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書架の魔道士  作者: 綾 翠
流星の魔道士編
5/13

試験

ブックマーク本当にありがとうございます!

嬉しすぎて手の力が抜けてしまい、熱々のたまごスープを足にこぼして火傷しましたWW

 あまりの眩しさに目が閉じかける。


 ここはどこだろうか。


 うっすら開いた目で辺りを観察する。


 まず目に入ったのは天を突く巨塔。

 そして、壁。


 目の前にある断崖絶壁の壁にしばし呆然とする。


「着いたぞ。」


 ゼータがロッカルを地面に下ろしながら言った。


「ここは、どこですか?」


「シャングリラさ。」


「ここが…!」


 どうやら先程のマギアで試験会場である首都シャングリラまで来たらしい。


(それにしてもさっきのマギアって、なんだったんだろう?魔法っぽかったけど………)


「これから関所に行くよ。そうしたら、この壁の中へ行けるさ。」


 ゼータに声を掛けられ、思考を一旦とめる。


 首都には王族をはじめ、沢山の貴族達が住んでいる。そのため警備が厳しくなっているのだ。


「祐佳行くぞ。」


 祐佳たちは関所へ向かった。


 シャングリラの周りは高い壁で囲まれている。その中に一つだけ入り口がある。通称『ポルスの門』だ。

 国内ならず、世界各地からの商人や職人、旅人はこの門をくぐる。

 その為か、『ポルスの門』はとても大きく、立派な門だった。



「名前は?どこから?」


「ゼータ.クリリアル、ヨタから来たよ。」


「えっと、ユカ.アガタです。同じくヨタから来ました。」


「クリリアルさんとアガタさんだね。あら可愛い猫ちゃん。えーと、ヨタ、………うん。確認できたよ。」


「ありがとうございます。」


 関所のおじさんの許可が下りた。(可愛いと言われたロッカルは満足げに喉を鳴らした。)

 これで壁の中に入れる。


 関所をあとにして『ポルスの門』をくぐろうとしたその時。


「あっ、あんたがた、最近シャングリラで魔力災害が多発しているんだよ。

 気をつけなされ。」


 おじさんが叫んだ。


「わざわざありがとうございます。」


 ゼータが振り向いて礼をした。


 とても優雅な礼で、祐佳は見惚れてしまった、が、すぐに気を取り直しておじさんへ礼をした。


「珍しい、王都(シャングリラで魔力災害が多発するなんて。」


 ゼータが呟く。


「そうなんですか?王都(シャングリラは人口が多い分、魔力災害が多くなりそうですけど。」


「いや、魔力濃度が高すぎる場所があれば祓い士が赴いて魔力を祓って薄くするんだよ。祓い士は王都(シャングリラに腐る程いるから魔力災害なんて滅多に起こらないはずなんだが………」


 ゼータが眉をひそめる。


「おい、ゼータそんなことより試験会場どこなんだ。」


 ロッカルが足元から声をかける。


「あぁ、試験会場か。この門からは遠いから馬車に乗るよ。」


「馬車に?そんなに遠いんですか?」


「この壁の中はとても広いのさ。」


 街の中の移動なのに馬車に乗るほど遠いことに驚いた。


「時間が押しているぞ、早く行こう。」


 ロッカルはそう言うと、トトトッと、身軽に前を歩いて行く。その後を追うように祐佳とゼータは歩き始める。


 三人は『ポルスの門』をくぐった。

 その門を抜けると、王都シャングリラの相貌が明らかになる。


「わぁ‼︎」


 祐佳は思わず感嘆の声を上げた。


 蒼い空の下先程見た天を突く巨塔が悠々とそびえている。

 横には岩山があってその上には巨大な城が構えられている。

 その岩山の下には沢山の建物が広がっていた。

 とても美しい街だ、と祐佳は思った。


「祐佳、ボーとしてるとはぐれるぞ。」


「あ、ごめん。あれ?ゼータ師は?」


「馬車の席を取りに行ったさ。」


「あっ………」


 どうやら自分がボーとしているうちに師匠に仕事をさせてしまったらしい。


 ○*○


 馬車で揺られること約30分。


 ようやく試験会場に着いた。


 会場は王立学院で、これがまた広かった。


 受け付けを済ませたのはいいが、どこへ行くべきか全くわからなかった。

 しばらく受験票と睨めっこをする。


「どこで受けるのかわからないのかい?」


「…はい。」


「どれどれ。」


 ゼータが受験票を覗いた。


「あー、大講堂か。これならあそここの角を右に曲がった先にある階段を2階まで登って左だよ。」


「あ、ありがとうございます。」


「うん、頑張って来な。」


 ゼータがグーサインをした。



(右に、二階、左、右、二階、左………)


 祐佳は言われた道筋を口の中で反芻して広くて長い廊下を歩いた。


 右に曲がって、階段を二階まで登る。

 つきあたりの廊下を左に曲がる。


 目の前に講堂が現れた。


 ほっ、と安堵の息を漏らしたその時。


 トントン。


 肩をたたかれた。


「はい?」


 背後を振り返る。


 そこには金髪で翠の目をした美少年がいた。祐佳と同じく受験生なのだろう。


「ねぇねぇ、水色の髪をした女の子見なかった?」


「いや、見てないけど………」


「そっか、時間を取らせて悪かったね。」


 その美少年は祐佳へ詫びると講堂とは反対側へズンズンと歩いていった。


(なんだったんだ?)


 疑問は残ったが彼へ背を向けて講堂へ歩いた。


 ○*○


 祐佳は他の受験生の波にのまれるように、出口へ向かった。


 来た時は全くと言っていいほど自分以外の受験生が見当たらなかったのに帰りは周りが受験生だらけだった。


 他の受験生に押し出され、祐佳は学院の外に出た。


(ゼータ師とロッカルはどこだ?)


 辺りをキョロキョロ見渡す。


 二人の姿は見えない。


 祐佳は近くのベンチに座った。

 ボゥと目の前の植木を眺める。


 試験はうまくいったかと聞かれたら微妙と答えるしかない。

 正直よくできたとは言えない。

 受かっているかどうか不安だ。


 はーッとため息をついた。


 これで落ちていたらゼータに顔向け出来ないし、勉強している間、祐佳の代わりに酒場の手伝いをしていたロッカルや勉強に専念させてくれたクレラに申し訳ない。

 それに、あの学院へ通えないのは残念すぎる。


 更に深いため息をついた。



 突然、眺めていた植木に何か黒い気体のようなものが渦巻いているのを見つけた。

 興味が湧き、思わず植木に近寄る。

 黒い気体はぐるぐると回って渦巻きのようになっている。

 よく見えない。

 更に近くに………


「おい、それ以上近づかない方が良いぞ。」


 腕を掴まれた。


 振り返ると見慣れた黒髪の青年がいた。


「あ、ロッカル!」


 ようやく知っている人を見つけて祐佳は安堵した。


 彼は植木の黒い気体を睨む。


「ねぇ、これって何?」


「これはドゥンケルって言うヤツさ。簡単に言えば魔力の塊だな。はやく祓わないと魔力災害起こしちまう。」


 顔をしかめながら祐佳の質問に答えたロッカルは、手にルスを収束させるとその黒い気体を虫でもおいらうようにぱっぱっと手を振った。

 すると、黒い気体は霧消した。


「いやー王都(シャングリラで魔力災害が多発してるって本当ぽいな。」


 気をつけるんだぞー、とロッカルが注意する。祐佳は頷いた。


「ところで、ゼータ師はどこ?」


 先程から気になっていたことを聞く。


「ゼータはこの先の喫茶店で待ってる。付いて来な。」



 ロッカルに連れられ、ゼータが待っている喫茶店へ向かう。


 学院のある大通りを抜けて、小道を進む。人通りが全くと言っていいほどないそこはヨタの路地裏を思い出させた。

 こんなところに喫茶店なんてあるのだろうか。

 つきあたりの角を曲がり、奥へと進む。


 そこには寂びれた建物が並んでいた。


 ロッカルの足がはたと止まる。


「着いたぞ。」


「えっ!」


 思わず声を漏らす。


 祐佳たちの目の前には今にも崩れ落ちそうな古びた建物がある。

 レンガ造りで新築だった頃は綺麗な家だったのだろう。

 今ではお化け屋敷状態だ。


 ロッカルが隙間だらけのドアを開ける。


「ほら、はやく入れ。」


「えー。」


 入るのをためらってしまう。


 怖いものは苦手だ。

 例えばこのような古びた人影のない通りやお化け屋敷は。


 ロッカルは立ちすくんでいる祐佳を置いてお化け屋敷に入ってしまった。


 慌てて、後を追ってドアを開ける。


 キィーと、気味の悪い音を立ててドアは開いた。


 中には蜘蛛の巣がはって、それはもうリアルお化け屋敷で………というわけではなかった。

 中は明かりが灯っていて、掃除が行き届いている店内を明るく照らしていた。モダン風のインテリアが映えている。


 唖然とする。


「ゼータァー、連れて来たぜ。」


「ご苦労さん。」


 契約妖精を労ったゼータはカウンターの一人席のところに座っていた。美味そうにコーヒーを飲んでいる。


「あぁ、この少年がゼータさんの弟子?」


 どこからか聞き覚えのない声がしたかと思うと厨房からひょっこりと顔がのぞいた。


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