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女子の盗撮じゃなきゃいいのか?

コト


ビシビシに画面の割れたiPhoneをテーブルの上に置いた。


テスト1週間前から部活動は禁止。体育会系の部は活動が一目瞭然。でもさ、文化系の部活はバレない。

パソコン部の部室は相変わらず乱雑で、ネジやら配線やらがテーブルの隅に小さな山を作っていた。


「宗哲、話って?」


相模ンが聞いてきた。


パソコン部の部室にいるのは、相模ン、ももしお×ねぎま、ミナト、オレ。


「このiPhoneの中の写真データを消したいの」


iPhoneを拾ったねぎまが言った。

ねぎまが安宿前の道路に飛び出した時、ドローンの残骸を見知らぬ男が拾いあげたところだった。走って来たミナトとねぎまに驚いて、男はドローンを持って逃げ出した。ねぎまが男の後を追うと、途中でドローンからiPhoneが落ちたらしい。


「初期化すれば?」

「え、それでOKなわけ? iクラウドどかは?」


オレの質問に相模ンは小さくため息を吐いた。


「どーゆーこと? 普通、データを消したいならサインインして消せばいい。パスコード忘れた? それ以外なら、犯罪。不正アクセス禁止法に触れる」

「あのさ、困る写真を撮られたんだよ。ドローンにこのiPhoneが仕込んであったみたいで。で、犯人を追いかけたら、逃げるときにこのiPhoneを落としたわけ。頼む。どーにかできない?」


「ムリ。

 ちょっと前だったらSiriにアプリ起動させてサインインできたけど、もう修正された。 


 それに、今更写真のデータをどうにかしたって、遅い。

 ドローン使ってたってことは遠隔操作してたってことじゃん。だったら、相手はもう1つ、操作するスマホかパソコンにアプリがあって、そっちとデータを共有してる。

 仮に、そんなアプリを使っていなかったとして。つまり、ビデオ録画状態でiPhoneをドローンにくっつけて飛ばしたとする。だとしたら、ここにデータがあるだけ。

 だけどさ、スマホがなくなった時点でiクラウド上のファイルをコピーしてるだろうから、遅い」


「そっか」

「せっかくマイマイ頑張ったのにね」


「いったい何? 東城寺蓮がらみ?」

「ぜんぜん」

「ヤバい写真って、まさか、2人のうちのどっちかが盗撮されたとか?」


相模ンは心配そうにももしお×ねぎまを見た。


「「ううん」」


2人が首を横に振るのを見ると、相模ンはほっとしていた。


「じゃ、いーじゃん」


おい、そこかよ。相模ンの基準。


「ま、遅いなら仕方がない」


ミナトはあっさり諦めた。だよな。ここ、粘るとこじゃねーよ。遅いって分かったから、別の案を考えるとこ。


「ありがと。相模ン」


部屋を出ようと立ち上がると、相模ンはしょんぼりしたももしおに声をかけた。


「百田さん、大丈夫?」

「うん。へーき。いろいろありがとう」


今度ばかりは「すごいね、相模君」を貰えなかった相模ン。言ってやればいいのに。オレ達じゃ「遅い」ってことすら判断できなかったんだから。



ダン爺に写真のことを連絡すると『好ましくない写真ですが、困るわけではありません』と返事が来た。


ダン爺が一時でもどや街にいたことって、イメージダウンじゃねーの?

ダン爺が暴力団に攫われたことなんてバレたら、ヤバいんじゃねーの?


が、取りあえず学生は、テスト勉強。


オレ達がテスト勉強をしている週の終わりごろ、ダン爺の載った週刊誌が発売された。教えてくれたのは祖父。


「おい、司。ハゲが載ってる」


司は父の名。ハゲは「ダン爺」こと富士峯大臣のこと。祖父は、ダン爺が掲げた政策によって、儲けを逃したことがあるから、本人のいないところでは「ハゲ」と呼んでいる。


「お父さん、ハゲは失礼だろ。大臣なのに」

「ハゲはハゲだ」

「やっぱり、先輩はすごい人だ。オレ、またこの人に仕事頼まれたいよなー。すっげーやる気出る」

「騙されるな。どや街で炊き出しに顔を出したくらいで。

 なにが『国民の声を聞きたい』だ。なにが労働者の街だ。近場で移動時間が短かったからちょっと行っただけだろ。

 いろんな被災地行って経済支援考えろよ。アメリカ行って貿易摩擦どうにかしてこいよ」


儲けを逃した祖父は(「ももしお×ねぎま」のストーリー)逆恨み状態。見苦しい。


「へー。どんなこと書いてあんの?」


オレが雑誌を読むと、イメージがアップすることしか書かれていなかった。

ボランティア団体に、かつて選挙の手伝いをしてくれた知人がいたからプライベートで立ち寄ったことになっていた。非公表だったので、当日、一般市民のツイッターによって知った記者が、急いで取材に行ったとある。非公表にいいことをしたってところが好印象を与えていた。更には地面に胡坐をかいて楽しそうに笑う写真。


とても国家予算や日本経済を、はては安楽死について考えているようには見えない。


父がシャワーを浴びに席を外すと、祖父は見開き中央の写真の隅を指した。写真は大きな輪になって酒盛りしている様子を斜め上のアングルから写している。


「ここに制服着たのが4人。背ぇ高いヤツと髪長い顔が小さいのとくるっとした髪のと、もう一人のこれ、宗哲だろ?」


ジジイ、ぜんぜん目ぇ弱ってねーな。


「ん? どれ? 違う違う」


しらじらしくも否定。


「この間来た子らだろ。夏、ほら、ハゲがどっかに隠れてたとかってとき、一緒に家に来た。

 これ、おっぱいでかい子だろ?」


口を慎め、エロジジイ。


「歳をとったから心臓に悪いことは聞きたくないんでしょ?」

「認めたな」

「おじーちゃん!」

「おっぱいでかいって」


そこかよ。


年寄の戯言をスルーして考えた。公園にできた大きな輪を写せるアングルは空からとしか考えられない。ってことは、この写真はドローンを使って撮っている。

あの時、記者は1人。つまり、この写真を撮ってこの記事を書いたのが、石爺の部屋の窓のところにドローンを飛ばしていた記者だってことになる。


石爺の部屋の写真はないし、石爺については何も触れていない。助かったんだ。



多忙だとは承知の上で、ダン爺にメールしようとすると、ダン爺からメールが届いた。

メール内容は、本日発売のどの週刊誌に記事が載ったのかということと、記事のファイルだった。そして、記者から事前に連絡があって写真を選んだこと、見せられた写真は全て公園での写真だったことが添えられていた。

そしてもう一つ、途中で退席した理由を聞かれたから「一緒にいた人が泊まっているいる施設のトイレを借りた」と答えたらしい。


政治家は嘘が巧い。


例えばドローンで撮られた石爺との写真があったとしても、ダン爺はオレに言わなかったと思う。

心配するなってことか。なんとかなったんだ。もともとなかったのかもしれないし。




人のスマホを持っているのが嫌だとねぎまが言ったから、警察に届けた。

炊き出しの日に公園で、オレが拾ったことにした。

「どうしてすぐに届けなかったんだ」と警察官からお叱りを受け、ついでに「売ろうとしていたんじゃないか」と疑われた。


「ごめんね、宗哲クン」

「ん?」

「私が拾ったのに」

「拾ってから日、開いてたからさ。怒られるだろーなとは思ってたし」

「私だったら怒られなかったのに」


そっか。女の子って得だよな。

世の中、女に甘くね?




テスト期間は全力投球。ガチで。


一応、進学校。周りもテスト期間は学業一色。


テスト終了。チャイムの直後、サッカー部、野球部、バスケ部中心の雄叫びが校舎内にこだまする。


「「「「うぇぇぇぇい」」」」


この日は昼食後、体育館でライブイベントが開かれる。名目はテスト打ち上げ。

ミナトとタケちゃんは、この日のためにバイオリンの練習をしていた。

相模ンは体育館でまたまたドローンを飛ばすらしい。


小田や陸上部のヤツと一緒に体育館に行くと、窓には暗幕が下ろされ、準備万端だった。

ステージにはドラムやアンプ。軽音部がマイクのチェックやミキサーのチェックをしていた。


「軽音部ってすげーな。ほぼほぼ学園祭だよな」

「テストの度にやってるから、慣れてきたってさ。準備もすぐって」

「へー」

「バンドの方もライブ慣れしていいらしい。上手くなるし」


軽音部に友達がいる陸上部情報。


「いくつくらいバンド出んの?」

「確か軽音のインスタに載ってた」

「軽音部、インスタまであるのかよ」


軽音部のインスタを見てみれば、ミナトやタケちゃんのバンド紹介もあった。

そして、プログラムでは5バンド。すっげー。ミナトとタケちゃんのバンド、トリじゃん。


「なにこれ?」


小田が首を傾げた。


「なに?」


見れば『告白タイム』とある。


「あ、ボイスチェンジャー使って、誰が告白したか分からないようにして、告白タイムあるって」

「知らんかった」

「女子限定」

「へー」

「なんかさ、軽音の女子が『男って所詮、外見で判断するよね』って話んなって、で、誰か分かんないままで告白するって企画を考えたらしい」

「女だって、イケメンだったらいいくせにさー」


小田がぶーぶー言っている。同感。

タケちゃんへの女子の掌返しはあからさまだった。

でもさ、誰だか分かんない人から告られてつき合うことにしたら、それって、誰でもいいってことじゃん? その辺はいいわけ? 謎。


「体育館でみんなの前で告る勇気あるならさ、とっくに言ってるよな?」

「オレもそー思う」

「んだんだ」


体育館に、ご父兄がちらほら現れ始めた。軽音部員の保護者だろう。


ぺこり


「どーした、宗哲」

「ミナトのお母さんいた」


相変わらず、すっげー美人。


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