8 貞子登場
もぉ~!!
最低 最悪の 極落ち気分。
まさか飯田君が、三人同時に付き合ってたなんて。(Hはなしだよ)
あたしは登校するのがかったるかった。
もう人間不信だよ。
しばらく誰とも話したく無い。
なのに、友達加部があたしに寄って来て囁いた。
「舞子、昨日の事全部聞いたよ」
「聞いた?誰に」
「あの子は何でもあたしに相談するからさ」
「あの子」
友達加部が(あの子)と呼ぶのは飯田君の事か?
「飯田もさぁ、 悪かったどうしようって、言ってたよ」
「そんなの知らん!」
だいたい飯田って何だ?呼び捨ては何だ!?ってか、何でも相談って本当はどーゆー関わりなの?
それはあたしにとって、馬鹿と言われた以上のショック。
「あいつさぁ」
「えっ?あいつ」
あたしはいちいち反応した。
疲れる。
「ドンケに先を越されて面白く無かったんだよっ」
「何の話? 全然分からん!」
「ほーら、カラオケ行こうってセッティングしたのドンケだろ?飯田は何だって自分が先にやりたがる性格だし、正月デートしたあんたにゃ、くそみそ言われるし」
言ってない!言ってないよ!
年賀状の美しき天使と、酒飲むなに、ちょっとドン引きしただけだし、でも確かに飯田君はイケメンだし、美しき天使と言われても納得だしぃ。
えっ?何でそれが馬鹿発言と繋がるの~っ!
スッキリしない。
モヤモヤする。
授業がなおさら頭に入らない。
このままだと、
卒業までに補習授業に出る事必至だよ。
「舞子ーっ」
昼休みに、商業クラスの有栖川貞子が、ニコニコでやって来た。
「飯田なんて忘れろよ!
あいつは女なら誰だっていーんだからさ」
有栖川貞子は、加部水絵と幼稚園から繋がるマブ逹。
何故貞子も、飯田君を飯田と呼び捨てなの?
実はあたしの友達加部水絵が、あたしよりも仲良くしてるのが、この長い髪命っの貞子だった。
夜遊び大好きで、昼間は死んでいる奴だ。授業中は頭痛薬でラリっている噂だし、
近付きたくない。
しかも、怪しい化粧品を校内で売り付ける、とんでもない女なのだ!
貞子までが、飯田君の事を知ってるなんて・・・
しかも、呼び捨てにするのは何故!?
貞子はうっざたい髪を触りながら、勝ち誇ったように言った。
「知らないの?茅ヶ崎で最初に、飯田にナンパされたのは
あたし達が先だって」
「えっ、ナンパ?」
「あっちも二人、こっちも加部と二人だから、遊ぼうよって話しになってさ、てゆーか、ナンパしたのはうちらの方だったかな?」
初耳だった・・
「でもさ、あたしはちゃんと付き合うなら、もう一人の男の子に目ェ付けたんだよね~、
そしたら加部もそっちがいいって、喧嘩になってさーっ、
もぉ~仁義をかけた戦いだよ」
「もう一人居たの?小泉君や小池君じゃなくて」
「うん、その子は真治君。しーくんってゆーうんだけど、
大学受験で、それどこじゃ無いって抜けたんだよ。
超かっこ良かったなぁ」
貞子は遠い目になった。
飯田君より・・
かっこいい男の子が
雲海高校にいるの??
つまり加部水絵も貞子も、目当ての本命が消えたんで 、それで・・
それで あたし達に、押しつけたのか?
謎が氷解し始めて、
あたしの頭の中で、波がザッブーンと砕け散った。
そしてあるはずのない岸壁に突っ立ち、妄想が稲妻のように走った。
(ねぇ、真治君の代わりの子、紹介してよ~ん)
髪をなでつけて、飯田に迫る貞子。
(いいよ 、ついでに俺らは三人ほどいるからさ、そっちも三人用意して)
だけど…イケメン好きの貞子と加部は、小泉 ドンケじゃ、嫌だったんだ!鏡見ろ~二人!
じゃあ今まで・・
今まで加部水絵と有栖川貞子で
、どんだけ盛り上がっていただろう?
六人がどうなるか・・・
まるでゲームじゃん。
酷い。
こんなゲームは酷すぎる!
友達と信じていた加部水絵と貞子 ・・・
きっと高みの見物で、楽しかっただろう。
しかし、哀しい事にあたしは、ドンケのように、貞子を殴れない。
貞子は女のくせに、ヘッドロックの得意技で、近隣の女番長(古っ!)達を震え上がらせている。
制服の裏側に、夜炉死句と縫い込んだ刺繍。
そして、何故かコオロギ収集の趣味。
時々未来が見えると言い、10数年先の舞子から通信があった、などと妄想を言ったりするのだ。
気味が悪い。
数年後、あたしは映画リングを観た時、貞子が、有栖川貞子にソックリで震え上がったね。
松子とテル子に、この顛末を話した。
「どーも変だと思ったよ」
松子は意外と冷静だ。
「男の子達が可哀相だから行ってやってくれって・・
タダの数合わせだったの?誰でも良かったんだね」
テル子も何だか呆れ顔。
けどさ、けどね、
お陰であたしと松子とテル子、
この時友情らしきものが、初めて生まれたんだぁ。
うふふ。
続く。




