレは小田と陸上部の友達に耳打ちして、ももしおを追いかけた。


体育館の靴を履き替えるスペースでももしおに追いつく。


「タケちゃんからの曲、最後まで聴いてやれよ」

「うん。でも急がなきゃ、エントリーできなくなっちゃう」

「エントリー?」

「西武君が勇気出してくれたから、私も勇気出すの」


お、これは、タケちゃん♡ももしおってパターンか。OK!


「頑張れ!」

「うん」


跳ねるようにももしおは体育館を出て行った。


ももしおの背中を押して気づく。

あれ? ももしおって、東城寺蓮を好きかもしれないんじゃなかったっけ。

いやいやいや。ももしおだって女の子。面と向かってあんなふうに告られたら揺れるだろ。それに、エントリーして告るんだったら、この学校の生徒のはず。ここには東城寺蓮はいない。


いや、今日は保護者が来ている。東城寺蓮は、息子のバイオリンを聴きにきている可能性がある。


勇気を出して全校生徒の前で告った後で、好きな女の子が父親への告白をする。

NO------!


阻止だ。


急いで体育館の扉を開けると、ももしおはそこでスマホを操作していた。


「あれ? ももしお。エントリーは?」

「したよ」

「へ?」

「スマホ入力」

「あ、そ。誰に告るんだよ」

「内緒」

「タケちゃんを傷つけるんならやめろ」


「宗哲君って、国語苦手?」


「なんだよ突然。今回のテストだったら追試ってことはな、って、おい」


ももしおは体育館の中へ入って行ってしまった。

分からん。ももしおって生き物を永遠に理解できる気がしねー。


体育館に戻るとアンコール曲が演奏されていた。

まもなくライブは終了し、次は告白タイム。

ヴォイスチェンジャーで声を変えた女の子が告白し、告られたヤローが「おおーっ」と歓声を浴びる。マイクが客席に運ばれて答える。そんな感じ。


「2年4組の小田先輩、電車の中で痴漢から助けてくれてありがとうございました。その時、好きになりました。カノジョがいることは知っています。片想いだけど、この気持ちを胸に閉じ込めておくには苦しくなりました。好きです」


まさかの小田。うんうん。分かる。いいヤツなんだよ。

ってかさ、これ、告った相手からは誰か分かるじゃん。結局、外見分かるじゃん。


小田がマイクを持って答える。


「好きになってくれてありがとう。だけど、ごめん。オレ、今のカノジョのこと、めちゃくちゃ好きで大切にしたいから。気持ちには答えられません。以上」


なにこれ。カッコ良過ぎ。

小田への告白ってよりさ、小田からカノジョへの告白になってね?


そんな風に流れていき、カップルが成立したりしなかったり。

存在を忘れかけていた東横が告られた。


「東横君、好き。いつもステキなインスタを見て、隣で青春したいなって思うようになりました」


ふーん。「いいね」送ればつき合えるんじゃね? 元カノ16人ってくらいだから、来るもの拒まずの雑食じゃねーの?

オレの予想に反して、モテ男は運ばれたマイクで答えた。


「二人だけで会いたいから、明日の放課後、校門のモニュメントのところで待っててください」


って。

それって、顔見て判断するってことじゃん。言い方、巧い。そこそこ美食だったんだな。

そっか。ももしおをチョイスしたくらいだからスーパーグルメか。


ちょっと待った。ひょっとして今告ったの、ももしお? 実はまだ、まさかの東横が好きとか?

オレが首を傾げている間にも、どんどん告白は続く。


「2年4組の相模君。大好きです。

 相模君だったら、ゴビ砂漠で私が迷っててもGPSつきドローンできっと見つけて、こっちに行けば助かるよって教えてくれるって思う。

 相模君だったら、上がるか下がるか分からないところで迷ってても、データ分析のプログラムを作って、きっと私のことを導いてくれるって思う。

 いつも、すごいね、相模君って思っちゃいます。

 つき合ってください」


これ、ももしおじゃん。

上がるか下がるか分からないところって、株のことだろ?


まさかの相模ン!?

はああああああ?!


「相模君、2年4組の相模君」


司会者が相模ンを探す。が、相模ンが見当たらない。いったいどこ。


「2年4組の相模君」


司会者が相模ンの名前をマイクで連呼していると、体育館の舞台前に光が集まって来た。蛍の光のようにどこからかふわふわと飛んできた光の粒。マイクロドローン。


そしてそれは、大きく「×」を描いたのだった。


「「「「「おおおおーーーー」」」」」

「「「「「相模だ!」」」」」


相模ン、隠れて遊んでないで、自分で言えよ。

女の子が告白したんだぞ。しかも、男子人気トップのももしおが。

カレシ作らないでほしいって思うくらいだったんだろ?


口で返事をせずにドローンで×を描いただけの相模ンに腹が立った。

くっそう。断るにしても、ちゃんと誠意を見せてやれよ。


再びオレは体育館を抜け出して、舞台裏の外階段への出入口へ走った。

正体不明で告白するなら、体育館への出入はそのドアを使うだろうと思ったから。


ももしおに、相模ンの友達をして言おうと思った。「あれはない」って。後で本人をふんじばってでも連れて来てやるって。


走っていくと、舞台裏の外階段への出入口には女の子が数人見えた。さらに、告白を終わったと思われる女の子達が嬉しそうにこっちに向かって歩いてくる。

やばっ。女の園。

咄嗟に進行方向を変えてグランドの方へ出た。

と、数メートル先に、相模ンとももしお。


「ごめん、百田さん」

「ううん。相模君らしくて嬉しかった。体育祭実行委員や軽音部からの依頼じゃなくて、私のためだけにドローンを飛ばしてくれて」


え、そーなの?! やっぱ、ももしおって理解できん。

オレは回れ右して戻ろうと、、、戻れねーじゃん。女子ばっかだもん。しかも、覆面告白の女子。


一応、ももしおと相模ンに手を振って、近くで聞こえてますよーとアピールしてみた。

2人は手を振り返してくれた。

なのに。


「百田さん。オレの嫁はさ、ニャル子さん。二次元なんだ」


相模ンは話を続ける。

小首を傾げたももしおは、相模ンに問いかける。


「二次元の女なんて、エッチできないんだよ?」


おい、ももしお、美少女に対する男の夢とロマンを壊すな。


「しょうがないって。百田さんじゃそれ以前に、ここが反応しない。

 百田さんはオレにとって神的存在で、劣情なんてムリ。

 それなしなんて、意味ないよね?」


相模ンは指で恥ずかしい部分を指していた。

こいつら、なんつ―会話。


でもって、劣情がないと意味ないのか? え? 相模ン、お前は昭和の男じゃなかったのか!?


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