5 あたしは男を殴る!
小池精気君 。
通称ドンケ。
鈍いからそう呼ばれている男の子が、あたしを好きなのは知っていた。
だって彼は、あたしが飯田君に対する様に、ぎこちない態度になってしまうからだ。
だからそれを見ると、イライラする。
あたしも飯田君の前で、こんなにかっこ悪いのかと思うと、ぶん殴りたくなる。
そして本当に殴ってやったのだた。
どこで?
夜 。
クリスマスイブに・・・
あたしたちグループ交際六人組は、「クリスマスパーティしよう」て、飯田君の声かけで、集合した。
茅ヶ崎に小さな民宿兼、コーヒーショップがあって、そこのオバサンに頼んで、台所ごと借りた。
そこはドンケの親戚らしかった。
でも、なぜわざわさ作ろうとしたのかな?
しかも、料理の経験がゼロのあたしだよ。
テル子が意外と手際が良いので嫉妬した。
※ポテトサラダ※
大変だったよー。手作りって、やっぱり、愛の証だったのかな?
男の子達がそーしよって、言い出して、テル子が本領発揮とばかりに、張り切ったのだ。
今日こそ主役だ!テル子!
みんな 可愛かった。
男子に好かれようとけなげだった。
あたしは、何とか楽することばかり考えていたけど、松子は小泉 達也君に、手編みのマフラーを渡していたもんね。
熱い筋肉少女は、心も熱かったのだ。
それに春先から付き合ってきたので、 流石この頃は、多少全員が打ち解けていた。
でも、肝心の飯田君とあたしはちっとも進展していない。
あたしが好きなのか嫌いなのか、さっばり分からない。
テル子とどうにかなったのか、さっぱり読めない。
だって馬鹿だった。
自分の気持ちを素直に出せばいいだけなのに、色々こじらせる。
それで、いろんな事がもどかしくイラついて、
あたし、あたしはドンケを・・
殴りました。
意味もなく・・・
殴ったのは帰り道。
駅までの10分間ぐらいの間。
クリスマスパーティで、あたしは酔っ払ったのです。
飯田君がビールとシャンパンを買って来て、小泉達也君がケーキを抱えてやって来た。
ビール飲むのは初めてじゃない
けど、あたしは実は弱かった。
あったり前ですね。
なのに強いフりした。
飯田君に心配してもらいたかったからだ。
あたしたち、テル子と松子とあたしは、
民宿の台所で、サンドイッチ&ポテトサラダを作り、鳥肉も焼いた。
とにかくイブの夜だから、それなり盛り上がったのは、間違いありません。
今までの集会での快挙。
そんな、おめでたい夜だと言うのに、あたしの心は、どーんよりしていた。
てゆーか、あたしはこの辺で、もっと目立ちたかった。
テル子は料理で松子は手編みのマフラー。
じゃあ、あたしも存在をどうにかしたい!その方向がとんちんかんに向かうのだ。
フラフラしている、あたしの腕をつかんだのは、飯田君では無く・・
真っ黒な顔のドンケ。
白いブイネックのセーターの縁に赤いストライプ。
「舞子ちゃん、大丈夫?」
ああ気に入らねえ。
あたしはドンケの着る物全てが嫌い!
「小池君ってさ」
あたしはかったるそうに、ドンケに突っかかった。
「草の匂いがするー」
「はぁ?」
「そんでもって小泉君は石ぃ~」すっごい適当だ。
「飯田君はぁ・・・」
飯田君。
(大好きだよ!飯田君!)
体の中から飛び出して来そうな言葉を押さえる為に、
あたしはドンケのほっぺたを殴った。
全力で、
身体ごとねじって、
卑怯なあたし。
殴った瞬間、ドンケの顔があっち側に向いたので、確かに手応えがあった。
男を殴るのは幼稚園以来だ。
けど、あの頃と違ってあたしの手が痺れた。
殴っておいて、フリフリするのはカッコ悪い。
あたしは耐えた。
ドンケはほっぺたを擦った。
特に驚いた様子でも無い。
しかし、飯田君がびっくり・・
かなりショックを受けた顔で、あたしを見つめた。
目が合った。
やっとあたしを見つめてくれたよ!
でも何かもっと・・・違うまなざしを向けられたかった。
その目じゃなくてさ。
「舞子ちゃん・・」
一番クールで大人っぽい小泉君が、あたしをよしよしして、ドンケからさり気なく引き離しながら言った。
「酒癖悪いね・・」
涙があふれた。
何だか分からなくなったら、取りあえず泣いとけ!!と思った。
飯田君に危ない奴と思われる前に・・・
泣いとけ~っ!
結局あたしは、女の子の生理前って、陸上女子松子の説明で、
ドンケへの理由無き暴力を、無理矢理強引に納得させたのだった。
アホなあたしはドンケに
謝らなかった。
続く
けっこう性格の悪かった作者ですが、今は更正しております。




