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限りなく馬鹿だった頃  作者: 京香
9/13

9 キス・・・?

ちょっと放課後に出て来てくれないかな?」


しばらくして小泉君から電話があったので、あたしはびっくりした。


だって物静かな小泉君とは、ほとんど話した事がないからだ。


「何であたしだけ?」


「ワケは会ったら分かるから」


「今テストで忙しいよ」


「ちょっとでいいんだ 、お願い」


小泉君はあまり感情を出すタイプじゃなかったので、誘ってくるのが不思議でならない。


約束の駅に着くと、私服の小泉君が微妙な顔で待っていたが、あたしを見て、凄く安心したよ、みたいな笑顔で近付いて来た。


「ごめんね、舞子ちゃん、ちょっと歩くんだ」


「一体なに?」

デートじゃないのは分かった。

小泉君から甘い雰囲気は、一切感じられなかったからだ。


夕闇の迫る公園の入り口に来ると、彼はベンチを指差した。


「ほら、行きなよ」


あっ…


あたしは体が硬直した。


「仲直りしなよ、俺は消えるから」


「でも・・・」


困惑するあたし。


「行きなよ、俺は飯田に頼まれたんだ。 全く世話が焼けるよ、2人とも」


小泉君はあたしの肩を押し出すと、SMAPの吾郎ちゃんみたいな顔でバイバイした。


仕方がないのでベンチに近付く。

飯田君はなぜか、アッチを向いたままだ。


「飯田君…?ここで何して居るの?」と聞いてみた。


そしたら、

『小泉の奴に、君がここで待って居ると聞いたから』だと、なんだそれ?


呼び出したのそっちでしょ?

と思ったけど、もうどうでも良かったので、そっと隣りに座った。

今思うと、彼も不器用なのだ。

17歳なら当たり前だった。

私は自分だけが、もうどうしょうもなくカッコ悪く、異性と対峙しているのだと・・・どもったり、つっかえたり、本心とは真逆の行動に出たり・・・


「飯田君・・髪の毛切ったんだね」

あたしは必死に話題を探した。


「ちょっと切りすぎたよ、床屋で誰かさんの事を考えている内に、短くされちゃって」

飯田君の表情も少し和らいだ。


「松子とテル子の事だよね?

何で三人別々に会っていたの?

みんなを試していたの?」


「誤解だよ、あれって加部に頼まれたんだよ!

テル子が・・・俺を選んでいるって。 だから、舞子と付き合う為に、カモフラージュしたんだ」

それで松子にも声を掛け、スクランブルにしておけば、周りにバレないからと飯田君は釈明した。あたしは頭が混乱した


「だからさ、二人とはボランティアなんだよ」


「ボッ、ボランティア~っ!」


飯田はナルだからって、加部の言葉がフラッシュバックした。


「それに不公平になるじゃないかぁ」と飯田君は強調した。


なっなんか変だよ。

こいつ。

でも、あたしには好きって気持ちの方が強かった。


ふいに、飯田君の両手があたしの顔をはさんだ。

ひえ~っ!

何?

何?

飯田君の指の熱が、あたしのほっぺの温度を上げる。

あたしの目がゆるゆるして来て、飯田君の顔が大きくなった。

てか、アップ!!どあっぷ。

「舞子ちゃん」


◇捕捉


この展開になる前、飯田君は私に歌を歌ってくれたの。

私と松子 テル子 。

それぞれ違う歌だったので…何のこだわりだったのさ?

飯田、女の好みバランバランなんやけど !


く、くる、

来るよ~っ!飯田君は、あたしの顔を挟んでじっと覗き込んでいた。


きっ・キス?キスなのか?舌は入れるの?どうすんの?それとも最初はやらせない?誰か教えて~っ


「舞子って・・・

やっぱり、赤ちゃんみたいだね」


「はい?」

赤ちゃんて何?それって、ほめてる?バカにしてる?

飯田君は、あたしから手を離した。

肩透かしかよっ!?

巴投げでビューンて飛ばされたみたいじゃないか!


その時、何故飯田君が、あたしの顔から手を離したかが分かった。

公園の端のブランコに、学生らしき黒い集団が居て、こっちを見ていた。


嫌な予感。


そして4、5人のその集団は、ゆっくりとこっちに歩いて来たのだ。

全員目付きが悪い。


「見ちゃ駄目だよ」飯田君が小声でささやいた。


いつかのドンケの姿が浮かんだ。

ボコボコにされて、可哀相なドンケ・・あたしの心臓が早くなる。

あの時は松子とテル子がいた。

皆が居たから、何も考えずに夢中で逃げれた。

それにあの時は、ドンケが逃げな!!と叫んでくれたのだ。

自分が殴られる寸前に・・・


だから体にスイッチが入った。

あたしの脇の下に、緊張の汗が流れる。

怖い・・


「おい、お前」

今時丸刈りの、ガタイのいい丸顔のおっさんみたいに老けている男が、

「今俺達に、ガン飛ばしてたよな? アアッ」と吠えた。


「見て無い」

飯田君の目の色も変わっていった。

ある意味そっちの方が怖かった。

男たちは飯田君をぐるりと囲んだ。殴る気満々の空気。


全員制服で、胸にkと言うバッチが光っていた。

(k、 ○士体館だ!)

バリバリの硬派!

噂は知ってるけど、電車通学中、たまに見かけたりする程度。

男子校のせいか、女の子と一緒なんて事もない。

彼らは屈強な男だけの集団で、周りを威嚇するイメージが強い。


絶対絶命だ!


続く







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